「マイナス15度の車内は冷凍庫の中のよう」人気登山YouTuberが車中泊の際「鍵を必ず閉める」ほかに“気をつけている”こと

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2025年02月27日 10:01  日刊SPA!

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やぎちゃん
 登山好きが高じて長野に移住した、登山YouTuberのやぎちゃん。山の楽しみ方を伝えるYouTubeチャンネル「やまくっく・やぎちゃん」は、チャンネル登録者が11.6万人(2024年2月21日現在、以下同)にのぼるなど人気を博している。
 前編に引き続き、後編では、山で車中泊をしていた際のトラブルや山を登るうえでのこだわり、支えてくれる旦那様の存在、視聴者への思いなどについて聞いた。

◆長野の自治体から仕事の依頼があることも

――YouTubeチャンネルは登録者が11万人を超えていますが、チャンネルの運営が生活の中心にあるような感じですか?

やぎちゃん:YouTubeチャンネルもそうなのですが、長野に移住してからは自治体のお仕事をいただくことが多いです。例えば安曇野のイベントにあまり人が集まっていないので、「集客はどうすればいいですか?」とか「広告を作る時に何をメインで打ち出せばいいですか?」などと相談を受けたり。あと、私のフォロワーさんが多いので、自治体が何かの調査をしたい時にフォロワーさんに協力していただいてアンケートをとったりもしています。

 YouTubeチャンネルを私が出ている“表側の仕事”とすると、そうではない“裏方の仕事”もけっこうあります。特に長野の自治体からご依頼をいただくことが多いです。

――動画の影響もあって楽しく山を登っている印象が強かったのですが、そういったプロモーション関係の仕事も多いんですね。

やぎちゃん:そうなんです。信濃毎日新聞が運営している「SuuHaa」というWEBメディアでは、副編集長として参加して毎月の会議で意見を出したり、コンテンツを皆さんと一緒に考えたり、長野の魅力をアピールするお手伝いをさせていただきました。登山YouTuberのイメージが強いからか、「やぎちゃんってそういうこともやっているんだね」と言われたりもしていました(笑)。

◆「マイナス15度の車内」での車中泊は冷凍庫のよう…

――ちなみに、山登りや車中泊の活動エリアはやはり長野が多いですか?

やぎちゃん:そうですね。長野が多いですし、山に行くときに車中泊で旅をするっていう感じです。

――山で車中泊をしていると、天候の急激な変化などもそうですし、動物が近寄ってきたり危険にさらされるケースもありそうですね。

やぎちゃん:車内で料理していると周囲にいいにおいを漂わせてしまうので、クマが来るかもしれない…という危険性はあるんです。なので、そういう危険性のある場所では焼き物をしたりカレーを食べたりはせず、おにぎりだけで済ますとか注意しています。

――これまでに危険な動物が近づいてきたことは?

やぎちゃん:今のところクマが迫ってきたようなことはないのですが、野犬はあります。それと、こちらが何もしなければ攻撃を仕掛けてくるようなことはないのですが、サルやカモシカが近づいてきたことはあります。野犬と遭遇した時はすごく怖かったです。ちょうどお菓子のビスコを持っていて、それを投げたら当たって野犬がビックリしてキャンキャン吠えていたんです。その声に私もビックリして、叫びながら急いで下山した記憶があります。

 それと、やっぱり長野の冬は寒くて。マイナス15度の日に車中泊をした時も大変でした。冷凍庫の中にいるような感じですから。

――どのようにしのぎましたか?

やぎちゃん:登山用のシュラフ(寝袋)にエマージェンシーシートをくるんで、体を温めていました。自分のところだけは暖かくなりましたが、車は凍っていました(笑)。

◆外から見えないようにすること、鍵を必ず閉めること

――車中泊の際のこだわりや注意していることなどは?

やぎちゃん:一番気をつけているのは、できるだけ外から見えないようにすることや鍵を必ず閉めること。動画で車を公開しているので、「あ、やぎちゃんだ!」などと気づかれてしまうので。外から見えないようにするための目隠しとしては、プラダンに木目シートとアルミを貼り付けてビニールテープで一周したものを、窓のサイズに合うように作ってはめています。

あと、DIYでラゲッジボードを取り付けて、そこでパソコンでの作業をしたり食事をしたりしています。今乗っているのはバンではなく、小型SUVのクロスビー(スズキ)でそれほど車内が広くないので、スペースをいかに有効に活用して快適な空間を作れるかにこだわっています。

――一方で山を登るうえでのこだわりは?

やぎちゃん:歩くペースを乱さないことです。速すぎるとバテてしまいますし、遅すぎると行動時間が長くなって疲れてしまうんです。私の場合はコースタイム(予め設定さえている目的地までの歩行時間)より少し速い0.7〜0.8倍くらいで歩くのがちょうどよくて、プラス動画の撮影をしながら歩くとちょうどコースタイムと同じくらい(1.0倍)になります。体力は人それぞれ違いますし、自分にとって最適なペースで歩くことは常に意識しています。

◆時給換算で700円…“セルフブラック企業”をしていた時代

――ちなみに、今は個人事業主とのことですが、以前は会社員でしたよね。会社員時代からYouTubeチャンネルを運営されていましたが、動画の撮影や編集はいつされていたのですか?

やぎちゃん:寝ないでやっていました(笑)。やると決めたらやらない選択肢がない性格ですしね。でも、2〜3時間は寝ていましたよ。一度、動画作りに関わる作業を時給換算したら「自分の時給っていくらなんだろう?」と思って計算して講演会で話したことがあるんです。4年間で248本の動画を作っていて、1本の動画を作るために撮影24時間、編集8時間。想定される広告収入から時給換算すると700円だったんです…(笑)。

「地域別最低賃金以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります」という最低賃金法第40条というものがあるのですが、私は50万円以下の罰金を払わなきゃいけないんじゃないかと(笑)。つまり、「“セルフブラック企業”をしていました」みたいな話を講演会でしたのですが、すごく反響がありました。

◆仕事に打ち込めるのは旦那のおかげ

――YouTubeチャンネルの運営のほか、長野のメディアに出演されたり行政関連のお仕事もされていますし、現在も時間に追われているのでは?

やぎちゃん:周囲の方々に恵まれていることもありますし、何よりも旦那(動画出演の際の愛称:おまんじゅう君)が家事を全部やってくれているからこそ、自分の仕事が成り立っているのかなと。本当に家事は何もしていなくて…旦那には頭が上がりません。

私はずっと仕事をしているので、旦那よりも早く起きていて、寝るのも旦那より遅いんです。本当に申し訳ないなと思っています。時折家事をする時があるのですが、「お皿の洗い方があまい」とか「タオルの干し方が下手」とか、家事のクオリティが低いみたいでいつも怒られています(笑)。

――旦那さまも働いているんですよね?

やぎちゃん:そうです。長野の企業に勤めているうえ、家事も完ぺきにやってくれているんです。私が仕事に打ち込めているのは旦那のおかけです。

◆登録者が1人減るだけで「めちゃめちゃへこむ」

――動画には、やぎさんを応援する多くの視聴者さんからのコメントが寄せられています。やぎさんにとって視聴者さんはどういう存在ですか?

やぎちゃん:一番大切な存在です。チャンネル登録者が10万人に到達した時、「僕なんかは10万分の1ですよ」みたいなことを言われたりする方がいたのですが、違うんです!私にとっては一人一人の視聴者さんが大切なんです。なぜかといえば、私は一度も動画がバズったことがないですし、コツコツとたくさんの動画を投稿してきてやっとここまで来られたので。

1本の動画を出して増える登録者は50〜100人くらいですし、動画を4〜5年かけて出し続けて1人1人の積み重ねで今の数になっているので、私にとっては「大切な1人×10万人」なんです。なので、登録者が1人減るだけでめちゃめちゃへこみます。「今日は5人増えたけど、6人減っているからマイナス1人か」みたいな…(笑)。

――やぎさんには意志の強さや男気みたいなものを感じる反面、そういった繊細な面もあるんですね。

やぎちゃん:ウサギのようなメンタルなので…(笑)。

◆山が好きな人が集まれる“アジト”を作りたい

――今後の目標や夢などがあれば教えてください。

やぎちゃん:YouTubeチャンネルの動画投稿や長野でのお仕事は続けていきたいですし、あとは山が好きな人たちがリアルの場で集まれる “アジト”を作りたいんです。去年くらいから「実際にどんな形で運営していくのか」とずっと模索し続けてはいるものの、現実問題になるとすごく多くの壁にぶち当たっていて……。

長野で宿泊施設を運営するのか、そのための物件はどうしようとか、実際に宿を始めたら誰が掃除するのか、そもそもどういうコンセプトでやるのか、私がその場所にずっといられるのか? など、いろいろありすぎてなかなか進んでいなかったんです。

――ここから先が大変?

やぎちゃん:視聴者さんたちには「アジトを作るよ!」「私の生き方を見ていてね!」などと発信をしているにもかかわらず、壁があって立ち止まってしまっている状態でしたらね。この先が一番大変で、それこそ気合だけじゃどうにもならない気がします。

――忙しすぎて時間が確保できないことも要因では?

やぎちゃん:そうですね。だけど、ご依頼いただいている長野でのお仕事もすごい楽しくてやりがいがあるんです。とはいえアジトの計画も進めていくうえで、今後は法人にして人手を増やした方がいいのかな……と考えることもあります。ただ、名指しでご依頼いただいているので、全てのお仕事を自分でやりたい気持ちもあったりで。

いろいろやりたいことはありますが、とにかく2025年は夢であるアジトに向き合う年にしたいと思っています。進捗もYouTubeで発信していくので楽しみにしていてください。

<取材・文/浜田哲男>

【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton

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