自宅サーバにもアリな“モンスターNAS” HDD6台にM.2 SSDを2枚、さらに10GbE対応NICも2枚載る、UGREENの最上位モデル「NASync DXP6800 Pro」を試す

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2025年03月07日 15:21  ITmedia PC USER

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 モバイルバッテリーや充電ケーブルといったモバイル向けガジェットを手掛けてきたUGREEN(中国・深セン)が、2月14日にNAS製品「UGREEN NASync」シリーズのクラウドファンディングをGREEN FUNDINGで始めた。直後から話題を呼び、現在までに支援総額は6億円超、支援者数も1万人を超えるなど、「そんなにNASって一般的な製品だっけ」と思うほど盛り上がっている。


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 筆者もHDDを6台搭載できる「DXP6800 Pro」の支援(という名の購入)をしており、私物の到着を今か今かと待ちわびている。


 そんな中、前もって評価機材で検証できる機会に恵まれたので、DXP6800 Proの詳細をチェックしてみることにした。既に支援された方や、これから支援を検討している方の参考になれば幸いだ。


●最上位モデル「DXP6800 Pro」の仕様


 日本国内で展開されるUGREEN NASyncシリーズは、「DXP2800」「DXP4800 Plus」「DXP6800 Pro」の計3モデルだ。その中でもDXP6800 Proは最上位モデルとなっている。各モデルの主な仕様と定価は以下の通りだ。


 ただし、現在はGREEN FUNDINGでそれぞれ25%オフで支援(購入)できる。DXP6800 Proは12万7410円、DXP4800 Plusは7万4910円、DXP2800は4万1910円と大盤振る舞いだ。


 DXP6800 Proは搭載できるHDDの数だけでなく、CPUや搭載メモリの数、ネットワークインタフェースのスペックともに、最上位モデルにふさわしい構成となっている。


 最近のNASはファイル共有機能だけでなく、仮想マシンやDockerを稼働させられるようにもなっており、NASyncシリーズもそれらを利用できる。


 DXP6800 ProはNASとしては非常にハイパフォーマンスなCPUを搭載している。メモリも最大64GBを搭載できるため、DXP6800 Proの1台でファイル共有と仮想マシン用のサーバとして利用できる点は、筆者のように自宅でサーバを運用している人にとって非常に魅力的なモデルといえるだろう。


●DXP6800 Proの外観をチェック!


 まずはDXP6800 Proの外観からチェックしてみよう。前面にはHDDを搭載できるトレイが6つ用意されているが、各トレイには番号が振られている。デザイン的な魅力もさることながら、HDDを交換する際に目的のHDDを探しやすいという実用性もある。


 NAS製品によっては、マニュアルを見ながら正しいトレイを特定しなければならないが、DXP6800 Proは本体を見るだけで交換対象のHDDを特定できるので分かりやすい。


 他にはUHS-IIに対応したSDメモリーカードスロットと、Thunderbolt 4ポートが2基、USB 3.1 Gen 2 Type-Cポートが1基と、外部インタフェースも非常に豪華な構成となっている。


 HDDのトレイにはそれぞれ簡易的な鍵穴が用意されており、付属の鍵でロックすることで不意なHDDの取り外しを防げるようになっている。


 子供がいる家庭であれば、いたずら防止に活用できそうだ。また、故障したHDDを交換する際のオペレーションミスを防ぐ役割も果たしてくれる。


 「いたずら防止は分かるが、オペレーションミスなんて発生するのか」と思う方もいるかもしれない。しかし、筆者の経験上、NASのHDDを誤って外してしまったという話はよく耳にしているので、あながちばかにはできない。


●ツールレスHDDトレイに光る工夫あり


 NASyncシリーズは、全てのモデルがドライバーなどの工具を使わずにHDDを装着できるツールレストレイを採用している。


 ツールレストレイは、最近のモデルであればどのメーカーでも採用しているので「特筆すべき点は無いのでは?」と思うかもしれない。筆者も実物を見るまではそう思っていた一人だ。


 そんなことを思いつつ、実際にHDDを取り付けようとしたのだが、トレイが硬くうまくハマらない。「そんなまさか」と困惑していたところ、HDDトレイの裏側に「Press」と書かれたレバーがあったので、押し込んでみた。


 するとHDDトレイの右側面が横に広がった。この状態でHDDをセットし、広がった側面を押し込むだけで取り付けが完了した。


 よくあるツールレストレイは、トレイを少し曲げてHDDを取り付けるタイプが大半なので、いつも力加減に気をつかう。長時間利用していると、HDDトレイ自体が劣化してHDD交換時にトレイが割れてしまう恐れもあった。


 その点、NASyncシリーズのツールレストレイは、HDDを無理せず取り付けられるので、心理的な安心感がある。一般的なユーザーからすれば単純に「取り付けやすくて良い」という感想にとどまるかもしれないが、エンスージアストから見ると非常に大きな“推し”ポイントに挙げられるレベルの特徴だ。


●10G/マルチギガ対応のRJ-45ポートを2つ搭載


 背面にはNASとして利用するのに必要十分なポートが用意されている。専用スマホアプリの「UGREEN NAS」で、NAS上に保存している動画を選んでディスプレイやテレビに映像出力できるHDMIポートが1基、USB 3.1 Gen 2 Standard-Aポートが1基、USB 2.0 Standard-Aポートが2基と、NASとは思えない充実ぶりだ。


 さらに、下位モデルのDXP4800 Plusと違い、DXP6800 Proは10G/マルチギガ対応の有線LANポートを2つ備えている。


 例えばDXP4800 Plusでリンクアグリゲーション(LAG)を構成すると、10G/マルチギガポートがダウンした際、副系のNICが2.5Gなので、パフォーマンスが一時的に低下してしまうが、DXP6800 Proであれば主系のNICがダウンしたとしても、パフォーマンスの低下を最低限に抑えられる。


●メモリスロットとM.2スロットが2つ、まさに“モンスターNAS”


 DXP6800 Proは外部インタフェースが充実しているだけでなく、高い拡張性を併せ持つ。背面のカバーを開けると、DDR5 SO-DIMMスロットが2つと、M.2 NVMeスロットが2つある。


 DXP6800 Pro自体、最大で64GBのメモリを搭載できるため、32GBのDDR5 SO-DIMMを2枚挿せば、自宅仮想マシンとしては十分なメモリ量を確保できる。


 M.2 NVMeスロットは、HDDで構成したRAIDアレイのキャッシュや、M.2 NVMeでRAID1アレイを構成し、仮想マシン用のストレージとして利用できるため、いわゆる自宅サーバ勢にとって非常にうれしい仕様となっている。


 もちろん他のメーカーでも似たような構成を取れる製品が販売されているが、定価16万9880円で購入できる製品で、ここまでヘビーに使えるモデルはなかなか見当たらない。コストパフォーマンスの高さが光る逸品だ。


●DXP6800 Proのパフォーマンスをチェック


 さて、ここまでDXP6800 Proの外観や仕様について軽く触れてきたが、ここからはDXP6800 Proで実際にRAIDアレイを構成し、DXP6800 Proの実力を詳しくチェックしていこう。なお、検証環境の構成は以下の通りだ。


 まずはNASのディスクアクセスのパフォーマンスを測るため、CrystalDiskMark 8を使って、いくつかシナリオを想定してそれぞれテストした。結果は以下の通りだ。



●CrystalDiskMark読み込みテスト(NVMeキャッシュ無し)


HDD×6 RAID5 2.5GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒296.42MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒204.59MB


・RND4K Q32T1:毎秒137.26MB


・RND4K Q1T1:毎秒6.27MB


HDD×6 RAID5 10GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒1180.91MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒443.94MB


・RND4K Q32T1:毎秒132.29MB


・RND4K Q1T1:毎秒8.66MB


NVMe×2 RAID1 2.5GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒296.43MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒204.90MB


・RND4K Q32T1:毎秒137.58MB


・RND4K Q1T1:毎秒6.05MB


NVMe×2 RAID1 10GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒1183.26MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒446.67MB


・RND4K Q32T1:毎秒138.81MB


・RND4K Q1T1:毎秒9.87MB


●CrystalDiskMark書き込みテスト(NVMeキャッシュ無し)


HDD×6 RAID5 2.5GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒251.98MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒200.16MB


・RND4K Q32T1:毎秒122.43MB


・RND4K Q1T1:毎秒5.33MB


HDD×6 RAID5 10GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒1172.56MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒479.50MB


・RND4K Q32T1:毎秒123.27MB


・RND4K Q1T1:毎秒8.37MB


NVMe×2 RAID1 2.5GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒241.44MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒194.16MB


・RND4K Q32T1:毎秒125.27MB


・RND4K Q1T1:毎秒5.20MB


NVMe×2 RAID1 10GbE


・SEQ1M Q8T1:毎秒1164.50MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒446.69MB


・RND4K Q32T1:毎秒126.86MB


・RND4K Q1T1:毎秒5.97MB


 結果を比較してみると、6台のHDDで構成したRAID5アレイと、HDDより高速な2枚のNVMeで構成したRAID1アレイのパフォーマンス差がほぼ無い結果となった。


 シーケンシャルアクセスに主眼を置くと、2.5GbEと10GbEの結果ともに転送速度上限の毎秒312MBと毎秒1250MBに近しいパフォーマンスを発揮している。


 RAID5の仕組みとして、複数のディスクに並列アクセスすることから、RAIDアレイを構成するHDDの台数が増えれば増えるほどパフォーマンスが向上する。もちろん、バックプレーンのI/O限界があるため無限にパフォーマンスが増大するわけでは無いが、6台のHDDで構成したRAID 5アレイはNVMeキャッシュが無くとも、10GbE環境で利用する場合はなんら問題無いパフォーマンスを発揮してくれる。


 ビジネスで利用する場合は、可用性を少しでも高めるためにHDDを1台ホットスペアに設定するのがセオリーだが、自宅サーバとして利用するのであれば、可用性ではなく、得られるパフォーマンスを最大化しておきたい。


 であれば、NASのファイル保存先を6台のHDDで構成したRAID5アレイを指定し、2台のNVMeで構成したRAID1アレイは仮想マシン用に利用すると、無駄なくHDDとNVMeを利用できるだろう。


●6台のHDDと5台のHDDで構成したRAID5アレイのパフォーマンス差は?


 参考までに6台のHDDで構成したRAID5アレイと、5台+ホットスペア1台のHDDで構成したRAID5アレイの10GbE環境下のパフォーマンス比較を実施してみた。結果は以下の通りだ。


●CrystalDiskMark読み込みテスト


HDD×6 RAID5 キャッシュ無し


・SEQ1M Q8T1:毎秒1180.91MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒443.94MB


・RND4K Q32T1:毎秒132.29MB


・RND4K Q1T1:毎秒8.66MB


HDD×5 RAID5 キャッシュ無し


・SEQ1M Q8T1:毎秒956.66MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒513.87MB


・RND4K Q32T1:1毎秒29.71MB


・RND4K Q1T1:毎秒6.46MB


●CrystalDiskMark書き込みテスト


HDD×6 RAID5 キャッシュ無し


・SEQ1M Q8T1:毎秒1172.56MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒479.50MB


・RND4K Q32T1:毎秒123.27MB


・RND4K Q1T1:毎秒8.37MB


HDD×5 RAID5 キャッシュ無し


・SEQ1M Q8T1:毎秒501.51MB


・SEQ1M Q1T1:毎秒397.86MB


・RND4K Q32T1:毎秒106.08MB


・RND4K Q1T1:毎秒4.63MB


 結果として、読み込みテストについては、大きな差は現れないものの、書き込みテストにおいては非常に大きな差が現れる。そのため、HDDを1台ホットスペアとして設定する場合は、NVMeを2枚搭載して読み込み/書き込みのキャッシュを有効化しておきたい。


 ただし、読み込み/書き込みのキャッシュを有効化した状態でDXP6800 Proの電源が切れると、書き込み中のデータが消失する可能性があるため、UPSなどで停電時の電源バックアップが必須となる。その点は注意が必要だ。


●コストパフォーマンスの高いモンスターNAS、DXP6800 Proは自宅サーバ勢にピッタリ


 DXP6800 Proについて、外観とパフォーマンスを基に詳しくチェックしてみたが、CPUにIntel Core i5-1235Uを採用し、メモリの拡張性やインタフェースが充実したNASを、定価なら16万9880円で購入できる事を考えると、非常にコストパフォーマンスの高い“モンスターNAS”と言えよう。特に現在のキャンペーン価格(12万7410円)は、ちょっと突き抜けている。


 NASと仮想マシンサーバをそれぞれ別で用意すると、その分の設置場所やコンセントを多く占有してしまうが、DXP6800 Proであれば1台で済む。もしいずれかの買い換えを予定しているのであれば、DXP6800 Proをチェックしてみてもよさそうだ。



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