AmazonのKindleストアに著名な作家の名前をかたる“偽書籍”が登場し、「キッチン」などの著作で知られる作家・吉本ばななさんが注意喚起した。吉本さんのポストによると、当該書籍の販売ページは2月26日に削除され、Amazonから報告と謝罪があったという。
吉本さんは25日、「私はこんな本書いてないのでもちろん法的に訴えますが、読者のみなさん間違えて買わないでください。とんでもないことです」とポスト。リンク画像は「世界には時間がない:時間のない世界 時間なき世界」という書籍で、吉本ばななさんの名前が入っていた。
Amazonのサポートに削除を要請した吉本さんだったが、カスタマーサービスでは対応してもらえず、「もう一段上のKindleの著作権侵害に関する部署にメールするところまでつないでもらった」という。
一方、東野圭吾さんや村上春樹さんら他の著名作家も同様の被害にあっていたとする指摘もあった(これらの書籍も削除済み)。「十角館の殺人」などの著書がある作家・綾辻行人さんは「村上春樹さん、東野圭吾さん、京極夏彦さん、伊坂幸太郎さんらも同様の被害に遭っているもよう。ニセモノの作品がAmazonのKindleに──って、最低」と憤る。
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●KDP出版が悪用された可能性?
これらの偽書籍が、どのように作られ、どうやってAmazon上で流通したかは確認できない。ただ、偽書籍のいくつかは電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited」の対象になっていたようだ。
Amazonには、通称“KDP出版”(Kindle Direct Publishing)と呼ばれるオンデマンド出版サービスがあり、同人誌や自費出版のユーザーに支持されているが、X上では今回の偽書籍はこの仕組みを悪用したものだった可能性も指摘されている。
KDP出版で制作した本は、紙なら自由に価格をつけてAmazon上で販売できる他、電子書籍にして読み放題サービスの「Kindle Unlimited」対象本にすることも可能だ。登録は、価格設定画面で「KDPセレクト」というプログラムに参加するだけ。出版者には販売時のロイヤリティ上昇に加え、KDPセレクトグローバル基金の分配金も支払われる特典がある。
吉本さんは「とりあえずアップすれば先方にお金が入るシステムになっているから、こういうことがおきるわけです」と指摘。「今はまだこういう犯罪の温床になりうるから、私はUnlimitedを解約します」として、Kindle UnlimitedやKDPセレクトの仕組みを批判した。
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なお、偽書籍はその表紙デザインなどから生成AIを使って作られた可能性を指摘する声も上がっているが、吉本さんは「AIを否定する気持ちは全くありません。使う側の問題です」と断じている。
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