「なんでもそろう」ファミレスの人気低下が示す“時代の変化”。すかいらーくの「資さんうどん」買収で見えたもの

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2025年03月01日 09:11  日刊SPA!

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 経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社すかいらーくホールディングスを紹介したいと思います。
 かつて同社はハンバーグやピザを主力商品とする「すかいらーく」を全国に展開し、日本にファミレスを広めた存在です。バブル崩壊以降には低価格業態「ガスト」を開発し、現在に至るまで同社の主力ブランドとなっています。しかし、昨今はファミレス業態が苦戦していることから、徐々に専門店へと軸足をシフトしています。

◆チェーン店黎明期を切り開いた「すかいらーく」

 すかいらーくHDは1962年、ことぶき食品有限会社として設立。多摩地域を中心に食品スーパーを展開していましたが、当時はダイエーや西友などの総合スーパー(GMS)が台頭し始めた時代。GMSに勝てないと判断した創業者はファミレス事業への参入を決め、1970年に「すかいらーく」の1号店を出店しました。

 ハンバーグやピザなどの洋食を低価格で提供する同業態は、すぐに消費者に受け入れられました。当時はマクドナルドも出店しておらず、チェーン店は居酒屋の「養老乃瀧」程度しかありません。個人店がメインだった時代に、定価かつ一律のメニューを提供するチェーン店は、消費者にとって安心感を与えてくれました。1980年にはコーヒーショップ風の別ブランド、ジョナサン、83年には和食業態の藍屋、86年には中華のバーミヤンと、順調にジャンルの幅を広げました。

◆景気悪化に伴い「ガスト」が主力の座に躍り出る

 1991年にバブルが崩壊すると、消費者は価格によりシビアになりました。そこで同社は低価格業態「ガスト」をプッシュします。開業当初はメニュー数をすかいらーくの半分程度に抑え、さらにドリンクバーの導入で人件費を削減しました。また、現在のファミレスでは当たり前となったベルトコンベヤー式のオーブンを使うことで、調理の手間を省きました。当時の客単価はすかいらーくが1,000円前後であるのに対し、ガストは750円程度でした。

 すかいらーくの店舗数は93年時点で750店舗のピークを迎えましたが、低価格路線のガストがヒットすると、店舗を次々に置き換え、すかいらーくは2009年に消滅しました。ちなみに似たような事例として、同社は藍屋の低価格版である夢庵を94年にオープンしています。2024年度末時点で主力のガストは1,249店舗となり、グループ全体では3,069店舗を展開しています。

◆唐揚げブームに乗って「から好し」を併設化

 現在のガストを見ると、どこの店舗でも「から好し」という看板が出ています。から好しは2017年にすかいらーくが唐揚げ専門店として出店した業態でしたが、コロナ禍で唐揚げブームが起きると、同社は20年7月からガストにおけるから好しの併設化を進めました。店舗自体は従来のガストと変わりませんが、唐揚げメニューが充実しています。併設店における唐揚げの売上は好調だったようで、現在ではガストのほとんどがから好しとの併設店です。

 しかしながら、全体の業績は悪化しました。2020年度から2024年度までの業績は下記の通りです。近年の業績悪化はコロナ禍による外食控えも影響していますが、消費活動が正常化した現在でもガストの店舗数は減少しています。

【株式会社すかいらーくホールディングス(2020年〜2024年)】
売上収益:2,884億円→2,646億円→3,037億円→3,548億円→4,011億円
営業利益:▲230億円→182億円→▲56億円→117億円→242億円
全社店舗数:3,126店→3,098店→3,056店→2,976店→3,069店

 上記の間にガストの店舗は1,326→1,249に、ジョナサンも253→163と減少しており、ファミレス業態は既に縮小路線を進めています。一方で中華のバーミヤンは338→363と堅調に推移し、しゃぶしゃぶ業態のしゃぶ葉も263→301と増加傾向です。

◆今後はファミレスから“専門店化”へ

 ファミレス業態が苦戦する背景には「なんでもそろう」という総合店としての魅力が失われた事があげられます。当初は低価格で多彩なジャンルを提供する店舗として消費者を集めましたが、イタリアンや麺類、和食など、各ジャンルで味にも価格にも優れる専門店が多数現れ、ガストの地位は低下しました。すかいらーく当初からの主力であるハンバーグに力を入れているようですが、「びっくりドンキー」のようなインパクトはありません。

 それゆえにか、すかいらーくHDは“専門店化”を進めています。ガストから他の専門店業態へ転換する動きが見られ、特に近年ではしゃぶ葉を強化しています。また、24年9月にはM&Aで「資さんうどん」の約70店舗を取得したのは、大きな話題になりました。九州地盤のうどん店である同業態を関東にも展開する方針です。

 従来のガストはこれからも残ると思いますが、今後、一ジャンルに絞った専門店の新規開発やM&Aを強化すると思われます。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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