活動を振り返るNPO法人リカバリー・サポート・センターの木村晋介理事長=2月27日、東京都新宿区 オウム真理教による地下鉄サリン事件から30年となるのを機に、被害者の集団検診などをしてきたNPO法人「リカバリー・サポート・センター」(東京)が3月末で解散することが28日、分かった。受診者数の減少やスタッフらの高齢化が理由で、理事長で弁護士の木村晋介さん(80)は「被害者も心身の不調と少しずつ折り合いをつけられるようになった。30年の節目で、解散を決めた」と明かした。
センターは2002年3月、検診体制の強化やサリンの健康への影響を調べる目的で設立された。有志の医師らによる検診は事件翌年の1996年から行われていたが、5年ほどたっても目の不調を訴える被害者は少なくなかった。
木村さんは「一過性だと思われたサリンの症状が持続的なものだと分かった。長期的に被害者を診る体制が必要だった」と振り返る。神経眼科医や精神科医らが集まり、坂本弁護士一家殺害事件で支援活動に当たった木村さんが理事長を引き受けた。
年に一度の検診では眼科検査やカウンセリングに加え、アロマセラピーやツボマッサージ講習会なども開き、被害者同士の交流の場も設けられた。高齢化による受診者数減少やコロナ禍もあり23年に検診は終了したが、有志の頃を含め延べ2700人以上が受診した。
体や目、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの症状について問うアンケートも00年から毎年続け、これまで延べ約7600人分のデータが蓄積された。20年には広島大などがデータを基に、被害者とPTSDとの関連についての研究成果を発表した。データは今後、研究者らへの提供も念頭に活用法を検討中といい、木村さんは「サリンの人体への影響を示す貴重な資料。万が一、同じような事件が起こったときには先例として役立てられれば」と話す。
センターの解散は昨年11月の総会で決議され、今年2月末発行の広報誌で会員約1000人に報告された。事件30年に合わせ集めた会員の手記には「センターの存在が心の支えになった」「気持ちに安心感を与え続けた」などの言葉が並んだ。
設立当初からの職員の山城洋子さん(76)は「当初は資金面や被害者との関係で不安もあり、一年一年の積み重ねだった。続けられたことをよしとしたい」と感慨深げに話した。
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サリン被害者を支援してきたリカバリー・サポート・センターの解散を報告する広報誌の最終号=2月28日、東京都千代田区
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リカバリー・サポート・センターが20年以上にわたり実施したサリン被害の症状アンケート。回収した枚数は7000枚以上に上る=2月27日、東京都新宿区