DJIから新型のスマートフォン用3軸ジンバル「Osmo Mobile 7」シリーズが発売されました。2022年9月に発売されたOsmo Mobile 6から約2年半。ラインアップはスタンダードモデルの「Osmo Mobile 7」と、上位機種の「Osmo Mobile 7P」の2機種となっていますが、特にOsmo Mobile 7Pは大きな進化を遂げています。
個人的に興味があったので、発表後すぐに注文してテストしてみました。Osmo Mobile 7P、一体どのような性能を持つジンバルなのでしょうか。
●クランプ部分にも通信接点が備わった
外観からチェックしていきましょう。スマホ用ジンバルとしては、やや大きめの作りです。グリップやジンバルアームも太くしっかりしており、安定感があります。差異はありますが、共通のハンドルデザインや、Osmo Mobile 3から続くOsmo Mobileシリーズ共通の折りたたみ構造を踏襲しているといえるでしょう。
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パッとみただけでは旧モデルとの違いが分かりにくいのですが、Osmo Mobile 7Pは大きなアップデートポイントがあります。それはスマホクランプの変化と、DJI OM 多機能モジュール、内蔵三脚の存在です。
まずスマホクランプには通信接点があり、DJI OM 多機能モジュールとOsmo Mobile 7Pの信号のやりとりをする経路となっています。このためOsmo Mobile 7Pの機能を引き出すには、純正クランプを使う必要があることが分かります。
個人的に残念だと感じているところは、MagSafe対応のDJI OM磁気クイックリリースマウントに通信接点がないことです。既に発売されているDJI OM磁気クイックリリースマウントに対応しているようなのですが、MagSafe使用時は進化ポイントが使えないという状況です。今後、Osmo Mobile 7P専用の磁気クイックリリースマウントが出ることに期待したいですね。
そんなDJI OM 多機能モジュールはどんなアプリを使っていても、そしてiPhone/Android、どちらのデバイスであっても、人物トラッキングを可能にするユニットです。プロが使うミラーレス用ジンバルにも同様のトラッキングユニットが装備できるモデルがありますが、Osmo Mobile 7Pはそのシステムをスマホの世界に持ってきました。期待値アガリまくりです。
なおトラッキングできるのは人物のみ。ここ注意が必要ですよ。走り回るペットなどを自動的に追いかけてもらうには、純正アプリのDJI Mimoによるトラッキングが必要です。
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DJI OM 多機能モジュールにはトラッキングセンサーの他、LEDライト、DJI Mic Miniのレシーバー機能も内蔵しています。多機能、と名がついているだけのことはありますね。LEDライトは光量および色温度が調整可能で、小型ながらになかなかにパワフル。今回は時間がなく試せなかったのですが、小物の3Dスキャン/ガウシアンスプラッティング(3DGS)をするときに使えるかもしれません。
ジンバル本体の底面部を見てみましょう。従来のように三脚穴がありますが、さらに内蔵三脚の足パーツも見えます。やっときました。Osmo Mobileシリーズに内蔵三脚が……! おめでとうございます。本気で祝福しますし、コレがなかったら買ってなかったレベルです。
延長ロッドも内蔵しています。単体で自立させた時の画角調整時に活用できる他、角度を変えて自撮り棒としても使えます。Osmo Mobile 7Pは強固なフレームを持っているので、伸ばした状態でも安心感があるのがいいですね。
●プロ用モデル譲りの操作系を持つスマホジンバル
コントローラーが使いやすいのもOsmo Mobile 7pの特徴です。スマートに、スタイリッシュに洗練していくのではなく、スマホ用ジンバルにもプロ用ミラーレスジンバルに近しい操作性を持たせようとしている思想が明らかです。
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前側にはモード切り替えボタン、録画ボタン、イン/アウトカメラ切り替えボタン、ジンバルを操作するジョイスティックが備わり、左側面にはホイールスイッチがあります。このホイールスイッチが本当に賢い。純正アプリを使う場合は、デジタルズームやマニュアルフォーカス、LEDライトのコントロールが可能です。
もちろん、トリガーボタンもあります。DJI OM 多機能モジュール以外の操作は、基本的に従来通りです。今までのOsmo Mobileを使ってきた人は、新しいモデルに乗り換えてもすぐに使えるようになりますよ。
前述したように、DJI OM 多機能モジュールは外部マイクDJI Mic MINIのレシーバーとしても機能します。なおDJI Mic 2は非対応でした。ペアリング状態にしても、うんともすんとも反応しません。
DJI Mic Miniは2台までのトランスミッターと接続が可能です。ペアリングすると、DJI OM 多機能モジュールの2つのLEDインジケーターが緑色に点灯します。
●Android用DJI Mimoは公式サイトからダウンロードを
Osmo Mobile 7Pに空間ビデオ(立体視映像)を撮影できる面白カメラのBeam Pro(Android)を乗せてみました。空間ビデオは再生デバイスがゴーグル型のヘッドセットとなるため、映像にブレがあると不快感が強くなってしまうのですが、Osmo Mobile 7Pがあればブレを低減できます。アリです。
なおAndroid用の専用アプリはGoogleストアにはなく、DJIのサイトからAPKファイルをダウンロードしなければなりません。面倒だな、と感じるとともに、Google ストアが使えない面白Androidでも使えるメリットでもありますね。
●ライバル機との差が見えてきた。いい意味でも悪い意味でも
DJI OM 多機能モジュールを使ったトラッキングをしてみました。DJI OM 多機能モジュールに向かって手のひらを見せると、人物認識をして、自動的に顔を追いかけてくれるようになります。
Androidでも試してみました。バッチリです。問題なく動作します。
というか、スマホの電源を落とした状態でもトラッキングしています。これがOsmo Mobile 7Pのストロングポイントです。
重量バランスさえ取れれば、アクションカムでもトラッキング可能なジンバルとして使えるでしょうし、iPhone 3GSなどの古いiPhoneを持ち出して、クラシックな映りの動画制作に生かしてもいいのではないでしょうか。近年、オールドコンデジが流行していますが、動画視点で言ったら、そろそろオールドスマホのカメラにも価値が出てくると思うのです。
ジンバルそのもののブレ低減効果は、ある意味従来通りです。これは他社製品と比較しても、大きく変わるモノではありません。
しかしグリップしやすいハンドルは効きますね。デジタルズーム使用時でも優れたブレ低減効果を発揮します。折りたたみ時でもやや大ぶりなサイズ感ですが、扱いやすさという意味でOsmo Mobile 7Pを選ぶ価値はあります。
とはいえ、直接のライバルとなるInsta360 Flow 2 Proに劣っている部分もあります。それがパンニングの回転角です。Insta360 Flow 2 Proは回転角に制限がなく、いくらでもグルグルと回せますが、Osmo Mobile 7Pは一定の角度以上は回せません。
●さまざまなデバイスで動画撮影をしたい方なら満足できるジンバル
Androidでスムーズな撮影をしたい人にはおすすめです。DJI Mic Miniとの連携も魅力的で、お手軽な手続きで良質な音声を得たい方にも強く推奨します。
しかし、iPhoneだけで撮影をするなら、DockKitに対応したInsta360 Flow 2 Proの方が生きてきます。
→・Apple DockKit対応ジンバル「Insta360 Flow 2 Pro」は、多くの改善ポイントを重ねて使いやすくなった
そして予算が潤沢にあるなら、DJI Osmo Pocket 3(直販価格7万9200円〜)を狙うというのもアリです。
Osmo Mobile 7Pは、個人的には購入して良かったと感じています。同時に、DJI Osmo Pocket 3の完成度の高さを実感できるモノでもありました。
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