写真 女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「結婚」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2019年3月1日 記事は取材時の状況)
==========
楽しいはずの家族旅行が、夫の行動で思わぬ展開に。この冬に起こった不穏な騒動を、不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんがレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)
昨年末のクリスマスイブを含んだ3連休、ルミさん(43歳)は、家族での旅行を予定していた。夫と彼女が交互に運転して、近場の温泉で子どもたちとともにゆっくり過ごそうという計画だ。
「うちは田舎がないので、子どもたちもとても楽しみにしていたんです」……ところがこの旅行で、とんでもないことが発覚、しかも夫の醜態を見てしまうことになったのだ。
◆温泉宿で、夫が女性と取っ組み合いに
「旅館に到着して、まずは温泉とばかりに息子は夫と、娘は私と分かれて行動。すると部屋に戻ってから夫が黙り込んでいるんです。息子に聞いても『わからない』と。何があったのか尋ねましたが、夫は『別に。なんでもないよ』と沈んだ様子でした。じゃあ、子どもたちを連れて旅館内のゲームコーナーでも行ってくるわと、とりあえずひとりにしたんです」
ふだんは口数が多く、めったに沈んだ様子を見せない夫だけに気にはなったが、こういうときはひとりにしておくほうがいいだろうとルミさんは判断したのだ。そのあたりは結婚14年の勘である。
「ゲームコーナーで遊んでいると、急に旅館の中が慌ただしくなって……。何があったのかと廊下に出てみると、夫が女性と取っ組み合いしているんですよ。
夫はふだん穏やかなタイプですし、女性に手をあげる人ではない。何が起こったのかさっぱりわからなかったけど、急いで近くまで行きました。中学生の娘には弟を連れて部屋へ行くように言い置いて。とにかく夫の醜態を子どもたちには見せたくなかった」
近くまで行くと、すでに騒ぎはおさまっているようだった。だが夫が捨て台詞のように、「おまえにオレの気持ちがわかるか」と叫んだのが聞こえた。女性のほうも「なによ、嘘つき」と大声を出している。
「夫は私に気づくと、ひゅっと顔を背けたんですが目が真っ赤だった。泣いているように見えました」
◆女性は夫の不倫相手。大喧嘩の理由は?
ルミさんは夫を旅館の近くにある喫茶店に連れ出した。娘の携帯に「すぐ戻るから待ってて」と連絡をして。
「そこで夫がぽつりぽつりと話したんですが、なんと相手の女性は夫の不倫相手だった。彼女は夫の大学時代の先輩の妹さんで、離婚の相談に乗っていたらいつしか恋愛関係になってしまった、と」
妹さんはその後離婚したそうだが、離婚したとたん夫と結婚したいと思うようになったという。
「距離を置いて離れようとしたんだけど、どこから情報を得たのか、家族旅行のことを知って追いかけてきたようです。ただ、彼女が男連れだったので、夫も思わず興奮してしまったみたい。夫も結局、彼女と別れる気なんてないんでしょう。しつこくされて困っているというのは夫の言い訳で、男と一緒にいるところを見て怒りがわいたんだと思います」
ルミさんは冷静にそう言った。その出来事からまだ月日が経っていないのに、妙に落ち着いている。
「1年ほど前から、夫に対してときどき様子がヘンだなと思ったことがあるんですよ。その原因がわかったから、ある意味ではほっとした。さて、これから夫はどうするつもりなのか。私と離婚したいのか、このまま結婚生活をしたいのか、そこを問いつめているところです」
◆「信頼感を勝手に壊したのは夫ですから」
もし夫が離婚したいと言ったら?
「それはしかたがないでしょう。離婚するなら、それなりに精神的賠償(ばいしょう)はしてもらいたいし、子どもたちの教育費もたんまり取るつもりです。帰ってくるなら、それなりの懲罰(ちょうばつ)が必要ですよね。ルール違反を犯したのは夫なんだから。私自身はどちらでもいい。ただ、無理やり一緒にいたいとは思わない」
夫の浮気が発覚すると、改めて夫への愛情に目覚める妻もいるのだが、ルミさんはもっとビジネスライクというかドライな感じなのが印象的だ。
「私と夫は結婚相談所で出会ったんですよ。結婚するなら、対等に暮らせて、一緒に家庭を築いていける人がいいという条件で選んだのが夫。今までは家事も育児もかなりきちんと分担してきたし、協力し合えるパートナーだと思っていたけど、そういう信頼感を勝手に壊したのは夫ですからね。別れるにせよ戻るにせよ、今まで通りにはいきません。もうひとつ、自分の男を見る目のなさも痛感しています」
涙ぐむこともなく、淡々と話すルミさん。子どもたちへの愛情は人一倍深いようだが、これだけドライだと、夫への気持ちはどうだったのだろうとよけいなことも考えたくなる。
「夫とは大人同士だと思ってつきあってきました。家庭や私に不満があるなら言えばいい。言わずにこそこそ浮気をするような男を選んだ私のミスだったという思いが強いんです」
強い女性である。この強さについていける男性がいるのだろうか、とふと思ってしまった。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio