引きこもりの兄が喧嘩に包丁も…漫画「名前のない病気」描いた宮川サトシさんに話を聞いた

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2025年02月27日 16:50  まいどなニュース

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2月28日発売「名前のない病気」©宮川サトシ/小学館

漫画家、宮川サトシさんが2024年「スペリオール ドキュメントコミック大賞」を受賞した作品「名前のない病気」(小学館)1巻が2月28日に発売される。

【漫画】「名前のない病気」の一部を読む(5ページ)

これまで健康や育児、家族をテーマにほっこりするエッセイ漫画を多く手掛けてきた宮川さんが本作で描くのは、これまでの作品に登場させてこなかったひきこもりの兄。

ゴミ屋敷になった実家で一人暮らす兄と、それまでの過去を作者ならではの鋭い目線で描いた作品は、「惡の華」(講談社)の作者であり審査員の押見修造さんにも絶賛された。辛い過去の記憶をこじ開け再び対峙する作品を、なぜ「描かなければ」ならなかったのか。宮川さんにインタビューした。

ーー思い返すのが辛いこともあったのでは。

宮川:記憶の蓋を開けながら漫画を描いているので、仕事だと割り切ることができました。時間も経っているので後悔もありますが許せていることも多いです。泣きそうになるけど、泣くことでもないしな…という感じ。辛くなる瞬間が来ると一旦作業ストップしてます(笑)。

ーー描かなければという義務感はどこから。

宮川:ドキュメンタリー番組の出演者は大変な人生を送ってる人が多いですが、観るのが辛かったら観ないはず。多くの視聴者が観るってことは、おもしろいって思ってるのではないでしょうか。笑える面白さではなく、自分の生き方のヒントになるようなおもしろさ、興味深さがあるからだと思うんです。この衝動の正体は、おもしろさに尽きると思っています。

ーーあの時ああしていれば、などと思うことは?

宮川:後悔は全くないんです。タイムマシンで戻っても同じ選択をすると思う。あの経験で得られた考え方や感性が気に入ってるんです。そんなこと考えたこともないくらいです。

ーーいちばん伝えたいことは。

宮川:母親が「何のためにあの子が生まれたんだろうね」と言うシーンがあります。

その時、大学生だった何の実績も無い私が「いつか作品にするよ!」って言ったんです。当時から、こんな生活をしている人がいるよって記録したかった。うちの兄ちゃんこんな感じなんだ、って言えたらいた意味があるのでは。不謹慎と思わず、おもしろいこととして受け取ってもらったら嬉しいです。

◇    ◇

宮川さんは白血病の闘病経験もある。辛い出来事の乗り越え方を聞くと、「漫画だけでなく作文でも何でもいいから吐き出すと楽になる。記録して、自分から引きはがして客観視するのが大切」ということだった。家族とは、血の繋がりとは一体何なのか。深く考えさせる一冊だ。

「名前のない病気」1巻
著:宮川サトシ
定価:770円(税込)
発行:小学館
2月28日頃発売

(まいどなニュース特約・米田ゆきほ)

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