
心の中にある、どこか懐かしく幻想的な光景を、自身が撮影した写真と画像編集で描き出す瓜生倫子さん(85)=岡山市。70代から本格的に始めた撮影、編集技術で制作し、公募展への入賞や個展など精力的に活動の幅を広げている。昨秋には初の写真画集「天球の帆布」を刊行、3月は岡山市内で個展を開く。「想像を膨らませ形にしていくのが楽しい。作品を見た子どもや若者が、夢と希望を感じてくれたらうれしい」と笑顔で話す。
開いた本から満開の桜の木が浮かび上がり、その下で子どもたちが遊ぶ「月夜のふたりの物語」、雑踏に立つ女性の眼前に宇宙が広がる「未来のお仕事」…。52点が収録された写真画集のページをめくると、美しく独創的な「瓜生ワールド」が広がる。
作品制作は岡山県内外の公園や海、山などを訪れ、撮影した人物や風景の写真を数枚組み合わせて画像編集ソフトで加工。「写真画」として1枚の絵画を生み出す。頭の中は常に作品のアイデアでいっぱい。「毎日がパソコンとの闘い」と言うように、作業に没頭し、気づけば夜が明けていることも珍しくない。
もともとの趣味は山歩き。山中で出合った珍しい植物を記録するため、一眼レフカメラを持ち歩いていた。夫の死を機に「寂しさを紛らわすためにも本気で写真を学んでみよう」と一念発起し、70歳で大阪の写真教室に入った。プロの写真家に指導を受け腕を磨く傍ら、表現の幅を広げるため、画像編集の教室にも通った。
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その後全国規模の公募展にも出品するように。花の子どもたちが空へ次々と飛び立つさまをイメージした「旅立ち」では、2019年に日本写真作家協会(JPA)公募展で最優秀に次ぐ岡山県知事賞を受賞。22年には大阪と岡山で初の個展を開いた。
「『真実を写すのが写真』と言う人もいるけれど、私にとっては自分の心の中を表現する手段」と瓜生さん。現在もオンライン授業を受けながら写真の知識を深めており「絵本づくりにも挑戦してみたい。まだまだ夢はたくさん」と、85歳になっても創作意欲は尽きない。
「天球の帆布」は日本写真企画刊、3千円。個展は3月25〜30日、山陽新聞社さん太ギャラリー(岡山市北区柳町)で開く。
(まいどなニュース/山陽新聞)
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