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病院・高齢者施設向けの給食事業を展開する日清医療食品(東京都千代田)は、調理現場の担い手不足などに対応した、新たな給食提供の取り組み「シン・食事サービス」の拡大に力を入れている。
東京都内で2月26日開幕した高齢者食・介護食・病院食などをPRする展示会「メディケアフーズ展2025」(2月26〜28日)で、この取り組みを紹介した日清医療食品の立林勝美社長は「医療福祉給食を主たる事業とする弊社にとって、医療福祉分野の深刻な担い手不足への対応は最優先の課題。より少ない担い手でおいしく・食べやすく・高栄養の食事をお年寄りらに提供するこの取り組みを推進し、超高齢化社会の課題解決に貢献したい」とアピールした。
この新たな取り組みの柱は、高齢者・入院患者ら向けに食品メーカー17社と共同開発した、食べやすさや高栄養にこだわった「キザミ食」(1〜3ミリサイズに刻んだ食品)や少量で高栄養を目指した流動食タイプの「ミキサー食」の開発・提供▽食事を前日に準備することを可能にする冷蔵・再加熱・保温の大型自動調理機械「リヒートウォーマー」の導入による調理作業の効率化▽高齢者に多い「低栄養」解消のため、効果的に栄養を摂取するために最適な食事時間などを研究する「時間栄養学」の成果を踏まえた献立(しっかりタンパク質を摂取できる朝食メニューなど)の開発・提供▽食事内容など業務データのデジタル化による食事情報管理業務の効率化▽都市部の栄養士が地方の栄養士業務をオンラインで担う、今後の栄養士不足を踏まえた「栄養士リモートワーク体制」の確立―の5つ。
日清医療食品が「シン・食事サービス」と名付けたこの取り組みは2023年に検討を始め、昨年10月から活動を本格化させた。取り組みを始めたのは、調理に従事するスタッフや給食の栄養分をチェックする栄養士などの社員の高齢化が大きい理由だ。
同社によると、全社員5万2千人余りのうち、65歳以上の社員は約3割を占める。うち75〜79歳の社員は全体の4%で2千人(2024年度)。この75〜79歳の社員は25年度に2千人、30年度に3千人増える見込みという。一方、全体の7割を占める働き盛りの64歳以下の社員は約3万5千人いるが、25年度に10%、30年度に24%、それぞれ減ると計算している。
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この社員の高齢化と日本の少子高齢化を背景とした労働者不足を前提に、日清医療食品は1日も欠かすことができない「医療福祉給食」の“持続可能モデル”を追求し、今回「シン・食事サービス」と名付けた取り組みを確立した。
日清医療食品が現在給食を提供する約5300施設のうち、1割程度に当たる約500施設でこの新たな取り組みを進めている。ベッド数約100床、配置社員約10人規模の施設を中心に取り組みを拡大しているが、25年度はさらに500施設を対象に加える予定という。
本格的に取り組みを始めてから約5カ月が過ぎ、高齢者や入院患者らの「低栄養」の課題で一定の成果が出た。取り組みを進めた施設の一部で、高齢者の体重増加という形で「高栄養」摂取を推測できるデータが得られ始めている、という。
メディケアフーズ展会場の日清医療食品の展示ブースでは、豚肉の角煮やだし巻きたまご、サケの塩焼きを「通常食」「キザミ食」「ミキサー食」の3形態で提供する試食会のほか、大型自動調理機械「リヒートウォーマー」を使用した調理の実演、柴田重信早稲田大名誉教授の「時間栄養学」解説、食事内容などの業務データ管理システムの展示説明などが行われた。
立林社長は「これまでのやり方と異なるアプローチの取り組みを始めたので、取り組みの導入当初は調理現場の社員らの戸惑いもあった。例えば、前日に食事を準備する新たな仕組みや導入機械の操作などに関してだ。社員の理解が大切なので着実に理解を得ながら、この取り組みを、給食提供施設の半数ぐらいまで広げていきたい」と意気込んでいる。
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