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人気俳優の斎藤工が、2月28日公開の映画『ザ・ゲスイドウズ』で柴犬になってパンクな名言を囁く。個性派俳優のマキタスポーツも吐き出されたカセットテープとして口喧嘩。伝説的ホラー映画『悪魔の毒々モンスター』生みの親は男気ノーギャラ出演だ。…って一体どんな映画!?
斎藤工が喋る謎のワンちゃんに
27歳で死ぬことに憑りつかれたハナコ(夏子)は、売れないパンクバンド「ザ・ゲスイドウズ」のボーカルとして悪戦苦闘中。マネージャーからラストチャンスを与えられたことから、バンドメンバーとの田舎での丁寧な共同生活を通して、一世一代の楽曲を作ろうと奮闘する。
手掛けたのは、グロいのにノホホンとする死霊映画『悪魔がはらわたでいけにえで私』で一躍名を上げた宇賀那健一監督(40)。彼自身が影響を受けたホラー映画やパンクミュージックに、北欧映画のオフビートなイメージを混ぜ込んで畦道に叩きつけたような異色作だ。
実験音楽界の巨匠ジョン・ゲージの名前が付けられた柴犬の声を、斎藤工が持ち前のセクシーボイスでアテレコ。ジョン・ライドン、カート・コバーン、ウォーレン・バフェットらの名言をハナコに授けたりする。突飛な設定もさることながら、そんな犬の声を斎藤にやらせようと閃いた宇賀那監督の発想が怖い。
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宇賀那監督は「声だけで印象を与えられる方は誰かと考えた時に、斎藤工さんしかいないだろうと。工さん自身がぶっ飛んだ表現に対して躊躇なく面白がってくれる方なので、当たり前のように快諾していただきました。犬が吠える声をあえて『ワン、ワン、ワン』と工さんに吹き替えてもらったシーンでは、犬がビックとした瞬間に『うんっ!?』とアドリブで声を当ててくれました。細部まで色々とやってくれたのは、さすが工さんです」と嬉しそうに収録を振り返る。
斎藤とは実は関係が深い。「工さんとは『サラバ静寂』(2018年)からのお付き合いで『魔法少年☆ワイルドバージン』(2019年)では伝説の童貞魔法使い役を演じてもらいました。そんなヒーローを演じてくれた工さんが、その後に『シン・ウルトラマン』で日本を代表するヒーローになるなんて…。感慨深いです」としみじみする。
B級映画の帝王ノーギャラ出演
己との格闘の末にハナコが口から吐き落す謎のカセットテープの声は、マキタスポーツにオファーした。
「パンクスピリットをお持ちで、なおかつ芝居として面白いものを出してくれる方…と考えた時に思い浮かんだのがマキタさん。アフレコ収録の際に『何パターンかやってみるから、そこから選んで』と言ってくださって。マキタさんの中でもイメージとして見えたものがあったのかなと嬉しかったです」
『悪魔の毒々モンスター』の監督ロイド・カウフマンも特別出演。ハリウッドに背を向け、NYを拠点にZ級映画を量産しているトロマ・エンターテインメントの総帥で、宇賀那監督作には『悪魔がはらわたでいけにえで私』に続いて2回目の登板となる。
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「僕は『悪魔の毒々モンスター』を筆頭にトロマが生み出した映画が大好きなので、まさか自分の映画に2度も出演してもらえるとは夢のようです。オファーの際にギャラの話をしようとしたら『大丈夫、ノーギャラでOKだ!』と快諾してくれて。とにかく優しい人です」と神対応に感謝しきり。トロマ出身で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンも自作にロイドをカメオ出演させているが「次の僕の作品にもロイドは出てくれているので、ガン監督に負けないくらいロイド出演作品を撮りたいです」とライバル視している。
登竜門は深夜でもチケット完売
『ザ・ゲスイドウズ』は昨年の夏、カナダで開催された第49回トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門で上映された。ジャンル映画の登竜門初参加の宇賀那監督は「真夜中からの上映にも関わらず、1,000人を超える会場のチケットは完売。上映中も爆笑、指笛、声援、拍手喝采。めげることなく今まで映画を作り続けて来て良かったと思えた宝物のような時間でした。これからも妥協せずに自分の映画を作り、いつかカンヌ、ヴェネチアにも行ってみたいと強く思いました」
様々な海外映画祭での上映を経て、日本では2月28日に凱旋公開。
「観客の皆さんには『映画って自由でいいんだ!』と受け取ってもらえたら嬉しいです。最高!意味不明!嫌い!なんでもいいです。見て感じたことをあるがままに受け入れて言葉にして欲しい。『自分も何か作ってみようかな…』と刺激を与えることが出来たら」
そんな宇賀那監督、海外撮影作品を含めて現時点で劇場公開待機作が4作品もあるという。「世界のウガナ」と呼ばれる日は近い?そうなる前に『ザ・ゲスイドウズ』という異色作をチェックしておきたい。
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(まいどなニュース特約・石井 隼人)