宇宙スタートアップのダイモン(東京都中央区)は3月8日、月面探査車「YAOKI」が月面からの撮影に成功したと発表した。横転したとみられる月着陸船から離脱できなかったものの、YAOKIが月面でも正常に作動することは確認できた。
YAOKIは、米Intuitive Machinesの月着陸機「Nova-C」(通称:アテナ)に搭載され、月の南極点から約160km離れたMons Mouton(モンス・ムートン)と呼ばれるエリアを目指していた。アテナは3月7日の午前2時30分に月面への軟着陸に成功。しかし「姿勢が予定通りではない」ことから太陽光発電ができない状態だった。
アテナのバッテリー駆動時間が限られることから、Intuitive Machinesは各ペイロード(貨物、ここでは搭載された月面ローバーなどを指す)に短時間で各ミッションを実行することを指示し、YAOKIも7日の午前2時17分51秒(世界標準時)に運用を始めた。本来は、月面着陸から5日後にアテナを離れて活動する計画だった。
●ケース内部で車輪の回転も確認
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アテナからの電力供給ができず、YAOKIは「デプロイヤー」と呼ばれる格納ケースから分離できなかった。ただしケース内でYAOKIの車輪を回転させることに成功した他、写真撮影とデータ送信を完了した。
写真データの受信時間は75秒と「リアルタイムに近い送信速度」。パケットロスもなくクリアなデータを受信できた。さらに、YAOKIは内部温度や重心といったデータも正常に送り続けた。
ダイモンによると、最後のコマンドを送信した同日午前4時32分30秒まで、YAOKIは2時間以上にわたって貴重なデータを送信してきたという。最終コマンドを送った時点でYAOKIのバッテリーはまだ4時間以上駆動できる残量があった。
ダイモンの中島紳一郎代表は「YAOKIは月のクレーターの中で倒れた状態でも元気に機能し、“七転びYAOKI”を文字通り実現できたことを誇りに思う」としている。
YAOKIは、重量わずか約498gという小型ロボット。従来の月面ローバーに比べて低コストで製造できることから、民間企業の宇宙進出やアルテミス計画によって活躍の機会が増えるとみられている。ダイモンは今後100台のYAOKIを月面に送る計画を立ててている。
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