メルカリがMVNO事業に参入したワケ 売買したギガは「繰り越せない」が、ニーズを満たせると判断

0

2025年03月04日 16:51  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

メルカリがMVNO事業への新規参入を果たした

 メルカリが3月4日、MVNO事業に新規参入し、「メルカリモバイル」の提供を開始した。メルカリモバイルは、フリマアプリのメルカリで誰でも簡単に申し込みを完結でき、データ容量をメルカリのように出品、購入できる機能が大きな特徴で、「これまで以上にスマートフォンを柔軟でお得に利用できる」という触れ込みだ。


【その他の画像】


 同日開催の記者発表会場には、メルカリ 執行役員CEO Fintech 兼 新規事業責任者 永沢岳志氏が登壇し、新サービスの概要やMVNO事業への参入意図を語った。


 サービス開始当初の料金プランは2種類のみで、2GBで月額990円、20GBで月額2390円となっている。ユーザーは、音声通話、SMS、データ通信の各サービスを利用できる。サービスは、まずiOSアプリから段階的に利用できるようになり、Androidアプリでも順次利用可能になる。


 メルカリモバイルでは物理SIMの選択はできず、「当初はeSIMのみでの提供」となる。契約時の本人確認はマイナンバーカードをスマートフォンの背面にかざして行う。店頭などでのいわゆるオフライン契約について、永沢氏は「今のところ予定はしていない」という。


 サービスで利用する回線は当初はドコモのみで、今後au回線も追加予定という。なお、メルカリがドコモの設備と直接接続するのではなく、MVNE(MVNOのための一次卸受け会社)を介した接続となる。永沢氏は、「MVNE事業者名は非開示」とした。MNOになるかどうかについては、「初期投資なくキャリア(MNO)の回線を借りられる」ことを理由に、現状はメルカリ独自に回線網や設備を整備する「MNOの立場にはならない」考えを示した。


●2013年にサービス開始のメルカリ、個人間取引にとどまらない強みは


 メルカリは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」ことを掲げており、フリマアプリのサービスを2013年に開始した。「自宅にある使わなくなったものを、誰でも簡単に売買できる体験」がメルカリの最大の武器といえる。永沢氏によると、「月間利用者数は約2300万人、年間流通総額は1兆円を超えるマーケットプレース」となっている。


 2021年には、「メルカリShops」を開始し、個人間の取引だけではなく、事業者がメルカリを通じて販売できるようにした。2025年現在は、「年間約2.7倍のスピードで成長している」という。「直近では、越境取引という形で日本だけではなく、約120カ国の人がメルカリに出品されたものを購入できる」ようにしている。


 メルカリが、こうした「物の循環」と並行して推進してきたのが、「お金や信用の循環」だ。2019年には、スマートフォン決済サービス「メルペイ」の提供を開始、メルカリの売上金を「メルカリの中だけでなく、外でも使える」ようにしてきた。利用者数は累計で1800万人を超えている。メルカリとメルペイの利用実績にもとづく独自の与信を活用したクレジットカード「メルカード」は、発行開始から2年間で400万枚の発行に至っている。


 2023年には、メルカリアプリ内でビットコイン取引ができるサービスの提供を開始し、メルカリの売上金をビットコインやイーサリアムといった暗号資産に変換して保持できるようにした。暗号資産口座数は300万口座を超えており、「日本最大の事業者となっている」という。


 2024年からは、スキマバイトサービス「メルカリ ハロ」を提供しており、 「一人一人が持つ時間やスキルを価値に変え、働くということをより、気軽に身近にしている」という。2025年2月には、サービス開始から1年弱で登録者数が1000万人を突破したと発表し、「多くの人が空き時間を価値に変えている」としている。


 「あらゆる価値を循環させる」というメルカリのミッションが各サービスに反映されている。これらの事業について、永沢氏は「単体で成長していることだけでなく、相互に各サービスを利用されていることも重要だ」と話す。


 永沢氏は各サービスの利用シーンの一例を次のように述べる。「メルカリで欲しいものがあるときに、手元にお金がなくてもメルペイでまずは支払って後払いにするで、その後払いを例えばメルカリハロで働いたお金で返すといった形の複数のサービスの利用だったり、メルカリで売って得た売上金をすぐに扱わないでビットコインにして保持しておいて、ビットコインでメルカリでお買い物をする」 このようなことがメルカリアプリ1つで完結するのもメルカリの強みといえる。


●なぜメルカリがMVNO事業に新規参入したのか MNO事業への参入は見込んでいない


 メルカリのサービスに欠かせないのが、スマートフォンの端末と通信サービスだ。このセットがなければ、メルカリは成立しない。メルカリが新たに目を付けたのは通信サービス。個人間でものを売買するメルカリの仕組みを、通信サービスにうまく落とし込んだといえる。なぜ、いま端末ではなく通信サービスなのか、それもMVNOサービスを選択したのだろうか。永沢氏は調査データをもとに解説する。


 2010年代にスマートフォンが広く普及して以降、大手キャリアのサブブランド、MVNOサービスが増加し、通信契約の選択肢が広がった。国内の携帯電話市場を見ると、2020年に楽天モバイルが正式にMNO事業を開始して以降も、依然として大手キャリアのシェアは大きいが、2021年3月末時点から2023年12月末時点にかけて、後発の楽天モバイルやMVNOのシェアが伸びており、こうした現況はメルカリにもチャンスと映った。


 一方、外部機関による18〜69歳の男女522人を対象としたインターネット調査によると、「スマートフォンの通信キャリアを変更したことがない」もしくは「変更経験が1回まで」の消費者は64.4%を占めることから、依然として乗り換えのハードルが高いという。


 乗り換えた経験がない人にとってハードルとなっているのが、「乗り換えの手続きが面倒」という点だ。メルカリは「さまざまなサービスを使いやすくする、分かりやすくする」というメルカリと同じコンセプトが通信サービスでも受け入れられると考え、契約から用までをメルカリアプリで完結できるようにした。


 一方、永沢氏は「ただ単にサービスを使いやすくしただけでは、お客さまに選んでいただけないのではないか?」と懸念を示す。


 毎月のデータ使用量を把握している、18〜69歳の男女1242人を対象としたインターネット調査によると、毎月のデータ通信量が余っても「特に何もしていない」「繰り越しているが、結局使わず余る」の合計が75.0%、データ量が足りない人のうち45.2%は「毎月追加でデータ容量を購入する」など、契約内容と実際の利用実態にはギャップがあることが判明。加えて、料金プランの柔軟さへのニーズについて聞いたところ、「使い方に合わせてプランを自由にカスタマイズしたい」意向がある人は78.6%に上ったという。


 こうした問題を解決すべく、メルカリは「ギガ(データ容量)の売り買いができる、日本初の機能を実装した」と永沢氏は続ける。個人間取引の仕組みはそのままに、売り買いする「もの」が「データ容量」に置き換わったイメージだが、「誰のデータ容量を買っても基本的には中身は同じ」であることから、評価やコメントの機能はない。


●メルカリモバイルの月間データ容量が2GB/20GBである理由 ターゲットユーザーはどのような人か


 支払いの手段は、サービス開始当初は「メルペイとメルカード(後払い)のみ」となっているが、「お客さまのニーズに合わせて他の支払い手段を随時追加していく予定」としている。今後は、「例えば、メルカリやメルカードを使っていたら、モバイルがお得になる」というような特典も随時追加していくという。


 取引は1GB単位で行え、設定できる1回の取引につき200〜500円。取引が行われると、メルカリが販売手数料10%を回収する。ユーザー目線で1つ注意したいのは、データ容量売買のタイミングだ。例えば、サービス開始月である3月末の段階で、データ容量がたくさん余っている人が出品しても、「余ったデータ容量を翌月に繰り越せない」メルカリモバイルでは無駄が出てしまう。この点について、永沢氏は「例えば、毎月3GB〜4GBを絶対使う人で、月初に安いデータ容量が出品されていた段階で買うことはできる。さまざまなタイミングでいつでも(売り買い)できるという風にしておくということで、いろいろな方のニーズに応えられる」という。


 加えて、メルカリモバイルでは小容量を2GB、中容量を20GBと選定しているが、ahamoの30GB化を皮切りに大手キャリアや、日本通信、IIJmio、mineoなど一部のMVNOがデータ容量を増量する動きに出ていることから、このままの容量を維持していくとなると、見劣りする可能性がある。ただ永沢氏は「お客さまの声を分析した結果、2GBと20GBで十分だと判断した」とし、低容量の「2GBで足りない人は、売買の機能を使っていただくことで、補完していただけるのではないか」と補足した。


 ターゲットユーザーについては、メルカリで契約から利用までを完結できることから、「既存のメルカリユーザー」とし、「メルペイやメルカードを使い、暗号資産も所有している、メルカリのヘビーユーザーとのベネフィットは高い」とコアユーザーから獲得していく考えを示したが、「サブブランドからの乗り換えも狙っていきたい」とした。



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定