士郎正宗「攻殻機動隊」を原作に、同じく押井が監督を務めた劇場アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の続編として2004年に公開された「イノセンス」。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」から3年後の2032年を舞台にしており、大塚演じるバトーを中心とした物語を展開していく。20周年に合わせ、「イノセンス」と「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の4Kリマスター版が、TOHOシネマズ日比谷ほかで2月28日より2週間限定で上映されている。
大塚も観客に聞きたいことがあるようで「ここの箱に来る前に、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を観られた方」と問いかけると数多くの観客が手を挙げる。大塚は「『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』からの『イノセンス』という流れがスパイスになる。いきなり『イノセンス』を観た人はなんだかわからない」と押井監督と同じくジョークを飛ばす。大塚は「わからない」という言葉つながりで、「イノセンス」でバトー役を演じたことについて「どう演じればいいかわからなくて押井さんに質問したりして」と当時を思い返す。「そうしたら『ああ、簡単ですよ。これはバトーの恋の物語ですよ』って言われたんです。そうだったのか!と思って、あっという間に映画の作りが見えてきて。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を観てバトーのさみしい気持ちを引きずったまま、『イノセンス』をご覧になるととても楽しめると思いますよ。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のほうもぜひ思い出していただいて、在りし日の田中敦子のことも思い出していただいて」と語る。「イノセンス」を「バトーの恋の物語」と言ったことを覚えているかとMCに問われた押井監督は、「簡単に言うと、(『イノセンス』は)素子が去った後の物語ですね。生ける屍になっているバトーが素子と再会する、魂の恋愛みたいな話。遠く離れているんだけど、お互いに思いがあるっていうか」と説明した。
当時の制作エピソードを振り返るパートでは押井監督が「イノセンス」について、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」が公開されて4、5年後に立ち上がった企画だったと説明。「当時僕はアニメはつらいからやめちゃおうかなと思っていたんですが、Production I.Gの石川(光久)っていうプロデューサーに呼び出されて『今戻ってこないと、誰もあんたと一緒にやってくれる人いなくなるよ。いい加減諦めてスタジオに戻れ』って言われたの。そのときはそうだなって思って。やっぱり自分はアニメ作るのがあってるなと思ったし、作るの嫌いじゃないし。何やるのって言ったときの候補の1つが『イノセンス』だったんです。やるなら『攻殻』の続編をやってみたいなと思ったし、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』という作品はどこか終わってないんです。あの後の素子をもうちょっと見たいっていうのと、残ったバトーの思いを引きずってみたいなと」と振り返った。
会場の話題は2024年に亡くなった草薙素子役の田中敦子についてのエピソードにもおよぶ。大塚は「『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のときって、僕もまだ(声優を)始めていくらも経っていないときで。音響監督の若林(和弘)監督と仕事をさせてもらっていて、オーディションの話をいただいたんです。『素子役がいないんだよね。誰かいない?』って聞かれたときに田中敦子氏を推してみたんですけど、見事オーディション通りまして。そんなことを思い出すと『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と一緒に歳を取ってきたんだなっていう感じはあります。もちろん山ちゃん(山寺宏一)もそうですけどね」と懐かしむ。押井監督は普段、個人的に田中と話したことはそこまでないとしながら、「いつも(アフレコブースの)ガラスの向こう側にいる。あそこに入ると素子になるというか、廊下ですれ違ったり、立ち話をしてもそれは田中敦子。僕にとっては(田中敦子は)素子そのものなんですよ。さっき『イノセンス』の続編、3本目を条件付きって言ったのはそこもあるんです。素子どうするんだろうっていう。3本目も2本目と同じように魂だけの存在っていうわけにはいかないし。今度は声なしでやるのって。でも、そういうのもいいかもしれないね」とトークの中で続編についての構想を膨らませた。