昭和から平成にかけて詠まれた未発表の466首。1月15日に発売された美智子さまの『歌集 ゆふすげ』(岩波書店)が、累計で10万部を超えるベストセラーとなっている。
「今回の和歌集には、ご家族について詠まれたものだけでなく、昭和・平成の社会的に注目を集めた問題に接した美智子さまが、その時々のお気持ちを託した御歌も数多く収められています。購入者層は70代の女性が多い一方で、比較的若い世代も手に取っているそうで、反響の大きさに、上皇后さまもうれしそうなご様子だったそうです」(宮内庁関係者)
美智子さまがこれまで和歌に託された喜びや苦悩が、人々の共感を生んでいるのか――。 出版元である岩波書店の担当者に話を聞いた。
「静かに共感の声が広がり、着実に売れていったという印象があります。買っていただいた方々は性別、年齢層も徐々に幅広くなってきており、贈り物にされたという話もうかがっています」
未発表の美智子さまの御歌が多数あることを知り、歌集にまとめることを進言したのは、歌人の永田和宏さんだ。宮内庁御用掛として、皇室の和歌の相談役を務める永田さんは「歌会始の儀」の選者も担っている。永田さんは提案した当初、美智子さまの“逡巡”を感じたという。
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「皇后というお立場を退かれた後、美智子さまは“新たな天皇皇后両陛下にいっさい迷惑をかけたくない”という態度を貫かれていて、歌集を出すことを躊躇われていたようでした。それはこれまでの歌集も皇后陛下御歌集などとされ、著者名を載せないというご姿勢にも表れていました。
しかし私は、“上皇后さまの御歌集”ということではなく、『美智子という名前のひとりの歌人による歌集として人々に届けたい』と、強くお勧めしたのです。結果的に美智子さまに受け入れていただき、完成した際には上皇職の方から『いい歌集ができてお喜びになっていました』とうかがいました」
とはいえその売れ行きには永田さんも驚いたそうで……。
「歌集が10万部も発行されるというのはありえない数字で、異例のことです。これまでの歌集は皇太子妃、皇后というお立場の御歌が主体となっていたのに比べて、『ゆふすげ』にはプライベートな歌が多く収められています。
特に今回は『君』、すなわち上皇さまについて詠まれた歌が多く、ひとりの伴侶としての切なる思いが、一つ一つの歌に表れているのです。そうした人間性を感じることができるからこそ、手に取った多くの人々の心に届いているのだと感じています」
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ひとりの歌人、母親、そして妻として。美智子さまの御歌は、静かに国民の胸を震わせ続けている。
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