育休明けの社員、赤ちゃん用おむつの「吸水してもサラサラ」をヒントに日焼け止め開発 あの「ベタベタ」感の脱却に成功→大ヒット商品へ

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2025年03月01日 06:50  まいどなニュース

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おむつに使われている吸水ポリマーの機能に感動した

日焼け止めは夏の紫外線対策のほか、スキンケアの一環として年間を通して需要があるという。従来、伸びが良く軽い塗り心地の日焼け止めは、塗膜が薄くなったりオイル成分が多かったりするため、肌に塗るとベタつくなど不快感があった。それは仕方のないことと半ば諦められていたが、株式会社ナリス化粧品(大阪市福島区)が昨年発売した日焼け止めクリーム「by365 パウダリーUVクリーム」は、肌に塗った後の感覚がサラサラしていながら保湿効果もあるという“相反する”使用感を実現。開発のヒントになったのは、なんと赤ちゃん用の紙おむつだった。

【写真】紙おむつをヒントに開発された日焼け止め

育児休暇中に我が子のおむつを替えながら吸水ポリマーの機能に驚愕

昨年2月に発売された「by365 パウダリーUVクリーム」(参考価格・税込990円)は、これまでにない使用感がユーザーに支持され、発売後9カ月の売り上げは計画比232%を記録した。肌にのせるとポテッとした白いクリームだが、塗り伸ばして少しするとサラサラでべたつかない感触に変化する。肌表面はサラサラな感触だが、肌の表面が乾燥しているわけではなく保湿されている、という不思議な感触だ。

開発に当たったのは、ナリス化粧品で研究開発に携わる河内佑介さん。ヒントになったのは、育児休暇中に出合った赤ちゃんの紙おむつだという。

「おむつに使われる吸水ポリマーは水分を吸ってパンパンに膨らんでいても、手触りがサラサラなんですよ。素晴らしい技術だと感動しました」

感動したものの、すぐに日焼け止めが閃いたわけではなく、何かに応用できないかと考えていたそうだ。

一方、日焼け止めには「いつまでもベタベタする」という使用感に課題があった。そもそも、紫外線吸収剤そのものにベタベタした感触があるという。そのため処方検討の段階でベタベタ感を低減させる工程を経るのだが、肌にしっかり塗ろうとすれば塗膜が厚くなり、結局ベタベタしやすいというジレンマがあった。

「それでも日焼け止めを塗った後にサラサラしたいという要望があります。吸水ポリマーを応用したら、その課題を解決できるのではないかと考えて、検討を繰り返しました」

「アイデアを形にするまで時間はかかりましたが、それを弊社の営業や企画部門に出したら想像以上に気に入ってもらって、すぐに発売したいというので、そこから1年くらいで商品化しました」

年間を通して日焼け止めに需要があるとはいえ、やはり夏が終わると売れ筋商品を残して、店頭の棚から下ろされてしまう。しかし「by365 パウダリーUVクリーム」は秋になってもリピーターが絶えず、ドラッグストアの店頭に並び続けているという。

男性が育児休暇を取りやすい職場環境

「by365 パウダリーUVクリーム」を大ヒットさせた河内さん。じつは育児休暇が明けて職場復帰した後に昇進し、現在の肩書は「研究開発部研究開発課処方技術開発グループリーダー」だ。同社では、育休明けに昇進するケースが少なくないという。

男性が育児休暇を取っている間、家事をする機会もあるだろう。その経験から、女性社員とのコミュニケーションが円滑になったり、商品開発のヒントや改善ポイントを見つけられたりする。実際、河内さんはおむつの吸水ポリマーから着想を得て、「サラサラ」と「保湿」という相反する2つの要素を併せ持つ商品の開発に成功した。

今後も「by365 パウダリーUVクリーム」で得たサラサラ感のある製品技術をベースに、新しい展開を計画しているという。ユーザーの困りごとを解決するという意味では、まだ開発できる製品がある。多くの人が快適で安全に使用できる化粧品の開発に取り組みたいとのことだった。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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