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岩手県大船渡市で2月26日に発生した大規模な山林火災は地元をはじめ東北各地の消防関係者が懸命の消火活動に当たっているが、間もなく1週間となる4日も鎮火の見通しは立っていない。これまでに約2600ヘクタールを焼失し、少なくとも84棟以上の建物被害があったとみられ、現場は14年前の東日本大震災で被災した住民も多く暮らし、今も避難所で落ち着かない日々を過ごす。
仙台市消防局の斉藤正行消防司令長(59)=青葉消防署警防課警防第2担当課長=は、同局の第1次派遣隊として2月26日午後10時半ごろに大船渡市に入った。道中の車窓からは暗闇に火が大文字焼きのように浮かび上がる様子が見え、「燃えているのがはっきりと分かった」
最初に担当した綾里(りょうり)地区では、西風にあおられる火を集落に近づけないため、約40人の隊員を指揮して消火作業にあたった。幸い消火栓が使えたが、「収まったと思って見ているとまた燃え出したり、飛び火して新たに燃え始めたりした」
夜通し活動し、翌日午前10時までにほとんど消し止めた。休憩を取っていた昼過ぎ、綾里地区の北側にあるグループホームに炎が迫ってきたとの知らせで再び現場に向かった。
28日からは合足(あったり)地区を担当し、3月1日に仙台に戻るまで4日間活動した。合足地区でも鎮火させたことから、帰路につく時には山火事は「もう終わるな」と胸をなでおろしていた。
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しかし帰りのバスの車窓から離れゆく大船渡市の方を見ると、まるで火山が噴火しているかのような煙が上がっていた。4日間の活動中よりも火が大きくなっているようで、「俺たちの活動は何だったんだ」と無力感に襲われた。
仙台市消防局は4日、第3次隊を派遣した。このまま延焼が続けば、同じ隊員を再度現地に送る可能性もあるという。
「震災乗り越え新築した家が…」
山形県鶴岡市消防本部から現地に入った佐藤勝志消防司令長(58)と加藤伸消防司令(50)は、東日本大震災以来14年ぶりに大船渡市へ駆け付けた。急斜面で勾配差がある地形で強風が吹く中、ポンプ車が入れない場所では背負い式の消火器で、夜間にヘッドライトの明かりを頼りに住宅への延焼を防ごうと懸命の消火活動に従事した。
佐藤司令長は「震災を乗り越えて高台に新築した自宅が火にのまれているのを見て言葉にならなかった」と悲痛な表情で語り、「一刻も早く鎮火して元の生活に戻れるように応援していく」と決意をにじませた。
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青森地域広域事務組合東消防署(青森市)の大川智弘消防司令長(52)は「火災の規模や条件の悪さは想像を超えていた」と現地の様子を語った。
現場の山林については「スギやマツなどの油分の多い木が多いこと、落ち葉が堆積(たいせき)していたことも活動を難しくした」と話す。乾燥が続いたため木の根まで火が入ってしまうと、表面上消し止めたように見えても再び燃え始めてしまい、延焼が収まらない状況だという。【小川祐希、長南里香、江沢雄志】
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