初心者向けワイン「JOY」をメルシャンが発売 Z世代に訴求し、“堅苦しさ”を払拭できるか

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2025年03月02日 14:50  ITmedia ビジネスオンライン

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メルシャンが「Z世代向け」のワインを発売、狙いは?(提供:キリンホールディングス)

 ワインメーカー大手のメルシャンは3月4日、若年層をターゲットとした英国発ワイン「JOY(ジョイ)」シリーズを全国で発売する。参考価格は1080円(税抜)。フルーティーな甘さとカラフルなデザインが特徴で、Z世代を中心とした“ワイン初心者”に訴求する。


【画像】Z世代向けワイン「JOY」や、インパクト大な「デビルズ・カルナバル」のデザイン、メルシャンの須永和子氏・溝渕萌香氏(計5枚)


●“ダウントレンド”のワイン、メルシャンの戦略は?


 メルシャンの調査によれば、2024年12月の国内ワイン市場は、全体で前年比95%(数量ベース)と前年を割り込んだ。ダウントレンドの主な要因には、飲酒人口の減少や、他カテゴリーへの流出が挙げられるという。


 これを受け、同社は日本のワイン市場の課題は「コモディティ化」「同質化」だと分析。こうした状況を打破するために、ワイン市場の活性化を図るべく、中高価格帯商品の訴求を強化する「プレミアマイズ」と、「新規ユーザーの獲得」という2つの施策を打ち出している。


 プレミアマイズの一環として訴求しているのが、チリワインブランドの「カッシェロ・デル・ディアブロ」。チリワインは安価な商品が多いが、同シリーズは中高価格帯であるにもかかわらず、販売数量を伸ばしており、2020年から2024年にかけて159%増となった。


 2024年3月には、新シリーズ「デビルズ・カルナバル」を発売。こちらはワインを飲みなれていない層にもアプローチすべく、インパクトの強いビジュアルで訴求した商品だ。新規ユーザーの獲得にもつながったことから、輸入事業本部マーケティング戦略部 マーケティングユニット長の須永和子氏は「非常に手応えを感じている」と話す。


●あえて“産地を訴求せず”、なぜ?


 JOYはZ世代を中心とする「ワイン初心者」に向けて展開しているワイン。内容量は750ミリリットルで、赤ワイン「ジューシー レッド」、白ワイン「ブライト ホワイト」、ロゼワイン「フルーティ ロゼ」の3種類を用意する。


 もともとは英国のマーケターが、Z世代向けにチリのワイナリー「コンチャ・イ・トロ」と共同で設計し、ヒットした商品だ。日本での展開は英国に続き2カ国目で、韓国での発売も予定している。


 マーケティング担当を務めるメルシャンの溝渕萌香氏によれば、英国は世界5位のワイン消費国だが、日本と同様に「若者のワイン離れが課題」だという。


 JOYはこうした若い世代にリーチすべく、「フルーティーで程よい甘さ」に仕上げたワイン。「渋い」「苦い」「重たい」といった、ワインのネガティブなイメージの払拭を図っている。若い世代ほどアルコール度数の高いお酒を敬遠する傾向があることから、度数は「ワインとしては低め」で、「ジューシー レッド」では10.5%に抑えている。


 パッケージも「分かりやすさ」を優先したポップなデザインに。伝統的なワインとは異なり「産地」や「品種」をあえて訴求していない点が特徴だ。


 溝渕氏自身も、2020年に新卒入社したZ世代。欧州事務所に駐在する中で、英国でヒットしていたJOYに注目し、日本のマーケットに落とし込むべく市場分析などに取り組んだ。「ワインの歴史や文化、作り手もリスペクトされるべきだと感じる一方で、格付けや値段に関係なく『もっと自由に飲めたら』という思いがあった。同じような人にJOYを届けられれば」(溝渕氏)


●日本でどう訴求するか


 日本での本格展開を前に、メルシャンは2024年10月に国内の一部ディスカウントストアでJOYのテスト販売を実施(「ジューシー レッド」「ブライト ホワイト」のみ)。従来の輸入ワインと比較して、20〜30代の反応に手応えを得られたという。


 全国発売するに当たって、店頭の特設コーナーやSNSでの情報発信を強化する。また、合わせて炭酸水やフルーツ、ミントなどを用いた「カクテルレシピ」を考案。ワインに対し「難しそう」というイメージを持つ層に向けて、カジュアルな飲み方を提案する考えだ。


 販売数量の目標は 3万ケースで、すでに業務用の提案も開始している。Z世代社員の目線を取り入れたメルシャンの施策は、ワイン市場を盛り上げられるか。



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