『ダンまち』第5期完結が反響ーーベル・クラネル、最大で最後のクライマックスに向けた冒険へ

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2025年03月10日 08:00  リアルサウンド

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 大森藤ノのライトノベルを原作にしたTVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかV 豊穣の女神篇』が第15話「『初恋』(シル)」で完結した。美の女神フレイヤが主人公のベル・クラネルを自分のものにしようと本気を出し、強奪から激突へと至った中で発揮されたベルの強さには、彼が積み重ねてきた出会いや戦いの成果があった。TVアニメ第5期の完結を機に改めてシリーズを振り返り、これから何が起こるのかを探る。


参考:『ダンまち』3つのクライマックスはどこへ向かう? TVアニメ、小説本編、小説外伝……それぞれの壮絶な展開


 オラリオ最強を【ロキ・ファミリア】と争う【フレイヤ・ファミリア】。【猛者(おうじゃ)】の二つ名を持つLv.7のオッタルを筆頭に、都市最速のアレン・フローメルがいて、都市最大の魔力を持つヘディン・セルランドがいて、最凶の魔法剣士と呼ばれるヘグニ・ラグナールがいて、絶対の連携を誇るガリバー兄弟もいてと、幹部クラスにずらりとトップレベルの冒険者が居並ぶ。


 他にもフレイヤを崇拝する団員たちが大勢いて、ヘイズ・ベルベットら優れた治療師たちのチームもいる相手との壮絶な戦いが、TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかV 豊穣の女神篇』の後半にあたる「派閥大戦」の見どころだった。原作では第18巻に当たるエピソードで、とてつもなく熱い言葉によって紡がれていて、読む人たちを興奮の渦へと引きずり込んだ。


 第5期の前半で魅了の力で籠絡しようとして果たせず、戦争遊戯(ウォー・ゲーム)を仕掛けてベルを奪いに来たフレイヤと戦うことになった【ヘスティア・ファミリア】だったが、他の派閥も参加OKにして人数を揃えたものの、強すぎる【フレイヤ・ファミリア】によって瀬戸際まで追い詰められる。


 そこに疾風(かぜ)が吹いた。『ダンまち』シリーズでベルと何度も共闘してきたリュー・リオンが参戦して、敗北必至の流れを変える。TVアニメ第5期では第12話「継承」に登場したこのシーンに涙ぐんだ人も多いだろう。リューが前に所属していた【アストレア・ファミリア】を襲った悲劇。そこからリューがどのようにして生きてきたかが思い出されて、ようやく長い旅を終えたのだという感慨が湧き上がったからだ。


 原作の第18巻で同じシーンを読んだ人が抱いた思いも同様だっただろう。こうした過去の様々な経緯の帰結ともいえる展開が、TVアニメの第5期には幾つもあって感動に次ぐ感動を誘った。【ヘスティア・ファミリア】のリリルカ・アーデやヴェルフ・クロッゾやサンジョウノ・春姫、ベルがよく行く酒場「豊穣の女主人」で働くアーニャ・フローメルやシル・フローヴァといった、『ダンまち』シリーズの登場人物たちが積み上げてきたドラマが、それぞれにクライマックスを迎えたような感じだった。


 その最たるものが、フレイヤとベルの関係だ。英雄に憧れ、冒険者になりたいと思ってダンジョンがある都市オラリオにやって来たベルが、誰も信者がいなかった女神ヘスティアと知り合い、2人だけの【ヘスティア・ファミリア】を作って始まった『ダンまち』の物語。ベルがダンジョンでミノタウロスに襲われていたところを、【ロキ・ファミリア】に所属する少女剣士のアイズ・ヴァレンシュタインに助けられ、一目惚れしてしまったことで1本の筋が通る。アイズに憧れ追いつこうとするベルの成長と戦いのストーリーという筋だ。


 この筋は、巻が進んで最新の第20巻まで来ても変わらない。ベルの驚異的な成長の速さや決して屈しない強さには、アイズへの憧憬が背景としてあるため決して突き崩すことはできない。それが、誰をも魅了する力を持った美の女神フレイヤをもってしても同じだったことが、改めて強く示されたのがTVアニメ第5期だった。


 フレイヤは第1巻の段階ですでにベルを意識し、自分のものにしようとちょっかいを出し始めていた。その後も成長を促そうとしてモンスターをけしかけ、策略を使って追い詰めたりもした。ベルに手を出そうとした女神イシュタルが率いる【イシュタル・ファミリア】を【フレイヤ・ファミリア】総出で潰し、イシュタルを天界へと追い返した第7巻のあたりで、その執着が並々ならぬものだったことがくっきりと浮かび上がった。


 ベルが「異端児」と呼ばれる知性を持ったモンスターを救おうと孤軍奮闘するエピソードや、殺人者の容疑をかけられたリューの冤罪を晴らそうとして大冒険を繰り広げるエピソードを挟んで、フレイヤがいよいよ本気を出してベルを奪いに出たのがTVアニメの第5期だった。


 結果は第5期の最終回を見ての通り。ベルは「派閥大戦」に勝利し、フレイヤの恋を終わらせた。どのような窮地に置かれようとも、ベルが決して折れないことをフレイヤは感じていただろう。そんな気高くて純真なベルだからこそ惹かれたのだとしたら、最初から叶う恋ではなかったのかもしれない。そう考えると哀れだが、フレイヤが本性であり本心をさらけ出して救われるために避けられない失恋だった。


 もはやフレイヤとは呼べないくらいに変わってしまっても、他の派閥のベルに執着するフレイヤを主神として崇拝し続けた【フレイヤ・ファミリア】の団員たちだけに、オッタルを筆頭に誰も派閥を離れないところはさすがというか筋金入りというか。とはいえ【ロキ・ファミリア】と並ぶオラリオの最大戦力が宙ぶらりんのままで置かれ続けるはずはない。次のクライマックスに向けて動き始めた『ダンまち』という物語の中で、改めてその強さを見せる時がくるだろう。


 ベルについては第19巻で「学区」と呼ばれる学生たちが集う施設に紛れ込んで若い冒険者たちと知り合い、第20巻で世界を危機に陥れる可能性を持った凶暴な竜を相手に戦うという試練に挑む。一方で、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア』という外伝シリーズで、ベルが憧れるアイズを含む【ロキ・ファミリア】がとてつもない事態に巻き込まれる。


 シリーズでも最大級の激動がダンジョンの深層と都市の外で同時に進み始めている状況の中、ベルを希望と仰ぐ声は高まる一方だ。そこでベルが動けば【ヘスティア・ファミリア】も動き、ベルに感謝する【フレイア・ファミリア】の残党たちも再始動することだろう。オッタルやアレンやヘディンやヘイズといった第一級冒険者たちの強さや凄さが改めて発揮される場面に期待がかかる。TVアニメ第5期でトップ級のヒロインに躍り出たヘイズの活躍にも。


 アイズというヒロインをめぐってどのような謎が明かされるかも気になるところ。その果てにベルは求めた出会いを成就できるのか。タイトルに掲げられたその目標に向かって突き進むこれからの『ダンまち』は絶対に確実に面白い。


(タニグチリウイチ)



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