「キミとアイドルプリキュア♪」が始まりました。
この作品の前期エンディング曲「Trio Dreams」が最高にカッコイイのです。BPM158のハイテンポな楽曲はこれまでの「一緒に踊ろう」型のエンディングから、ペンライトを振り、コール&レスポンスで応援する“推し活”型エンディングに変化し、「プリキュアを応援する楽しさ」を子どもたちに届けていきます。
●「キミとアイドルプリキュア♪」スタート
2025年2月2日、プリキュアシリーズ第22弾「キミとアイドルプリキュア♪」(以降キミプリ)がスタートしました。今作は「アイドル」がモチーフ、テーマは「“キミ”がいるから輝ける、強くなれる!」となっています。
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シリーズディレクター(監督)には「劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal」や「映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」の監督を務めた今千秋さん、シリーズ構成には加藤陽一さんが起用されました。
加藤さんは「アイカツ!」や「アイドルマスター ミリオンライブ」「アイドルマスター シャイニーカラーズ」などのシリーズ構成も手掛け「アイドルアニメ」に強い印象もありますが、女児向け特撮「ひみつ×戦士ファントミラージュ!」など「ガールズ×戦士シリーズ」を成功に導いた実績などもあり「女児向けバトルもの」にも強く、まさに「アイドル+プリキュア」という組み合わせに最適な人が抜てきされた印象です。
●王道のプリキュア観に、アイドル要素をプラス
さてそんなキミプリ、序盤の2月は「王道のプリキュア」が展開されました。
「ガールミーツフェアリー」から始まり、伝説の戦士プリキュアを探すために人間界に来た妖精、3人組の悪役がアジトで悪役会議、人間のキラキラを奪う敵幹部、町で暴れる大きな敵、思いの力で変身するプリキュア、派手な決め技、2番目の青いプリキュアといった20年間積み上げてきた「概念としてのプリキュアっぽさ」が満載なのです。
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プリキュアを見続けている人には「最新作なのにどこか懐かしい」印象もあるのですが、逆に初めてプリキュアに触れる子どもたちには新鮮に見えるのでしょうね。
そんなプリキュアとしての安心感に加え「アイドル」という新しい要素がとても良い方向に機能しています。
決め技のパンチ技をアイドルらしく「グータッチ」と表現するアイデアや、「歌って敵を浄化」するのではなく、歌って敵をノリノリにしたところで「決め技をぶつける」のがとてもプリキュアらしいですよね。
まさにプリキュアでしか表現できない「アイドル」が描かれています。
また、第2話「私、バズっちゃってる!?」では「アイドルのステージを勝手に撮影するのはダメ」や「一度ネットに上げたものは消えない」などのネットリテラシーの啓発や、第5話「レジェンドアイドル!?響カイト」では伝説のアイドル・響カイトの声を男性アイドルグループSnow Manの佐久間大介さんが演じることでも話題となりました。
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●加藤陽一さんが創造する特徴的なフレーズ
「キミと一緒に!キラッキランラン〜♪」
本作を象徴するこの言葉は、「特徴的なフレーズを用いて世界観を確立していく」というシリーズ構成の加藤さんの得意とするところ。
過去作でも、アイカツ!では「芸能人はカードが命」「うんうん、それもまたアイカツだね」などの印象的なフレーズで作品を引っ張って来た加藤さん。今作でも「キラッキランラン」や「歌って踊ってファンサして」など心に残るフレーズで作品の世界観を作り上げています。この先も特徴的なセリフが出てくるのでしょうか。
また、今作は例年よりも全体的に「展開」も「セリフ回し」もかなりテンポが早く、ポンポンと言葉が発せられ場面もクルクル変わっていきます。これは「ネット動画」的なスピード感で、これが子どもたちにも聞きやすく心地よいテンポ感になっているのだと思われます。
●エンディングは「一緒に踊ろう」型から「ペンラで応援する」型へ
さて、本作の「アイドル要素」を象徴的しているのがエンディング曲「Trio Dreams」です。キミプリの声優さん3人が歌うこの曲、とにかくカッコよくてノリノリな曲になっています。
公式YouTubeで楽曲がアップされていますので、一度聞いて見るとよく分かるのですが、これまでのプリキュアのエンディングとかなり方向性が異なっています。
ここ数年のプリキュアのエンディング曲はBPMがだいたい130〜140だったのが、「Trio Dreams」はBPMが158もあり、昨今のエンディング曲の中でもかなりハイテンポな曲となっています(BPMは著者調べ)。
この曲は従来のエンディング曲のように「子どもが一緒に踊る」ことを想定していない曲だと思われます。
その証左として、例年であればプリキュア公式YouTubeチャンネルで、子どもたちに向けた「エンディング曲のダンスレッスン動画」が公開されるのですが、今作の「Trio Dreams」はその「ダンスレッスン動画」が公開されていません。
代わりにキュアアイドルたちの個別のステージ曲のダンスレッスン動画が公開されています。
その点からみても、子どもが一緒に踊る曲はプリキュア個別のステージ曲に任せ、「Trio Dreams」には違う役割が与えられているものと思われます。
この曲は、歌詞にも「コール&レスポンス」が入っていたり「FuFu!」といった合いの手、「キラッキラン」でペンライトを一緒に振るタイミングなどが分かりやすく誘導され、まさに「子どもたちがプリキュアを推す」ための楽曲となっているように感じます。
いわば従来の「一緒に踊ろう」型エンディングとは異なり、「ペンライトを振り、コール&レスポンスで応援する“推し活”型エンディングになり、子どもたちの「推し活の入り口」の曲となっているのです。
それを裏付けるように、玩具でも「推し活」用のグッズが展開されています。
●玩具でも推し活を推進
キミプリでは「なりきり変身玩具」の他に「推し活グッズ」としてペンライトなどが発売されています(「キミとおうえん♪ 推し活グッズ大紹介!」(プリキュアおもちゃウェブ))。
Webサイト上でも「推し活グッズ大紹介!」の文字が見られ、玩具の説明文にも「プリキュアを応援する時に使用したり、ライブステージの盛り上げにも使える応援グッズです」、との記載があります。
本作では「なりきり玩具」と「推し活グッズ」の両ラインで、従来の「プリキュアになりたい」と憧れる子どもたちに加え、新しく「プリキュアを応援する楽しさ」や「推し活」の概念を子どもたちに提示しているのです。
●「キミ」との関係性を重視
ABCアニメーションの西村舞音プロデューサーは、番組開始のコメントの中で、
「いつも応援してくれるキミがいるからプリキュアは輝く事が出来る」「キミ」と「私」で照らしあっていく
など「プリキュアとキミ」との関係性を重要視している旨の発言をしています。
「アイドル」というテーマの中に、私たちは“キミと”という大切な思いを込めました。
いつも応援してくれる「キミ」がいるから、隣で一緒にステージに立ってくれる「キミ」がいるから、私は輝くことができる。
そしてその輝きは一方通行ではありません。もらった輝きを「キミ」に返すことで、「キミ」と「私」で照らし合っていく…。
「キミとアイドルプリキュア♪」公式サイトから
キミプリの推し活は「ファンとプリキュアが互いに輝きを高め合う関係性」を描き、「応援する側も主役」というポジティブな視点が導入されています。
●子どもに「健全な推し活」を
現代社会での「推し活」は良い部分もたくさんありますが、行き過ぎると「お金をたくさん使う人が偉い」「認知してもらうために過剰に目立とうとする」「他人と比べてしまい落ち込む」など悪い方向に進む人も出てきてしまいます。
そんな中、キミプリで「相互に輝きを高めあう」「お互いが主役」という、いわばポジティブで「健全な推し活」を子ども時代に体験できれば、大人になったときに変な推し活にハマらないようになるのは、ある意味とても有意義なのではないかと思うのです。
●問われる大人のマナー
そして、子どもの「推し活」とともに問われるのは「大人の推し活マナー」です。
プリキュアシリーズは2023年のプリキュア20周年を機に「大人もターゲットの1つ」と明言されるようになってきています。
プリキュアのイベントなどをみても、昨今は若い男女の姿が本当に増えてきました。
とはいえ、プリキュアのメインターゲットはあくまで「小さな子どもたちとファミリー」であることは間違いありません。
「大人も対象にしたイベント」ならばともかく、「子ども向け、ファミリー向けのイベント」で大人が子どもたちに迷惑を掛けることがあってはいけません。
「子どもの推し活」のお手本となる様に、我々オトナのプリキュアファンの推し活のマナーも試される、そんな1年になっていくのではないでしょうか。
何はともあれ、キュアキュンキュンの登場が楽しみです!
(C)ABC-A・東映アニメーション
●著者:kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
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