
これまでキャリアの主力端末として販売されてきたiPhone SEの後継機種となるiPhone 16e。この新モデルのスペック、そして買い方など、気になるポイントを徹底解説です!
【表】主要通信ブランドのiPhone 16e(128GB)”実質最安価格”をチェック!
■実は廉価版じゃない!気になるコスパは?
日本時間の2月19日、Appleは新スマホ「iPhone 16e」を発表。「iPhone SE(第3世代)」の後継機種となる16eのスペック、そのコスパとは? ITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんに解説してもらいます。
――これまで人気だったiPhone SEはブラウザやLINEの利用では十分なスペックで、2022年の発売からiPhoneシリーズとしては最安値をキープ。キャリアでは"実質1円"販売の定番だった端末です。その後継モデルとなるiPhone 16eの価格面の評価は?
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法林 正直、高価です(笑)。Apple直販では最安となる128GBモデルが9万9800円。これまでのiPhone SEは最安モデルが6万2800円〜でしたが、16eは10万円近くなり、"廉価版iPhone"とは呼べない価格帯になってしまいました。
ただし、これはAppleの直販や大手家電量販店のSIMフリー版の価格で、キャリアやサブブランドの販売方式だと状況は変わってきます。
――キャリア販売価格の現状は?
法林 まず、ソフトバンクの最安価格は実質24円。そして、auも実質47円です。現在、この2ブランドが際立って低価格の販売を行なっています。
――これは"廉価版iPhone"にふさわしい販売価格! でも、この価格には"条件"があるのですよね?
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法林 両社共にMNP、指定された料金プランへの加入、端末購入プログラムを利用して、2年後にはキャリアへ端末を返却することが条件となっています。
NTTドコモも同様の条件で実質1210円。そして、各キャリア内で機種変の場合はauが3万3047円、NTTドコモが3万8280円、ソフトバンクが5万4984円。MNP以外の条件は同じでこの価格です。
――どのキャリアもユーザー的には心強い価格になっていますね。
法林 実はキャリアだけでなく、サブブランドも16eを販売しています。例えば、UQモバイルならMNPと指定された料金プランへの加入、端末購入プログラムを利用して、2年後にキャリアへ端末を返却する条件があって1万1047円。端末価格はキャリアよりも高いですが、サブブランドは月の通信料金が割安なのが特徴です。
また、auやソフトバンクなど端末価格の安いキャリアでMNP契約して16eを購入し、その後にUQモバイルやワイモバイルなど系列のサブブランドに番号をそのままMNPすることで、よりおトクに利用できます。
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――ところで、楽天モバイルはどうなんでしょうか?
法林 楽天モバイルも端末購入プログラムを提供していますが、他社ほどおトク要素は強くありません。なので、16eを楽天モバイルで利用する場合は、Apple直販や大手家電量販店で購入するのが正解です。
――現状、3キャリアとサブブランドは16eが主力端末という位置づけですよね。
法林 それもあってか、各キャリアが一斉に価格を発表した2月21日には、ソフトバンクが他社の価格を見た後に即価格改定を行ない、業界最安値にするということがありました(笑)。
NTTドコモも2月25日に同社としては異例となる価格改定を行なっており、こういった面からもキャリアが販売に力を入れている端末と言えるでしょう。
■AIは使えるが残念ポイントもあり!
――ではiPhone 16eのスペック面もチェックしていきましょう。注目の機能は?
法林 今年4月から日本語版もスタートするApple独自のAI「Apple Intelligence」への対応です。iPhoneシリーズでは、「iPhone 15 Pro」シリーズ以降のモデルが対応するサービスで、現状では16eはApple Intelligenceが利用できる最安の端末となります。
また、16eは最新のA18チップセットを搭載しており、AI機能や3Dゲームなども快適に楽しめます。
――超ハイスペック機種ではなく16eを選ぶような、一般的なユーザーが重要視するカメラ性能はどうでしょうか?
法林 カメラはシングルレンズですが、光学2倍ズームでSE以上の性能で夜間撮影が行なえるナイトモードも搭載しています。
そして、Apple Intelligenceに対応することで、画像や動画の編集も簡単にできるようになります。ただ、iPhone 15、16シリーズと比較するとスペック面では見劣りする部分が多いかなと思っています。
――その見劣り要素が超気になります!
法林 16eは超広角レンズが搭載されてないので、室内での集合写真などが撮りにくい。集合写真はかなり引いて撮る必要があります。そして、ペットや食べ物の撮影で多用するマクロ撮影にも対応していません。
これまで、こういったカメラ機能を活用してきたユーザーは、iPhone 15、16シリーズのほうが使い勝手は良いでしょう。
――その一方で、16e独自の装備はありますか?
法林 モバイル通信を制御するモデムにApple自社製モデム「C1」が採用されました。これは消費電力が低くバッテリー持ちが向上するメリットがあります。
しかし、日本のユーザーにとっては大きなデメリットもある。C1はNTTドコモが東名阪の都市部で利用する周波数帯であるBand21に非対応で、通信の混雑時は速度低下が懸念されているのです。
――それは本気のデメリット! なぜ、16eはC1を採用したのでしょうか?
法林 コストダウンです。これまでの製品は米クアルコム社製のモデムを採用していましたが、これを自社製にすることでクアルコムへのライセンス料の支払いがなくなります。
16eのコストダウンはこれだけでなく、例えば人気機能の「MagSafe」は不採用。ディスプレーのガラス部分の強度や最大輝度もiPhone 15、16シリーズよりスペックダウンした仕様となっています。カラー展開も白と黒の2色のみです。
――確かに、見た目は"地味な業務用端末"な感じかも。
法林 本体カラーやカメラ性能を優先するなら、iPhone 15、16シリーズもアリです。例えば、auのiPhone 15ならMNPと各種条件込みで最安7900円。iPhone 16なら1万6700円です。
3キャリアともに16eと上位モデルの最安販売での価格差は2万円以内に収まっており、ユーザー自身がカメラ性能やAI機能、MagSafeの有無で上位機種と比較してから購入すべきでしょうね。
――取りあえず、AI用途で最安ならiPhone 16e一択です!
取材・文/直井裕太