看板メニュー「中華そば390円」を値上げも、“集客力が衰えない”日高屋。ポイントは“相対的な安さ”にアリ

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2025年03月08日 09:11  日刊SPA!

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picture cells - stock.adobe.com
「中華そば390円」を死守していた日高屋ですが、人件費や物価上昇の波には逆らえず、昨年12月に420円へと値上げしました。しかし、今年1月の既存店客数は前年比で6.6%増、2月も5.5%増と、客は離れていません。外食チェーンの中でダントツの安さを維持しており、相対的な安さが集客力につながっていると考えられます。とはいえ、日高屋の地盤は首都圏の1都3県のみ。北関東や新潟・長野への進出を目指しています。安さは武器となるのでしょうか。近年におけるハイデイ日高の業績と、今後の方針をまとめました。
◆デフレ時代に店舗を拡大

 日高屋は1973年に大宮で開業した「来来軒」がルーツです。大宮で店舗数を増やしたあと、83年に株式会社化しました。86年に食材関連の子会社、日高食品を開業。1993年に都内一号店として「らーめん日高」を赤羽にオープンしました。現在の社名に変更したのは98年のことです。

 今となっては、都内でも圧倒的な認知度を有する日高屋ですが、「日高屋」という屋号の店舗を構えたのは比較的最近で、2002年以降です。低価格のラーメン店と位置づけ、中華そばを390円で提供。デフレ時代において消費者に受け入れられました。ちなみに中華料理店の総数は減少し続けており、家族経営の小規模店の閉店が進む一方、日高屋や餃子の王将といった大手チェーン店は勢力を拡大の一途をたどっています。

 2006年には東証一部上場企業となり、2012年には店舗数300店舗を達成しました。2017年に400店舗を達成し、24年11月末時点で全社456店舗(内、日高屋は426店舗)を展開しています。全店直営です。

◆徐々に値上げするも、相対的には安い

 日高屋は以前から値上げを進めていましたが、22年以降はそのペースを上げました。原材料費や人件費の高騰には逆らえなかったようです。22年8月、23年3月、24年5月、そして24年12月と毎年連続で値上げしました。度重なる値上げにより「とんこつラーメン」は450円から510円に、「味噌ラーメン」は540円から610円となりました。

 しかし、「中華そば」に関しては創業以来の390円を維持し、24年12月の値上げまで価格を死守していました。以前の看板には「中華そば390円」と記載があったように、集客手段に用いていたためです。「中華そば・餃子・生ビールの3品で1,000円以下に抑える」というルールもありました。とはいえインフレの波には逆らえず、直近の値上げで420円となりました。

 冒頭の通り、値上げ後も客数は順調に伸びており、客離れは進んでいないようです。ランチ1,000円越えが当たり前となった昨今でも、日高屋では1,000円以下に抑えることができ、相対的な安さが目立ったためと考えられます。

◆一時業績悪化も、すでに回復済み

 さて、近年の業績を見てみましょう。20年2月期から24年2月期までの業績は次の通りです。

【株式会社ハイデイ日高(20年2月期〜24年2月期)】
売上高:422億円→296億円→264億円→382億円→478億円
営業利益:41.0億円→▲28.0億円→▲35.2億円→6.2億円→46.4億円
全社店舗数:443店→432店→442店→440店→449店

 コロナ禍の21年2月期、22年2月期は大きく落ち込んでいることが一目瞭然。苦戦した背景には立地とメニュー構成が関係しています。日高屋が主力とするのは都内の駅前で、乗降客数の多い駅では北口と南口というように両側に出店することもあります。コロナ禍では都市部に向かう人流が減ったため、日高屋は悪影響を受けました。

 また、日高屋は夜の「ちょい飲み需要」を取り込み、夜でもアルコール等の売上を確保することで、駅前一等地の賃料をまかなってきました。コロナ禍では時短営業や酒類提供自粛の影響で夜間の売上が激減。業績悪化に直結したのです。

 とはいえ、その後は順調に回復。今期25年2月期は売上高520億円、営業利益52億円と予想。店舗当たりの売上も既にコロナ禍以前の水準を超えています。

◆従来の駅前立地からロードサイド強化へ

 同社の主な出店地域は東京・埼玉・神奈川・千葉の1都3県です。低価格を支えてきたのは埼玉県にあるセントラルキッチンの行田工場であり、工場から遠い地域への出店はできませんでした。また、ロードサイドではなく駅前立地を得意としているため、自ずと立地が限られました。

 これからは、近年ではロードサイドを強化する方針を掲げています。行田工場を中心として群馬・茨城・栃木など北関東に出店、新潟・長野も目指すようです。昨年12月には群馬県で3店舗目をオープンしました。地方のロードサイドでは都心のように「ちょい飲み」は期待できません。継続して安さを武器に勢力を拡大できるのか、今後に注目したいところです。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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