ワサビ栽培で目指す復興=真っ暗な村「何かしなくては」―東日本大震災14年・福島

0

2025年03月04日 14:01  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

ワサビ栽培のハウスに立つ後藤英司さん(左)と渡辺典雄さん=1月25日、福島県飯舘村
 東京電力福島第1原発事故により一時全村避難となった福島県飯舘村で、全くの素人からワサビ栽培に挑戦している人たちがいる。村を通るたびに夜は真っ暗になる光景を目にし「何かしなくては」と突き動かされたという。事業を通じ、将来的には交流人口の増加などで復興に貢献したいと意気込んでいる。

 ワサビ栽培に取り組んでいるのは、福島市の後藤英司さん(66)と、渡辺典雄さん(72)。後藤さんは海外からの注目度が高まっているほか、室内で栽培できるため風評被害を受けにくいと考え、挑戦を決意。元県職員で村の復興アドバイザーだった渡辺さんと知り合い意気投合した。

 2021年から実際に栽培を始めたが、2人とも知識や経験はなく、村へ通い続けて試行錯誤し、ようやく出荷できるまでこぎ着けた。間もなく、しょうゆ漬けにした葉ワサビを使ったおにぎりが販売される予定という。今後はワサビソフトクリームの商品化も視野に入れている。

 「古里だから帰りたいという人はいるだろうが、それだけでは難しい」と話す後藤さん。人が戻る動機となる魅力づくりが重要だと考えており、ワサビの栽培事業を通じた交流人口や関係人口の創出による復興への道筋を思い描く。

 後藤さんと渡辺さんは飯舘村出身ではないため、地元出身者との関係構築を重視する。「善かれと思ってやっても裏目に出てしまう場合がある」。最近では、村の人たちからワサビの出来栄えを問われることもあるといい、「まずは信頼を築くことから」と笑顔を見せた。 
    ニュース設定