
チャンピオンズリーグ優勝予想 前編
ベスト16が出そろったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)は、3月4日(現地時間)から決勝トーナメントが始まる。強豪ぞろいでどこが勝ち進むか楽しみななかで、識者に優勝予想をしてもらった。
【CLでの勝負強さがもはや伝統のレアル・マドリード】
西部謙司(サッカーライター)
<優勝予想>
本命◎:レアル・マドリード
対抗〇:リバプール
穴▲:インテル
ラウンド16でレアル・マドリードはアトレティコ・マドリードと対戦。リーグフェーズ首位のリバプールはパリ・サンジェルマンと当たる。レアル・マドリード、リバプールが勝ち抜くとすると、両者の激突は準決勝。これが事実上の決勝になるのではないか。
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レアル・マドリードはキリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ、ジュード・ベリンガムの豪華攻撃陣が、ここにきてようやく噛み合ってきた。前半戦とは違うチームになっている。アトレティコは難敵で、次のアーセナルまたはPSVも気の抜けない相手だが、CLでの勝負強さはもはや伝統だ。
強いやつを集めれば強いという、身も蓋もない強化方針を貫いてきたレアル・マドリードは、CLにめっぽう強い。ポジションの重複もお構いなしなので、今回もエムバペ、ヴィニシウス、ロドリゴの得意エリアが全員左サイドという難問を抱えていたが、時間はかかったとはいえ、今や機能性を見出している。
そうなると戦術が緻密でない分、柔軟性が武器になる。ポゼッションも堅守速攻もできて、それぞれに特化したチームほどではないが、どう戦っても世界2位くらいの力があり、相性の悪さというものがない。戦術的なイノベーターだったことは一度もないが、この大会でダントツの戦績を収めてきた。
リバプールはここまでで最も完成度の高いチーム。持ち前のプレー強度を活かしつつ、アルネ・スロット監督が戦術を整理して軌道に乗せた。モハメド・サラーが抜群の活躍でチームを牽引している。優勝候補筆頭と言っていいくらいだが、レアル・マドリードの個の図抜けた能力としたたかさにやられそうな気がするので対抗とした。
反対側の山はバルセロナ、バイエルン、レバークーゼン、インテルが有力。攻撃力では図抜けているバルセロナ、リーグフェーズ8試合でわずかに失点1のインテルという対照的なチームの対戦が実現すると面白い。
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バルセロナはリーグフェーズ8試合28得点。とにかく点がとれる。ただ、攻撃力と引き換えにハイラインというリスクを冒しているのが不安材料だ。長期的には正解かもしれないが、ノックアウトステージでどうなるか。
超堅守で不気味なのがインテル。バルセロナ、バイエルン、レバークーゼンより強い印象はないのだが、異常なほど失点していない。ラウタロ・マルティネスが爆発すると、ひょっとしたらファイナルまでたどり着けるかもしれず、あまりの不気味さゆえに穴に推すことにした。
【エムバペがフィットし始めたレアル・マドリード】
井川洋一(スポーツライター)
<優勝予想>
本命◎:レアル・マドリード
対抗○:リバプール
穴▲:バルセロナ
奇を衒(てら)うことなく予想すれば、レアル・マドリード、リバプール、バルセロナの3チームを外すことはできない。
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本命はレアル・マドリードだ。CLにめっぽう強いスペインのクラブは昨季に通算優勝回数を15とし、後続(2位は7回のミラン)に倍以上の差をつけた。ここ10年でも、実に半数となる5度の優勝を遂げている。
キリアン・エムバペを迎えた今季は当初、攻撃陣のコンビネーションが崩れ、リーグフェーズでは5節まで黒星が先行。しかし、名将カルロ・アンチェロッティが試行錯誤しながら最適解に近づいていくと、エムバペもフィットし始め、6節以降の5試合――マンチェスター・シティとのプレーオフ2試合を含む――で6得点と調子を上げている。
さらなる好材料としては、ダビド・アラバが長期離脱から復帰したことで最終ラインからの組み立ての質の向上が見込まれ、たびたびセンターバックを務めていたオーレリアン・チュアメニも本職の中盤に戻れそうだ。
また、入団1年目の18歳のエンドリッキは、CLデビュー戦となった1節シュツットガルト戦でいきなりゴールを決めて才能の片鱗を見せ、直近の国王杯のレアル・ソシエダ戦では抜歯で欠場したエムバペの代わりに前線で先発し、試合唯一の得点を決めている。王国ブラジルの最新の傑作がベンチに控える豪華な陣容も、その伝統と等しく、相手の脅威となる。
リバプールを対抗としたが、今季の状態だけで言えば、本命でもおかしくない。アルネ・スロット新監督は1年目とは思えないほどの機能性を植えつけ、プレミアリーグとCLというクラブレベルの至高の舞台で、首位に立っている(CLはリーグフェーズを首位でフィニッシュ)。筆者は4節レバークーゼン戦をアンフィールドで取材したが、リバプールは凱旋したシャビ・アロンソ監督のアウェーチームにほとんど何もさせず、4−0と圧勝した。
個人的に一番印象に残ったのは、攻撃時のトレント・アレクサンダー=アーノルドの的確な位置どりと、受けてから瞬時に放つ最高のパスだ。モハメド・サラーの今季の爆発も、同サイドの彼からの見事な配球があってこそだろう。組み合わせの櫓(やぐら)が前もって決まった今季、順当に勝ち上がれば、準決勝でレアル・マドリードと対戦することになる。アレクサンダー=アーノルドの移籍先として噂に上がる相手との、事実上の決勝となるか。
反対の山からは、リーグフェーズ最多の28得点を記録し、2位で終えたバルセロナが勝ち進んでくると見る。ロベルト・レバンドフスキ、ラミン・ヤマル、ラフィーニャから成る破壊的な3トップは今大会随一で、どんな相手からも複数得点が期待できる。国内では11月からふた月ほど不調に陥ったが、今は復調傾向にあり、CL決勝トーナメントでは比較的相手にも恵まれた。
後編「レアル・マドリード以外を本命にした識者の見解」>>