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PC用キーボードの配列は、大きく分けると「米国英語(US)」「ヨーロッパ」「日本語」の3種類がある。グローバルで事業を展開するメーカーの場合、国や地域によってこれら3種類のキーボードを使い分けて製品を投入している。
一方、日本のPCメーカーは、基本的に日本では日本語キーボードのモデルしか販売しないことが多い。一部の海外販売しているメーカーは、海外販売するモデルにUSキーボード構成を用意しているにも関わらず、日本では販売してくれない。
そんな中、VAIOはUSキーボード構成のノートPCを取りそろえている。VAIOストア/ソニーストアにおけるカスタマイズ(CTO)可能なハイエンドモデル限定ではあるが、「国内メーカーでもUSキーボードがいい!」という人にとっての貴重な選択肢である。
同社が2024年11月に発売した最新モバイルノートPC「VAIO SX14-R」も、USキーボードを選べる1台だ。今回は、同モデルで新たに採用された「ディープエメラルド」カラーのUSキーボード構成を借りて、快適さをチェックしていきたい。
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●配列にクセのないUSキーボード タッチパッドとのバランスの良さも
筆者は仕事柄いろいろなPCを使っているのだが、プライベートで使うノートPCは極力US配列でそろえている。先述の通りグローバルメーカーも日本では日本語キーボードを搭載するノートPCを販売しているのだが、どうもタッチパッドとその上部にあるキーの“バランス”が気になってしまう。最近のモデルではEnterキー周辺の造形も納得が行かない。
日本メーカーの日本語キーボードであれば、筆者の覚える違和感の大部分は解消される。それでも、タッチパッドとその上部にあるキーの“バランス”が絶妙なモデルは限られる。
仕事柄というのもあって、筆者はノートPCで一番重要なパーツはキーボードだと考えている。余計なことを考えずに済むにはどうしたらいいか考えた結果、たどり着いたのがグローバルなら一番台数も多く出て、タッチパッドと上部のキーとのバランスも比較的取れているUSキーボードを備えるノートPCを買うという選択肢だ。
このような考え方を持つ筆者からすると、VAIO SX14-RのUSキーボードは良い感じだ。タッチパッドと上部のキー(左右のAltキーとスペースキー)のバランスも良好で、Enterキー周辺部の造形もバッチリだ。キーストロークは公称で約1.5mmだが、きちんとチューニングされていることもあってしっかりと“押し込める”。
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本モデルのキーボードには新たに「Copilotキー」を搭載している。また、オンライン会議に関するWebカメラ/オーディオ設定を一括して行える「VAIO オンライン会話設定」を一発起動するためのショートカットキーも備えている。
●Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)搭載 独自技術で高パフォーマンス
VAIO SX14-Rは、Intelの「Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)」のHシリーズ(開発コード名:Meteor Lake-H)を搭載している。
Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)は、Intel初の「NPU(Neural Processing Unit)」を統合したCPUだ。NPUはAI(人工知能)でよく使われる推論演算に特化した演算器で、アプリ側の対応も必要となるが、従来はCPU/GPUが行っていた推論演算を高効率かつ高速にオフロードできることがメリットだ。
AIアプリにおけるNPU利用は徐々に進んでいる。アプリを動かす基盤となるWindows 11でも、「Windows Studio Effects」でNPUを活用している。先述したVAIO オンライン会話設定は、このWindows Studio Effectsをより快適に使うための機能でもあり、より快適なビデオ会議を実現できる。
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今回レビューする機材は、Core Ultra 7 155Hを搭載している。CPUコアはパフォーマンスコア(Pコア)が6基12スレッド、高効率コアが8基8スレッド、低電力Eコアが2基2スレッドの合計16基22スレッド構成だ。
GPUコアはXe-LPGアーキテクチャベースの「Intel Arc Graphics」を8基備える。本GPUはハードウェアベースのレイトレーシング(RT)処理に対応している他、AIベースの超解像技術「Xe Super Sampling(XeSS)」も利用可能だ。
今でこそCore Ultra 7 155Hは“1世代前”となってしまったが、ノートPC向けCPUとしては上位のパフォーマンスを備えている。CPUやGPUを酷使するような使い方をすると発熱は大きくなり、自身を保護するために性能を抑制する「サーマルスロットリング」が発動する可能性が高まる。
その点、VAIO SX14-Rでは同社の独自技術「VAIO TruePerformance」を適用することでピーク性能を極力長く持続できるようになっている。後述するが、特にGPU関連のベンチマークテストではその効果は“てきめん”だ。
メモリはLPDDR5X規格で、CTOモデルでは容量を16GB/32GB/64GBから選べる。今回のレビュー機は最小の16GB構成だが、“最小”でも16GBとなったのは時代の流れを感じるところでもある。
ストレージはPCI Express 4.0接続の自己暗号化(OPAL)対応SSDで、CTOモデルでは容量を256GB/512GB/1TB/2TBのいずれかから選べる。256GB以外はより高速な「ハイスピードSSD」となっており、今回のレビュー機は512GBのハイスピードSSDを搭載していた。
●充実のポート類 Thunderbolt 4端子が左右にあるのは便利すぎる
VAIO SX14-Rはポート類も充実している。左側面にはThunderbolt 4(USB4)端子とUSB 5Gbps(USB 3.2 Gen 1)Standard-A端子を、右側面にはイヤフォン/マイクコンボ端子、USB 5Gbps Standard-A端子(常時給電対応)、HDMI出力端子、有線LAN(1000BASE-T)端子とThunderbolt 4端子を備える。Thunderbolt 4端子は、USB PD(USB Power Delivery)による給電/充電と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応している。
本製品は、USB Standard-A端子だけでなくThunderbolt 4端子も左右両方に備えていることが魅力だ。USB4(USB Type-C)端子を備えるノートPCでは、端子を左右のいずれかの側面に“寄せる”ことが多い。理由はシンプルで、基板の設計や信号品質を担保するのが難しくなるからだ。
しかし「ユーザーの利便性向上につながる」という観点で、VAIOは設計に工夫することで左右両側面に備えた。確かに、ケーブルの取り回し状況に応じて左右のどちらにもACアダプターを接続できるのは助かる。
そのACアダプターも、出力自体は最大65Wで従来モデルと変わりないが、コンパクトになったウォールマウントタイプを付属している。収納可能なコンセントプラグも相まって、持ち運びもしやすい。
ワイヤレス通信はWi-Fi 7(IEEE 802.11be)とBluetooth 5.4に対応している。CTOモデルの場合、オプションで5Gモジュールを搭載可能で、nanoSIMまたはeSIMを別途用意(契約)することでWi-Fiや有線LANのない環境でもインターネットに接続可能だ。
●見やすいディスプレイにキレイなWebカメラ
製品名からも分かる通り、VAIO SX14-Rは14型液晶ディスプレイを搭載している。CTOモデルでは1920×1200ピクセル(タッチ操作非対応)か2560×1600ピクセル(タッチ操作対応)のノングレア(非光沢)パネルを選択可能で、特別仕様モデル(勝色/ALL BLACK)では2560×1600ピクセル(タッチ操作/ペン入力対応)のグレア(光沢)パネルも選択可能だ。
今回のレビュー機はベーシックな1920×1200ピクセルのノングレア液晶を搭載する構成だったが、発色も良好で見やすかった。
Webカメラは約921万画素で、顔認証ユニットやAIビジョンセンサーも統合している。このカメラは「ピクセルビニング」にも対応しており、暗い場所での集光能力が高いことが特徴だ。HDR撮影にも対応している。
このWebカメラは先述したWindows Studio Effectsにも対応しており、VAIO オンライン会話設定と組み合わせることで快適に使える。
●パフォーマンスはどう?
VAIO SX14-Rについて一通り説明したところで、簡単にベンチマークテストアプリでパフォーマンスをチェックしてみよう。なお、電源設定は全てAC電源の標準設定(バランス)のままとしている。
CPUを使った3Dレンダリング性能をチェックする「CINEBENCH R23」の結果は以下の通りだ。
・マルチコア:1万3534ポイント
・シングルコア:1745ポイント
Core Ultra 7 155Hを搭載するノートPCと比べてみると、シングルコアのスコアは確実に上位に入る。マルチコアスコアも、想定よりも高めだ。VAIO TruePerformanceの効果はしっかりと発揮できているといえるだろう。
総合ベンチマークアプリ「PCMark 10」の結果は以下の通りだ。
・総合:6974ポイント
・Essentials:1万625ポイント
・Productivity:8756ポイント
・Digital Content Creation:9898ポイント
GPUがパワーアップしたこともあって、Digital Content Creationのスコアは結構高くなった。総合スコアも、同じCPUを搭載するノートPCと比べると高い方だ。これだけのスコアを記録するなら、普段使いで困ることもないだろう。
せっかくなので3Dグラフィックスをテストする「3DMark」も主要なテストを試してみた。総合スコア配下の通りだ。
・Fire Strike(DirectX 11/フルHD):8109ポイント
・Fire Strike Extreme(DirectX 11/WQHD):3873ポイント
・Fire Strike Ultra(DirectX 11/4K):2179ポイント
・Time Spy(DirectX 12/WQHD):3872ポイント
・Time Spy Extreme(DirectX 12/4K):1794ポイント
・Port Royal(DirectX 12 Ray Tracing):1435ポイント
Fire Strike ExtremeとPort Royal以外のテストについては、同一構成のGPUの平均値を超えている。CPUがしっかりと冷却できているがゆえに、パフォーマンスを発揮しやすかったということだろうか。
ノートPC向けのCPUに内蔵されたCPUでも、ある程度のスコアを記録できるようになったのは良い時代になったものだ。
●バッテリー持ちはどう?
VAIO SX14-RはモバイルノートPCだ。それだけにバッテリー駆動時間も気になるところだろう。CTOモデルではバッテリーが「標準容量」と「大容量」の2種類から選べる。軽量であることを優先する場合は標準容量を、バッテリー駆動時間を重視するなら大容量バッテリーモデルを選ぶといいだろう。
今回レビューしたのは。70Wh(定格値)の大容量バッテリーモデルだ。JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)に基づく公称値によると、動画再生時は最長約14〜16時間、アイドル時は最長約35〜38時間駆動するという。
画面輝度を100%とした上で、PCMark 10の「Modern Office battery life」テストで残量100%から3%(強制休止状態)になるまでの駆動時間を計測したところ18時間31分となった。
実はこのテスト前、レビュー機のバッテリー容量を調べておらず、「寝る3時間くらい前からテストすれば寝ている間にテストが終わるだろう」思ってテストをしたのだが、7時間ほど寝てからチェックするとまだ35%ほどバッテリーが残っていた。
PCでどんな作業をするのかにもよるが、大容量バッテリーモデルをWi-Fi通信で運用するなら、1泊2日の出張を充電なしで乗り越えられるかもしれない。
●USキーボードを選べてパワフル! ビジネスモバイルとしてお勧め
発表会の取材時からずっと思っていたことなのだが、VAIO SX14-Rはできが良い。最軽量構成なら約999gで、最重量構成でも約1178gと14型モバイルノートPCとしては軽量だ。しかも、天板と底面にカーボン素材を使うなど、丈夫さにも一定の配慮をしている。キーボードも打ちやすくタッチパッドも大きめで操作性も良好――語彙(ごい)力を失ったような言い方だが、本当に良かった。
今回、実機をレビューしてこの感想は確信に変わった。特に「USキーボードを搭載しているノートPCが欲しいけど、ビビッとくるものがない」と考えている人には、真っ先に検討すべき1台だ。もちろん、日本語キーボードの出来も良好だ。CTOモデルではかな表記の有無も選べる。CPUの性能もきちっと引き出せているので、作業も快適だろう。
VAIO SX14-Rは、一部の家電量販店で実機展示もある。キーボードの打ち心地は配列を問わず同じなので、気になったら展示店舗に出向いて試してみるのも良いだろう。
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