《男はゆっくり父親になる》夫の言い訳にイラっ、専門家が教える「夫と家事育児を分担する方法」とは

《男はゆっくり父親になる》

　この文言がX（旧ツイッター）上で話題を呼んでいる。

「子どもが産まれたにもかかわらず、父親の自覚を持てず、家事や育児の参加に消極的な男性が多いといいます。“あれをやって”と指示を出しても、腰が重い男性に頭を抱える女性は多いそう。中には“男はゆっくり父親になるから”と言い、家事や育児を女性に押し付ける男性もいるそうで、女性たちがX上で実体験を告白するなど、鬱憤の声が上がっています」（フリーライター）

　具体的には次のような声が上がっている。

《世間一般からするとだいぶ優しくて家庭的な夫なんだけど、子どもが産まれるまでもう1か月もないのに“実感わかないな”とか“男はゆっくり父親になるから”とか言われてさすがに萎える》

《男はゆっくり父親になるって言葉を見たけど、うちはゆっくり過ぎて子どもが成人しました》

《10か月かけてパートナーのお腹が膨らんでいく間、ゆっくり父親になるとか言う男はその間なにしてるんだ？》

《産まれるまでの10カ月で十分ゆっくり父親になれるのでは…？》

《男はゆっくり父親になる》は本当か

　このように、女性たちが頭を抱える《男はゆっくり父親になる》という文言について、NPO日本家族問題相談連盟理事長で夫婦問題研究家として活躍する岡野あつこさんに解説してもらった。

「女性は自分で子どもを産むので、子どもと一体感がありますし、どうしても早く母性に目覚めます。男性は自分で産むわけではないので、子どもとどう向き合っていいのかわからないのです。そうした意味で“男はゆっくり父親になる”というのは起こり得る現象といえます」

　岡野さんは、男性が育児に目覚めるのが遅い背景について、2つの要因を挙げる。

「ひとつはホルモンの違いです。女性は愛情ホルモンとも言われるオキシトシンが出産や授乳のタイミングで大量に分泌されます。これによって、子どもへの愛着が強まるのです。男性もオキシトシンが分泌されますが、女性ほどの量ではない上、育児に参加しなければホルモンの変化が起きにくいのです。

　男性は女性の育児行動を見て、子どもを“かわいい”と認識するようになり、子育てに参加するようになってから父親としての自覚を持つようになります。女性が愛情深い子育てをしていたら、男性も羨ましいという感情が芽生え、育児に参加したいと思うようになるでしょう。逆に女性が育児に消極的だったり、マイナスな捉え方だと、男性は子育てから逃げ出したくなってしまうのです」

自分の父親が家事をしていなかった

　ふたつめの理由は、心理的な要因だという。

「今は男女平等、家事育児の分担という考え方が一般化してきましたが、最近まで日本では性別分業により、社会的役割が分かれていました。今の子育て世代は、男は仕事、女は家事といった価値観の家庭で育った人も多いのではないでしょうか。自分の父親が家事をしていなかった場合、母親が家事育児を担うのが当然だと思い込んでしまいます。父親が家事育児に参入するという見本がないので、どう育児に参入していいのか分からない上、無意識的に家事育児は母親がやるものと決めつけている節があります。こうした理由から“男は家事育児ができない”と思い込んでいる男性も多いのです」

　ただ、子どもが産まれた瞬間から育児は始まる。ただでさえ夫婦共働きの家庭が増えている中、男性がゆっくりと父親になるのでは、母親になる女性の負担が大きすぎるだろう。男性がなるべく早く育児に参加するために必要なことは、“強制はせず、レールを敷いてあげること”だと岡野さんは続ける。

具体的な案を出してレールを敷いてあげる

「男性は“とにかく育児に参加しろ”と言われても、どう参加していいのか分からないことが大半です。ですから、“こういう風に参加してほしい”“こういうことを手伝ってほしい”と具体的な案を出して、レールを敷いてあげる必要があります。この場合、男性が育児にすぐ飽きてしまわないよう、楽しいことから経験させるのが得策でしょう。

　女性は子どもができると嬉しさと責任が相まって、どんどん自分の世界へ入り込んでしまう傾向があります。そうなると、男性にとって育児が他人事になってしまうのです。子どもが産まれる前から“楽しみだね”と話題を振るなどして、子育ての輪に入れることも必要です」

　今、子育てに悩む女性も、これから子育てに臨む女性も、ぜひ実践してみては――。