福井中３殺害、６日に再審初公判＝前川さん、無罪の公算大―名古屋高裁支部

　１９８６年に福井市で中学３年の女子生徒＝当時（１５）＝が殺害された事件で、殺人罪が確定し服役した前川彰司さん（５９）の裁判をやり直す再審初公判が６日、名古屋高裁金沢支部（増田啓祐裁判長）である。検察側は有罪主張する方針だが、新たな証拠は提出しないとしており、無罪となる公算が大きい。

　公判は即日結審し、判決は７月ごろの見通し。弁護側は、再審開始決定の根拠となった当時の捜査報告書などを証拠採用するよう求める方針で、検察側は同意する意向だという。前川さんの意見陳述も行われる予定。

　事件は指紋などの明白な物証がなく、前川さんは関与を一貫して否定していた。これまでの審理では「血の付いた前川さんを見た」などとする知人証言の信用性が争われてきた。

　一審福井地裁は無罪としたが、二審名古屋高裁金沢支部は懲役７年の逆転有罪とし、９７年に最高裁で確定した。服役後の第１次再審請求審で同支部が再審開始を決定したが、検察側の異議申し立てを受けて名古屋高裁が取り消した。

　２０２２年に起こした第２次再審請求審では、検察側は弁護側の請求を受け、警察が捜査初期に作成した書類など計２８７点の証拠を新たに開示した。知人が事件当夜に視聴したとするテレビ番組の放送日が異なることなどが判明し、同支部は昨年１０月、「捜査に行き詰まった捜査機関が誘導などの不当な働き掛けを行い、関係者の供述が形成された疑いが払拭できない」として、再審開始を決定した。

　再審公判は当初、開始決定を出した山田耕司判事が裁判長を務める予定だったが、１月の人事異動で増田裁判長に交代した。