井阪氏、改革半ばで退陣へ=デイカス体制、多難な船出―セブン

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2025年03月07日 08:02  時事通信社

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時事通信社

記者会見に臨むセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長(手前)とスティーブン・ヘイズ・デイカス次期社長=6日午後、東京都千代田区
 9年間にわたり巨大流通グループ、セブン&アイ・ホールディングスを率いてきた井阪隆一社長が、「創業以来、最大の危機」(幹部)に直面する真っただ中で退陣する。カナダのコンビニ大手から巨額の買収提案を受ける中、主力のコンビニ事業に経営資源を集中させるグループの構造改革は道半ば。バトンを託されたスティーブン・ヘイズ・デイカス氏は多難な船出となる。

 セブン―イレブン・ジャパンの社長だった井阪氏は、強力なリーダーシップで「カリスマ」と呼ばれた鈴木敏文会長(当時)と対立の末、2016年5月にセブン&アイの社長に就任した。21年には米コンビニ「スピードウェイ」を買収。23年に売上高に相当する営業収益が国内小売業で初めて10兆円を突破した。

 一方で、常に「外圧」に悩まされ続けてきた。「物言う株主」の米投資ファンドからコンビニ事業への集中を要求され、23年の株主総会では退任を提案された。苦慮の末、井阪氏は百貨店のそごう・西武の売却に踏み切ったが、株価は低迷。24年にカナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた後、企業価値向上に向けて不採算の祖業イトーヨーカ堂の早期切り離しを決断した。コンビニ以外の改革が後手に回ってきた感は否めない。

 だが、得意とするコンビニ事業でも最近は精彩を欠いた。主力の北米事業が低迷し、国内でも商品が割高なイメージが一時客離れを招き、立て直しが急務となっている。

 井阪氏は6日の記者会見で、「引責とは考えていない」「心残りはない」と強調した。ただ、同日時点の株価は、アリマンタシォンが提示する買収価格の1株18.19ドル(約2700円)より2割以上も低い。

 セブン&アイは、経営トップの交代や北米事業の株式上場などの主要カードを切ることで成長や企業価値向上へ望みをつなげる。ただ、アリマンタシォンの提案を拒否し、単独経営路線を選択するにしても、確かな成長を実績値として示せなければ株主や市場の信認を得るのは容易ではない。 

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