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「ナイフで刺されているような痛みや血管にガラスが流れているような痛み、手足をちぎられているような激痛と常に闘っています」
線維筋痛症の症状を、そう表現するのは星咲らむさん(@Regenove_Ram)。SNSでは、自身の闘病体験を漫画で分かりやすく配信中。病気の周知に取り組んでいる。
24時間365日、激痛が走る「線維筋痛症」の辛さ
線維筋痛症とは、全身の様々な場所に激しい痛みが出る病気だ。原因は不明であり、現代の医学では根治法がない。また、診断の決め手となる検査法は確立していないため、他の病気ではないことを調べるという消去法での確定診断となっている。
星咲さんは中学生の頃、眠れないほどの激痛に苦しめられ、かかりつけの小児科へ。大きな病院を紹介され、その病院の医師が線維筋痛症を知っていたことから、確定診断に至った。
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病状は、次第に悪化。24時間365日、激痛と闘わなければならなくなった。
星咲さんの場合は睡眠障害や抑うつ症状、倦怠感なども併発したという。
線維筋痛症は全身痛だけでなく、こうした症状が現れる場合もあるが、見た目では分からないため、当事者の苦しみが理解されにくい。実際、星咲さんは「怠けだ」「育て方のせい」「虚言だ」という心ない声に傷ついたことがある。
「そのように考える方々にも様々な背景があると思うので、私は納得できないことに対して無理に共感や理解はしなくてもいいと思います。ただ、当事者が感じている痛みを否定しないでほしい。それだけでも救われるんです」
病気の認知度を高めたくて「見えない痛み」を漫画で配信
漫画で闘病体験を伝え始めたのは、高2の頃だ。当時は今以上に病名の認知度が低く、問診表に病名を書いても、医師から病状の説明を求められることがあったという。
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「毎日、叫ぶほどの激痛と闘う中で、病名の認知度を上げて難病指定してもらうためには、何ができるのかと考えるようになったんです」
様々な場所に自作のパンフレットを置いてもらおうか。講演会を開いてみようか。当初はそう考えたが、認知度を上げるには“病気の世界”を普段、意識せずに暮らしている人に知ってもらうことが1番大事だと気づいた。
そこで趣味を活かして、気軽に読める漫画という方法で幅広い人に病状を伝えようと決心する。
星咲さんは「らむの光芒」というハッシュタグをつけ、線維筋痛症の闘病記をXで発信。加えて、日常で感じる生きづらさや心の傷は「らむの星屑」というハッシュタグをつけて公開している。
タイムラインで流れてきた時に、なにげなく読んでもらいたい。そんな思いから、漫画を描く際は説明口調にしないよう、意識している。
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「体の痛みから更新速度は亀以上にゆっくりですが、線維筋痛症の認知度の向上や難病指定に少しでも貢献したい。患者様や周囲の方々にとって、温かな光になれたら嬉しいです」
線維筋痛症に苦しむ“リアルな日常”と“未来への不安”
治療法がない今、星咲さんは投薬やマッサージ療法を続けながら、病気と付き合っている。激痛で眠れないため、就寝前には睡眠薬を服用。医師からは軽い運動を勧められているが、痛みが強すぎて動けないことが大半で、動けたとしても直後に激痛が襲ってくるという。
「湯船に浸かったり就寝前にストレッチをしたりすることも意識していますが、痛みから両方とも満足にできない日も多くあり、もどかしいです」
線維筋痛症は難病指定されていないため、当事者は社会的な支援を受けることが難しい。星咲さんは現在、就活中だが、働き方に悩んでいる。身体障害者手帳が取得できないため、障害者雇用枠での就労が叶わず、歯がゆさを感じるのだ。
「アルバイトもできるものが少ない状況です。線維筋痛症は激痛に耐えかねて、自ら命を落とす選択をされてしまう方がいるほどの病気であることが知られてほしい」
線維筋痛症に限らず、見えない痛みは“ないもの”として扱われることも多い。星咲さんの生き方は、身近な人が抱える苦しみを想像するきっかけも授けてくれる。
(まいどなニュース特約・古川 諭香)