スマートフォンやタブレット、PCの充電に「USBケーブル」を使っているという人も多いと思います。いわゆる「100円ショップ」で売っている税込み110円のケーブルもあれば、家電量販店やECサイトを見ると数千円もするケーブルもあります。率直にいって「安いUSBケーブルと高いUSBケーブルの違いが分からない」という人もいると思います。
価格の高いUSBケーブルには、高い理由がきちんとある……のですが、安い/高いに関わらず、適切なUSBケーブルを買うためにはどのようなことに気を付ければいいのでしょうか。
●ポイント1:端子(コネクター)の形状
まず、つなげる機器が使っているUSB端子(コネクター)の形状を確認してください。端子の形状は大まかに分けると以下の3種類があります。
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・USB Type-A:ホスト(制御する側の)機器用の端子
・「Standard(標準)」「Mini(ミニ)」「Micro(マイクロ)」の3サイズがある
・現在使われているのは、ほとんど「USB Standard-A」(標準サイズ)
・データ通信速度によって内部のピン数に違いがある
USB Type-B:ゲスト(制御される側の)機器用の端子
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・「Standard(標準)」「Mini(ミニ)」「Micro(マイクロ)」の3サイズがある
・少し前のスマホでは「USB Micro-B」、さらに前は「USB Mini-B」が使われていた
・データ通信速度によって形状に差異がある
USB Type-C:ホスト/ゲスト兼用の端子
・サイズは1種類のみで、裏表関係なく接続可能
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・USB規格以外の通信を行う「Alternate Mode(Alt Mode)」という仕組みがある
・データ通信速度によって内部のピン数に違いがある
これらの端子は、データ通信速度によって内部のピン(と配線)の数が異なりますが、USB Standard-A(Type-A)/Type-C端子は外観からデータ通信速度を見分けるのが困難です。見分け方については、次のポイントで併せて紹介します。
●ポイント2:データ通信速度
次に、つなげる機器が対応しているUSB端子のデータ転送速度をチェックしてください。速度の規格は以下の通りです(USB 2.0よりも過去の規格と、USB 3.2 Gen 1x2は割愛しています)。
・USB 2.0
・最高通信速度は480Mbps
・「Hi-Speed USB」とも呼ばれる
・エントリー/ミドルレンジのスマートフォンや一部のPCで使われている
USB 3.2 Gen 1
・最高通信速度は5Gbps
・もともとは「USB 3.0」という規格名で、「USB 3.1 Gen 1」も同義
・「SuperSpeed USB」とも呼ばれる
・最近は「USB 5Gbps」と呼ばれることもある
・USB Type-A/Type-B端子では端子やコネクター内部を原則として青く塗っている(例外あり)
USB 3.2 Gen 2
・最高通信速度は10Gbps
・もともとは「USB 3.1」という規格名で、「USB 3.1 Gen 2」も同義
・「SuperSpeed+ USB 10Gbps」とも呼ばれる
・最近は「USB 10Gbps」と呼ばれることもある
・USB Type-A/Type-B端子では端子やコネクター内部を原則として青く塗っている(例外あり)
USB 3.2 Gen 2x2
・最高通信速度は20Gbps
・「SuperSpeed+ USB 20Gbps」とも呼ばれる
・最近は「USB 20Gbps」とも呼ばれる
・端子形状はUSB Type-Cのみ
USB4 Version 1.0(USB4 Gen 3x2)
・IntelとAppleが提唱した「Thunderbolt 3」規格をベースに誕生
・最高通信速度は40Gbps
・最近は「USB 40Gbps」とも呼ばれる
・端子形状はUSB Type-Cのみ
USB4 Version 2.0(USB4 Gen 4x2)
・USB4 Version 1.0をアップデートした規格
・最高通信速度は80Gbps
・「非同期モード」では「片方向のみ最大120Gbps(反対方向は最大40Gbps)」も可
「USB 80Gbps」とも呼ばれる
端子形状はUSB Type-Cのみ
基本的には「USB 2.0まで」「USB 3.x」「USB4」で区分すれば大きな問題にはなりませんが、正規のUSB機器/USBケーブルには規格に応じたラベルが付いているので、それを頼りにケーブルを選ぶことをお勧めします。ただし、高速な通信に対応するケーブルほど高価になります。
なお、USBのデータ通信速度は原則として遅い機器/ケーブルに合わせられます。例えばUSB 3.2 Gen 2x2対応機器同士でも、USB 2.0規格のケーブルを使うと通信速度はUSB 2.0相当です。逆に、USB 2.0対応機器同士をUSB4 Gen 3x2ケーブルでつないでも、通信速度はUSB 2.0規格相当に制限されます。
USBデバイスやUSBケーブルが対応している通信速度は、付与されているロゴによって見分けが付きます。USB Standard-A端子/コネクターの場合は、内部が青色で塗装されていたらUSB 3.2 Gen 1またはUSB Gen 2対応と判断できます……が、デザイン面の都合で青く塗装していないケースもあるので気を付けてください。
●ポイント3:通電可能な電力量
特に機器への給電(充電)に使う場合は、USBケーブルの供給可能な最大電力にも注目しなければなりません。
USB規格における“標準的な”最大電力は以下の通りです。
・USB 2.0まで:2.5W(5V/500mA)
・USB 3.2 Gen 1以降:4.5W(5V/900mA)
・USB Type-C(通信規格は問わず):15W(5V/3A)
要するに、少なくともUSBケーブルは規格に応じて上記の電力を供給できるようにしなければいけません。
「あれ、何かよく聞く電力量よりも少ない」と思った人、勘の良い人です。USB規格ではより多くの電流を流すためのオプション規格として「USB BC(Battery Charge)」「USB PD(Power Delivery)」というものがあります。前者は名前の通りバッテリー充電に特化したオプションである一方、後者は機器の充電だけでなく駆動電力の供給に使うことも想定しています。それぞれの供給可能な最大電力は以下の通りです。
・USB BC 1.2:7.5W(5V/1.5A)
・USB PD 3.1:100W(20V/5A)または240W(48V/5A)
USB PDでは、電源(給電機器)と利用デバイス(受電機器)“交信”することで供給する電力量を決定します。電源が供給できる電力と利用デバイスが受けられる電力が一致する場合はベストパフォーマンスを発揮しますが、そうでない場合は互いが対応している中で最大の電力量での供給となります。
この規格ではUSBケーブルに通常よりも膨大な電力を流す可能性があります。そこで60W超の電力を流しうるUSBケーブルには「eマーカー」と呼ばれるICチップを搭載する必要があります。60W超の出力に対応するUSB PD電源は、ケーブルにeマーカーがあり、かつ利用デバイス側でも60W超の入力が可能だと分かった場合にのみ60W超の出力を行います。
さらに、100W超の電力を供給する場合は、電源/利用デバイス/ケーブルの“全て”がUSB PDのオプション規格「EPR(Extended Power Range)」に対応する必要があります。EPR対応のUSBケーブルはeマーカーに「60W超だけじゃなくて100W超もイケるぜ」という付帯情報を持っています。eマーカーが付いていても、EPR対応の情報を持ち合わせていない場合は最大100Wの電力供給となります。
一般的に、スマホやタブレットで急速充電をする場合は18〜45W、ノートPCを稼働する場合は30〜100W、ゲーミングノートPCを稼働する場合は100W超の電力が必要です。
USBケーブルの給電能力は、基本的にパッケージに書かれています。購入時によく確認してください。USB-IF(USB Implement Forum)から認証を受けているケーブルについては、プラグの部分に給電能力に関する表記がなされています。
●高価なUSBケーブルにはどんな傾向がある?
USBケーブルは、基本的に「より高速な規格」「より高電流」に対応しているほど高価になります。
USB 2.0までの規格とUSB 3.2 Gen 1以降の規格では、信号線の数に差があります。結線すべき線の数が多くなるほど手間がかかります。また、より高電流を通す場合は線の品質を上げなければいけませんし、USB PDで60W超の電流を通す場合はeマーカーを実装する必要があります。高価になるのは当然といえば当然です。
さらに、先述した各種ロゴマークを使うには、USB規格を管理する「USB-IF(USB Implement Forum)」から認証を取得する必要があります。認証を取るにも一定のコストは必要ですから、その分値段にも反映されます。
ただ、USB-IFから認証を取得したケーブルは一定の品質が担保されているということになるので「安物買いの銭失い」となるリスクは極小化できます。
USBケーブルは「安ければダメ」「高ければいい」というものではないのですが、つなげる機器にピッタリなものを選ぶというのが大前提です。その上で、予算に合わせてより品質の担保されたものを買うのが良いとでしょう。
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