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NVIDIAの新型GPU「GeForce RTX 5070」を搭載するグラフィックスカードが3月5日に発売される。想定販売価格は10万8800円からとなる。
GeForce RTX 5070は、現状における「GeForce RTX 50シリーズ」のエントリーモデルだ。消費電力は250W、推奨電源容量は650Wと、電源容量の小さなゲーミングPCのグラフィックスカードのリプレースにピッタリな設計だ。もちろん、「性能はそこそこで構わないから、消費電力が小さい(あるいはコンパクトな)グラフィックスカードを組み込んだPCを作りたい」という人にも適している。
その実力はいかほどのものか――NVIDIAから同社純正のグラフィックスカード「GeForce RTX 5070 Founders Edition」(日本未発売)を借りてチェックしてみた。
●GeForce RTX 5070 Founders Editionの概要
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先述の通り、GeForce RTX 5070は現状におけるGeForce RTX 50シリーズのエントリーモデルに位置付けられる。SoC(System On a Chip)は「GB205」で、TSMCの4nmプロセスで製造されており、主なスペックは以下の通りだ。
・GPUアーキテクチャ:Blackwell
・CUDAコア:6144基
・Tensorコア:第5世代
・ピーク処理性能:988 AI TOPS(1秒当たり988兆回の処理が可能)
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レイトレーシング(RT)コア:第4世代
・ピーク処理性能:94 TFLOPS
動作クロック(定格):2.16GHz〜2.51GHz
グラフィックスメモリ:12GB(GDDR7/192bit)
最大出力解像度:4K(3840×2160ピクセル)/480Hzまたは8K(7680×4320ピクセル)/120Hz(※1)
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接続バス:PCI Express 5.0 x16(PCI Express 4.0互換)
消費電力:250W(推奨電源容量:650W)
(※1)DSC(データ圧縮)を利用した場合
SoCベースで見てみると、以前のレビューしたGeForce RTX 5070 Tiは「GeForce RTX 5070の上位モデル」というよりも「GeForce RTX 5080の下位モデル」という位置付けとなる。
演算性能的にはGeForce RTX 5070の性能は5070Tiの7割程度となる。ただ、同時にグラフィックスメモリが4GB削減されているため、グラフィックスメモリを多用するゲームタイトルやAI処理では演算性能以上にパフォーマンス差が付く可能性も否定できない。
ただ、NVIDIAはGeForce RTX 5070は「GeForce RTX 4090並みにパフォーマンスを発揮すると主張している。これは、超解像技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling) 4」において、GeForce RTX 50シリーズ(Blackwellアーキテクチャ)固有機能である「マルチフレーム生成」を利用した場合の話ではあるのだが、「とにかくゲームを“なめらかに”プレイしたい」という人にとって、今までのように超高価なグラフィックスカードを用意しなくても済むのはメリットかもしれない。
先代の「GeForce RTX 4070」と比べた場合、Tensorコアにおける「FP4(4bit浮動小数点)演算」(新規対応)と、CUDAコアにおける「INT32(32bit整数)演算」ではかなり高速なものの、他の演算については5〜10%程度の性能向上にとどまっている。新世代となり2基増加した(46基→48基)RTコアの演算性能は約1.39倍となっている。グラフィックスメモリのアクセス速度は約1.3倍(毎秒504GB→毎秒672GB)だ。どのコアを使うかによって、パフォーマンスに対する印象が相当に変わりそうな予感もする。
今回レビューするGeForce RTX 5070 Founders Editionは、NVIDIA“自ら”が設計した2スロット厚のグラフィックスカードで、寸法は約112(幅)×242(奥行き)mmとなる。今までレビューしてきたGeForce RTX 5080/5090のFounders Editionよりもとてもコンパクトで、「GeForce RTX 4070 Founders Edition」と同じサイズ感だ。
サードパーティー製のGeForce RTX 5080/5090搭載グラフィックスよりもコンパクトとはいえ、GeForce RTX 5080/5090 Founders Editionはそこそこに大きいグラフィックスカードだった。筆者の手元にGeForce RTX 5070 Founders Editionが届いたとき、思わず「うわぁ、小さい」と思わず声を挙げてしまったのは内緒だ。
消費電力が250Wということもあり、付属するGPU補助電源の変換アダプターは「8ピン×2」という構成となっている。この点は、GeForce RTX 5070 Ti搭載グラフィックスカードと同じだ。
●GeForce RTX 5070の実力をチェック!
今回、GeForce RTX 5070 Founders Editionの実力をチェックするのに使うのは、Intel(当時)が2022年末に発売した「Intel NUC 13 Extreme Kit」のCore i9-13900Kモデルだ。主なスペックは以下の通りである。
・CPU:Core i9-13900K
・Pコア:8基16スレッド(3GHz〜5.8GHz)
・Eコア:16基16スレッド(2.2GHz〜4.3GHz)
・メモリ:DDR5-5600 32GB SO-DIMM×2(Kingstone製)
・ストレージ:1TB SSD(1000G Kingston FURY Renegade PCIe 4.0 NVMe M.2 SSD)
・OS:Windows 11 Pro バージョン24H2
GeForce RTX 5070 Tiのレビューとは異なり、本PCにはGeForce RTX 5070 Founders Editionが“すんなり”収まった。むしろ、内部にかなりの余裕ができて放熱的な意味で良い感じである。
今回は過去に同じPCで計測したGeForce RTX 3080 Ti/4080/5070 Ti/5080とのスコア差を見てみよう……と思っていたところ、編集長から「GeForce RTX 4070も試してみたらどうか?」との提案があったため、急きょ「GeForce RTX 4070 Founders Edition」も加えてスコアを比べてみることにした。
グラフィックスドライバのバージョンは以下の通りで、若干ばらつきがある。新バージョンのドライバでもスコアに有意な差がなかったため、当時の数値をそのまま掲載する。
・GeForce RTX 3080 Ti/4080:バージョン566.36(製品版)
・GeForce RTX 5080:バージョン572.12(β版)
・GeForce RTX 4070:バージョン572.60(製品版)
・GeForce RTX 5070:バージョン572.50(β版)
3DMark
ULの3Dグラフィックスベンチマークテストアプリ「3DMark」では、DirectX 11/12 APIを利用する主要なテストを実行した。総合スコアは以下の通りだ。
・GeForce RTX 5070
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):4万1971ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):2万7406ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):1万4412ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):2万1760ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万816ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):1万4015ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):5865ポイント
GeForce RTX 5070 Ti
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):4万3938ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):3万2087ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):1万8049ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):2万6102ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万3222ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):1万8818ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):7649ポイント
GeForce RTX 5080
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):4万6021ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):3万5924ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):2万1294ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):2万9553ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万5378ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):2万1875ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):8983ポイント
GeForce RTX 4080
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):4万2502ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):3万645ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):1万7332ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):2万6251ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万3375ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):1万8048ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):7358ポイント
GeForce RTX 4070
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):3万5860ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):2万591ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):1万150ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):1万8134ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万104ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):1万1311ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):4527ポイント
GeForce RTX 3080 Ti
・Time Fire Strike(フルHD/DirectX 11):3万8287ポイント
・Time Fire Strike Extreme(WQHD/DirectX 11):2万3598ポイント
・Time Fire Strike Ultra(4K/DirectX 11):1万2699ポイント
・Time Spy(WQHD/DirectX 12):1万9689ポイント
・Time Spy Extreme(4K/DirectX 12):1万104ポイント
・Port Royal(4K/DirectX Raytracing):1万3125ポイント
・Speed Way(4K/DirectX 12 Ultimate):5330ポイント
同一世代だと順当に「5080>5070 Ti>5070」という結果だ。名称的に上位の5070 Tiと比べると4〜25%のスコア差が見られる。描画解像度が上がるほどスコア差が大きいため、GPUとしての自力の差が付いている印象もある。
一方新旧世代の比較では、対4070には“完勝”している。スコア差は7〜16%だ。新世代の同等製品なので、基本的には勝たないとマズいところ、よくやったというところだろうか。
2世代前の準ハイエンドGPUである「GeForce RTX 3080 Ti」と比べても、7〜16%高いスコアを記録している。予算に余裕があるなら「中古の3080 Tiよりも5070の方がグラフィックスパフォーマンスは良好」といえる。
FF14ベンチマーク
続けて、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試してみよう。本ゲームの場合、解像度プリセットはHD(1280×720ピクセル)/フルHD/4Kの3種類だが、今回はフルHD/4Kと、カスタム解像度としてWQHDを「最高画質」のフルスクリーン表示でテストした。本プログラムでは、GeForce RTXシリーズの超解像技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」を利用できるが、今回は「60fpsを下回る場合に有効」としている。
結果は以下の通りだ。
・GeForce RTX 5070
・フルHD:2万7579ポイント
・WQHD(カスタム解像度):2万1307ポイント
・4K:1万1217ポイント
GeForce RTX 5070 Ti
・フルHD:2万9268ポイント
・WQHD(カスタム解像度):2万4651ポイント
・4K:1万3635ポイント
GeForce RTX 5080
・フルHD:2万9860ポイント
・WQHD(カスタム解像度):2万6559ポイント
・4K:1万5865ポイント
GeForce RTX 4080
・フルHD:3万277ポイント
・WQHD(カスタム解像度):2万3988ポイント
・4K:1万3849ポイント
GeForce RTX 4070
・フルHD:2万4514ポイント
・WQHD(カスタム解像度):1万7529ポイント
・4K:1万738ポイント
GeForce RTX 3080 Ti
・フルHD:2万6128ポイント
・WQHD(カスタム解像度):2万362ポイント
・4K:1万1395ポイント
基本的には3DMarkの総合スコア群と同じ傾向で、同一世代では解像度が高くなるほどスコア差が広がる。一応、4K解像度でも1万1217ポイントで「とても快適」判定となったので、4K解像度でもゲームプレイは問題なく楽しめそうではある。
Cyberpunk 2077(DLSSテスト)
ここ数年、ハイエンドGPUでも負荷的にキツい「超・超重量級ゲーム」が複数登場している。その典型例が、CD PROJECT REDの「Cyberpunk 2077」だ。このタイトルは最新技術を取り入れることにも積極的で、1月23日に公開された「パッチ2.21」ではDLSS 4に対応し、GeForce RTX 50シリーズでは「マルチフレーム生成」に対応した他、超解像処理に用いるAIモデルに新型の「トランスフォーマーモデル」を導入した(従来モデルも選択可能)。
そこで今回はパッチ2.21を適用本ゲーム上で、プリセット設定では一番高負荷となる「レイトレーシング:オーバーレイ」をベースに4K解像度におけるゲーム内ベンチマークテストの平均フレームレートを計測した。今回はGPUによって使えるDLSS設定が異なるが、有効にした場合は全てAIモデルをトランスフォーマーモデルとしている。結果は以下の通りだ。
・DLSSオフ(ネイティブ解像度)
・GeForce RTX 5070:3.81fps
・GeForce RTX 5070 Ti:15.87fps
・GeForce RTX 5080:19.83fps
・GeForce RTX 4080:16.1fps
・GeForce RTX 4070:1.37fps
・GeForce RTX 3080 Ti:4.85fps
DLSSオン(フレーム生成オフ)
・GeForce RTX 5070:37.74fps
・GeForce RTX 5070 Ti:51.74fps
・GeForce RTX 5080:60.07fps
・GeForce RTX 4080:53.38fps
・GeForce RTX 4070:33.22fps
・GeForce RTX 3080 Ti:38.83fps
DLSSオン(フレーム生成2X)
・GeForce RTX 5070:67.29fps
・GeForce RTX 5070 Ti:88.96fps
・GeForce RTX 5080:95.81fps
・GeForce RTX 4080:90.88fps
・GeForce RTX 4070:83.12fps
DLSSオン(マルチフレーム生成3X)
・GeForce RTX 5070:95.18fps
・GeForce RTX 5070 Ti:126.37fps
・GeForce RTX 5080:136.35fps
DLSSオン(マルチフレーム生成4X)
・GeForce RTX 5070:118.97fps
・GeForce RTX 5070 Ti:158.82fps
・GeForce RTX 5080:173.3fps
同世代比較では順当に「5080>5070 Ti>5070」という結果となった。一方、4070と比較するとDLSSのフレーム生成2X(1フレームに対して1フレームの補間を実施)において「4070>5070」という結果となった。何度かテストはしたものの、この結果に変化はなかった。ドライバかゲーム本体のいずれか(あるいは両方)のアップデートによって改善するものと思われる。
もっとも、現時点でもGeForce RTX 50シリーズのマルチフレーム生成(3X/4X)を使うとGeForce RTX 5070でもいい感じにフレームレートを稼ぐことができる。超解像やフレーム補間による違和感を覚えない(気にならない)という人は、GeForce RTX 5070なら4K解像度でもそこそこ快適なゲームプレイを期待できる。
参考に、GeForce RTX 5070においてフルHD/WQHD解像度でDLSS無効とした場合(ネイティブ解像度)の平均フレームレートは以下の通りとなる。
・フルHD:41.18fps
・WQHD:25.51fps
一般的なTV(最大30fps)でプレイする前提だと、フルHD解像度ならおおむね違和感なく楽しめるだろう。(当該解像度のパネルを使うTVはないが)WQHD解像度はDLSSの助けを借りないとスムーズなプレイは厳しそうだ。
●動画のエンコードやAIのパフォーマンスもチェック!
今どきのGPUはゲーミングだけでなく、動画のエンコードやAIの演算処理にも活用されている。今回は、これらパフォーマンスをULの総合ベンチマークテストアプリ「Procyon」に内包されたテストでチェックしてみる。
Procyon Video Editing Benchmark
GeForce RTX 50シリーズには第9世代NVENC(動画エンコーダー)と第6世代NVENC(動画デコーダー)が内蔵されている。GeForce RTX 5070はNVENCが1基、NVDECが1基という構成だ。5070 Tiと比べるとNVENCが1基削られただけでなく、グラフィックスメモリも4GB減らされている。
実際はどうなのか、Procyonの「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264コーデック)と4K(H.265コーデック)の動画を2種類ずつ書き出す際のパフォーマンスを点数化する。負荷の大きいテストはエフェクト処理でGPUによるアクセラレーションを有効にできる。
総合スコアではなく、あえて書き出しに掛かった時間をチェックしてみると、以下の通りとなる。
・GeForce RTX 5070
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.9秒
・フルHD/その2:15.9秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):53.9秒
・4K/その2:46.3秒
GeForce RTX 5070 Ti
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):15.6秒
・フルHD/その2:14.7秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
・4K/その2:41.1秒
GeForce RTX 5080
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):14.7秒
・フルHD/その2:13.7秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
・4K/その2:42.7秒
GeForce RTX 4080
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
・フルHD/その2:15.7秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):54.5秒
・4K/その2:47.6秒
GeForce RTX 4070
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):23.7秒
・フルHD/その2:19.7秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):63.8秒
・4K/その2:53.7秒
GeForce RTX 3080 Ti
・フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
・フルHD/その2:16.3秒
・4K/その1(GPUアクセラレーション):55.4秒
・4K/その2:47.6秒
NVENCが1基削減されたことは大きい……と思いきや、思ったよりも大きな差は付いていない。ただ、このテストで扱う動画はやや短めなので、長い動画を書き出そうとすると「塵が積もれば山となる」となりそうだ。
上記の比較対象のうち、3080 Ti/4070も5070と同じ「NVENC×1+NVDEC×1」という構成だ。それと比べると、GeForce RTX 50シリーズのNVENCは過去世代よりも着実にパフォーマンスが改善していることも分かる。
Procyon Computer Vision Benchmark(Windows ML)
一言で「AI」といっても、さまざまなものがある。ProcyonではAIに関するベンチマークテストがあるが、今回は機械学習データを使って物体を検知する「コンピュータビジョン」の処理パフォーマンスを確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみよう。
ProcyonのAIベンチマークでは、テストによってはAPIや演算器(CPU/GPU/NPU)を指定して実行可能で、AI Computer Vision BenchmarkでGPUの演算能力を試す場合はAPIとして「Windows ML(Direct ML)」か「NVIDIA TensorRT」を選べる。GeForce RTXシリーズにとっては、TensorRTの方がパフォーマンスを発揮しやすいのだが、テスト実施時点ではまだGeForce RTX 50シリーズに対応していなかった(※2)。
(※2)3月3日付でGeForce RTX 50シリーズに対応するアップデートが配信された(今回は時間の都合でテストに盛り込めなかった)
そこで今回はWindows MLを使った場合の演算パフォーマンスを比較する。総合スコアは以下の通りだ。
・GeForce RTX 5070
・INT(整数演算):468ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):1803ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):980ポイント
GeForce RTX 5070 Ti
・INT(整数演算):577ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):1977ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):1176ポイント
GeForce RTX 5080
・INT(整数演算):634ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):2164ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):1267ポイント
GeForce RTX 4080
・INT(整数演算):539ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):1786ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):1116ポイント
GeForce RTX 4070
・INT(整数演算):416ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):1434ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):883ポイント
GeForce RTX 3080 Ti
・INT(整数演算):415ポイント
・Float16(半精度浮動小数点数演算):1501ポイント
・Float32(単精度浮動小数点数演算):912ポイント
順当に「5080>5070 Ti>5070」という結果となった。4070比では1.1〜1.25倍のパフォーマンス差が出ている。もちろん、3080 Tiよりも結果は良好だ。
今回はコンピュータビジョンのテストのみを行っているが、本製品はグラフィックスメモリが少ないため、一部の生成AIモデルがメモリ不足で動かない可能性がある。生成AIを動かす可能性のある人は、グラフィックスメモリが多いGPU(グラフィックスカード)を選ぶようにしたい。
●思ったよりも健闘していたパフォーマンス 懸念は「メモリの少なさ」
「普段はWQHD解像度で、たまに4K解像度でもゲームがしたい」という人にとって、GeForce RTX 5070は扱いやすいGPUだ。重量タイトルではネイティブ解像度での4Kゲーミングは厳しめだが、DLSSを使う前提なら重たいゲームタイトルでも十分に遊べる。消費電力や推奨電源容量も(シリーズの中では)控え目なので、組み込めるPCも多いはずだ。
3DMarkの「Time Spy Extreme」でシステム全体の消費電力を測ってみた所、以下の通りとなった。4070と比べると消費電力は少し大きいが、性能が向上した分と考えれば一応納得はできる。
・GeForce RTX 5070:アイドル時45W/ピーク時419W
・GeForce RTX 5070 Ti:アイドル時57W/ピーク時521W
・GeForce RTX 5080:アイドル時57W/ピーク時589W
・GeForce RTX 4080:アイドル時59W/ピーク時494W
・GeForce RTX 4070:アイドル時48W/ピーク時354W
・GeForce RTX 3080 Ti:アイドル時62W/ピーク時567W
重量級のベンチマークテストとして注目されている「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」だが、ウルトラプリセットの4K解像度で試してみたところ、平均フレームレートは以下のようになった。
・ネイティブ解像度:45.28fps
・DLSSオン/フレーム生成オフ:61.79fps
・DLSSオン/フレーム生成オン:79.69fps
普通のTVで楽しむ分にはネイティブ解像度(超解像なし)でも何とかなりそうなように見えるが、描画するオブジェクトが多くなると若干厳しい面がある。DLSSをオンにしてプレイするとそこそこ快適そうだ。
フレーム生成をオンにするとさらに解像度が改善する……のだが、テスト中の描画に違和感を覚える場面もある。この違和感は本タイトルに限ったことではなく、フレーム生成による補間を行うとよく見られることなので、気になる(なりそうな)人はフレーム生成をオンにした際の描画を見せてもらうといいだろう。
さて問題は価格設定だ。冒頭で触れた通り、想定販売価格は10万8800円からとなる。米国では税別で549ドル(約8万1700円)からなので、ちょっと国内価格は割高なようにも感じる。どうしても「10万円を切ったらいいのになぁ」と考えてしまう。
その点、ライバルのAMDはコストパフォーマンス(費用対効果)を重視した「Radeon RX 9000シリーズ」をぶつけてきた。実際のパフォーマンスと値付け(と供給量)次第だが、もしかするとGeForce RTX 5070/5070 TiのユーザーをRadeon RX 9070/9070 XTが“かっさらう”という展開もあり得る。
数年ぶりに、GPU回りの戦いが熱くなりそうだ。
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