レッドソックス吉田正尚が「干される可能性」も…“正念場の3年目”で逆襲なるか

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2025年02月27日 16:11  日刊SPA!

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吉田正尚選手 公式Instagramアカウントより引用
 メジャーリーグはキャンプインしたのも束の間、早くもフロリダ・アリゾナ両州でオープン戦が始まっている。
 現地23日(日本時間24日)には、小笠原慎之介(ナショナルズ)と藤浪晋太郎(マリナーズ)がそれぞれ新天地で初登板。ともに1イニングを無失点に抑える好スタートを決めた。

 一方、日本人打者では、指名打者(DH)としての出場が増える見込みの鈴木誠也(カブス)が、オープン戦3試合に出場しているが、9打数無安打とそのバットからまだ快音は聞かれていない。

◆吉田正尚、メジャー3年目の正念場

 今季メジャーリーグでプレーする日本人打者は昨季と同じく3人。鈴木に加えて、二刀流復帰を目指す大谷翔平(ドジャース)、そしてメジャー3年目を迎える吉田正尚(レッドソックス)だ。

 吉田の過去2年を振り返ると、1年目(2023年)こそ、7月下旬に一時ア・リーグ打率トップに立つなど、自慢のバットコントロールが冴え、期待通りの活躍を見せていた。ところが、8月以降に失速すると、勝負の2年目(24年)は故障がちとなり、108試合の出場に留まった。

 1年目に比べて軒並み下降した打撃成績は、DH専任として失格の烙印を押されかねない数値。加えて、走塁の貢献度も低いとなると、今季の出場機会はかなり限られそうだ。

 また、昨季オフに右肩の手術を受けており、今キャンプもスロースタートとなっている。打撃練習は行っているが、キャッチボールは20メートルほどの距離で肩をかばいながら。開幕に間に合うかも微妙な状態だ。

 ただ、右肩の故障が昨季の打撃不振に多少なりとも影響していたのなら、万全な状態に戻りさえすれば、1年目の前半レベルまで巻き返す可能性も十分あるはず。オリックス時代に2度の首位打者を含めた6度の3割を記録し、2023年のWBC準決勝(対メキシコ)で起死回生の同点3ランを放った男ならこのまま終わるわけにもいかないだろう。

◆チーム事情により吉田の出場機会が激減する可能性も

 しかし、たとえ吉田が万全でもチーム事情により、大幅に出場機会を失うことになり可能性もある。レッドソックスは今月中旬にアストロズからFAになっていた三塁手のアレックス・ブレグマンを獲得。大きな戦力補強には違いないが、同ポジションには生え抜きでチームの顔でもあるラファエル・ディバースもいる。ディバースは三塁を死守する構えを見せており、ブレグマンが二塁かDHに回る可能性が高い。

 そうなれば、おのずと吉田の出場機会も減ることになる。今季はある程度、外野の守備に就くことも想定されているとはいえ、1〜2年目を上回るパフォーマンスを見せない限り、代打要因に成り下がってしまうだろう。

 そこで浮上するのが吉田のトレード話だが、2027年までの3年間で5580万ドル(約84億円)の契約が残っている。現状の吉田に対してそのすべてを支払う球団はいないだろう。トレードで吉田を放出するにしても、レッドソックスは年俸の相当額を負担せざるを得ないのではないか。

 チームとすれば、吉田が活躍することでトレードの価値を上げたいところ。しかし、故障者が出ない限り、吉田の出場枠は限られる……。まさにチームも吉田も八方ふさがりというわけだ。

◆トレードが吉田の活路となるか

 ただ、早いタイミングで吉田とレッドソックスに手を差し伸べる球団があるとすれば、吉田が“新天地”で輝く可能性は十分に残されている。先述したように、オリックス時代の吉田は右に左に安打を打ち分け、時に狙いすました一発を放つなど、日本球界屈指の強打者だった。その片鱗はレッドソックスでも1年目の中盤まではのぞかせていた。

 もしトレード話がまとまれば、請われて行くことになるため、少なくとも一定期間はレギュラーとして出場機会を得ることになるはずだ。その頃までには肩の状態も万全になっているだろう。

◆多くの日本人打者が阻まれた“打率3割の壁”

 そうなれば、日本人打者として史上4人目の打率3割も見えてくる。これまで規定打席に到達したうえで、打率3割の壁を突破した日本人打者は意外と少なく3人だけ。10度達成のイチロー氏(01〜10年)、松井秀喜氏(05年)、そして大谷翔平(23〜24年)である。

 複数回達成したのはイチロー氏と大谷しかいない。日本のプロ野球で首位打者経験がある青木宣親氏や福留孝介氏、秋山翔吾といった並み居る強打者もメジャーでは3割の壁に阻まれた。

 20〜21年にパ・リーグの首位打者に輝いた吉田と同じく、鈴木も19年と21年にセ・リーグで同タイトルを獲得している。今季は大谷を含めて3人が打率3割に乗せてもおかしくないだろう。

◆吉田が3割打者になるために必要なこと

 ただ、吉田と鈴木のどちらが打率3割に近いかとなると、間違いなく吉田の方だ。昨季の2人の打率は吉田の.280に対して、鈴木は.283。メジャー投手により適応している鈴木が打率3割に近いイメージもあるが、「BABIP」という指標を見ると、決してそうとはいいきれない。

 BABIPとは、「Batting Average on Balls In Play」の略で、本塁打を除くインプレーの打球のうち安打となった割合を表す指標のこと。この数値が高いほど運がいいとされるが、長いスパンで見ると、どの打者も.300前後に落ち着く。

 昨季の鈴木はこのBABIPが.370という超ハイアベレージだった。つまり、かなりの幸運に恵まれた結果が打率.283につながったということになる。

 一方で吉田のBABIPは.302とほぼ平均値だった。オリックス時代は.320〜.350と、かなり高い数値で推移していたが、メジャーでは若干だが運に見放されているともいえるだろう。もし今季のBABIPを.330前後まで引き上げることができれば、打率3割も見えてくるのではないか。

 メジャー1年目の8月以降、大きく評価を落としている吉田。首脳陣からの信頼を取り戻すところから始めなくてはいけないが、吉田なら華麗なる逆襲を果たしてくれるはずだ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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