限定公開( 4 )
シャープが「聴覚拡張型イヤフォン」という聞きなれないキャッチフレーズの新製品「SUGOMIMI」を2月14日にリリースしました。これ、実は集音器としても使えるイヤフォンです。実機を借りることができたので、どのように使えるのか検証したいと思います。
シャープによると、同社は2021年から「Medical Listening Plug」という補聴器を販売していますが、どうしても利用者が限られるというジレンマを抱えているそう。そこで補聴器で培った技術、例えば入力音の大きさを考慮して周波数帯域ごとに音を増幅する「ノンリニア増幅」などを機能を盛り込んだ集音器兼イヤフォンを企画しました。
というのも、補聴器は厚生労働省から「管理医療機器」というお墨付きをもらわなければ売れません。そして取り扱う店舗も保健所の販売許可が必要です。
しかし集音器ならあくまでもオーディオ機器なので、お墨付きや許可は不要。販売のハードルを下げられるため、流通面はもちろんコスト面でも大きなメリットになります。
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一方で、補聴器は医療機器として一定の効果が保証されますが、集音器にそれはありません。今回はその性能も見きわめたいところではありますが、私は聴力には現状問題がないので、参考と捉えてもらえれると幸いです。
●いきなり「聴力チェック」
では、届いた製品を見ていきましょう。今時のワイヤレスイヤフォンですから、ケースと本体を充電し、スマートフォンなどに専用アプリ(SUGOMIMIアプリ)を導入するまでは他の製品と同じです。
SUGOMIMIが他と違うのは、ペアリング後の最初の手順に、いきなり「聴力チェック」があるという点。スキップもできますが、今回は検証ですからちゃんとやっていきます。
この聴力チェックは、私の耳の特性に合わせてイヤフォンをキャリブレーションするということ。チェック自体は、左右の耳、それぞれ7つの音の音量を変えながら行います。
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聴力チェックが終わると、シーンを4つ選択してくださいと表示されます。これは後で分かることですが、SUGOMIMIで音を聞くであろう場面を選んでくださいという意味でした。
私はここで「標準」「コンサート」「テレビ・動画」「スピーチ」という自分に関係ありそうなシーンを選びました。この内容をアプリからイヤフォンに転送して、SUGOMIMIのセットアップは完了です。
一番テストしやすい「テレビ・動画」モードでテストしてみたところ、まるでテレビに一歩近づいたかのような感覚になりました。電車の中でも使ってみると、少し遠いところで話している声がいつもより鮮明に聞こえたことにびっくりしました。
また、個人的に気になった「コンサート」もライブ演奏の動画を使ってテストしてみました。こちらの方がより音源が手前にきている感じがあります。実際のコンサートでは、もっと効果的に聞こえるのではないでしょうか。
シーンと自分の相性をテストするための音源もアプリに用意されています。ここで音を選ぶと、スマホからそれぞれの音が出て、SUGOMIMIのテストができるということです。
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なお、このリスニングモードのときに、イヤーチップのサイズがちゃんと合ってないとホワイトノイズばかり聞こえるようになってしまいますので、普通のイヤフォン以上にイヤーチップのサイズは選んでください。
●親切設計も良し
SUGOMIMIの充電ケースには、他にはあまりない特徴があります。それは充電ケースへの充電の部分。普通、充電ケースにはUSB Type-Cのケーブル穴がついているだけですが、このSUGOMIMIの充電ケースにはUSB Type-Aのプラグが本体に隠れています。
あまり見ない仕様ではありますが、この仕様だとケーブルがなくても充電できるわけで、親切な設計ともいえます。また、この親切設計は商品全体でも貫かれていて、イヤフォンを装着すると「充電できています」とか「つながりました」とアナウンスしてくれます。
付属品はUSBケーブル、イヤーチップ(S、MS、M、L、LL)各2個、クリーニングブラシ。クリーニングブラシまで付いてるのもあまり見ませんね。ここも親切設計です。
●聴覚拡張型イヤフォンの可能性
SUGOMIMIのすごいところは、耳の“聞こえ”を助けるリスニングモードと、普通のイヤフォンとして使えるストリーミングモードが1つの製品に同居しているところにあります。
スマホに接続して使うワイヤレスイヤフォンは、電話で話すことも求められているのでマイクが付いているのはもはや当たり前。またノイズキャンセリングのためにマイクを内蔵している製品も多いです。
でも、そのマイクを使って“聞こえ”が気になっている人たちや、音の聞こえ方に関心がある人たちをサポートするイヤフォンというのは珍しいです。補聴器は、常時耳が聞こえにくい人のためのものですが、ときどき耳が聞こえにくいことがあるという人も中にはいるわけで、そういう人たちには補聴器はオーバースペックになってしまいます。そして、耳に助けが必要かどうかはその人の耳の特性やシーンに影響を受けます。
つまり、その人にとって必要なときだけ、SUGOMIMIのように普段イヤフォンで使っているものを切り替えて、耳を助けるマイクとして使うというのは理にかなっているといえます。そのおかげで生活の質を向上することができる人たちがいるというのも容易に想像できます。
SUGOMIMIが提案しているのは「必要に応じて聴覚を拡張することができるデバイス」です。補聴器のような専門機器ではなく、日常的に使うことができる製品にその機能を追加したのがポイント。軽度の聴覚問題を抱える人だけではなく、騒がしい場所での会話や音楽鑑賞など、特定の状況で聴覚をサポートしたい人にも有効なデバイスになるのではないでしょうか。
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