弥生賞ディープインパクト記念を制したファウストラーゼン(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返る弥生賞ディープインパクト記念
【Pick Up】ファウストラーゼン:1着
父モズアスコットは、芝の安田記念、ダートのフェブラリーSという、異なるサーフェイスのマイルGIを制覇した二刀流の名馬。その父フランケルは今世紀最強の芝マイラーで、イギリスで14戦全勝の成績を残し、種牡馬としても成功しています。
3歳を迎えたモズアスコットの初年度産駒は、現時点で芝9勝、ダート6勝という成績。ただ、連対率はダートが上なので、配合次第でどちらに向いた産駒も出せるタイプです。
ファウストラーゼンの他に、モズナナスター(ファンタジーS2着)、リリーフィールド(もみじS)、メリディアンスター(札幌芝1500mの新馬戦をレコード勝ち)などが出ており、地方競馬では鎌倉記念を大差で圧勝したベアバッキューン(通算4戦全勝で1戦あたりの平均着差は約9馬身。骨折休養中)が注目株です。
ファウストラーゼンの母ペイシャフェリスは、現役時代に芝でオープンクラスまで出世しました。3歳春に芝1600mのアネモネSを勝っています。本馬を含めて出走を果たした産駒は4頭中3頭が勝ち上がっています。2代母プレザントケイプの半弟にルー賞(仏G3・芝2500m)を勝ったゲイトウッドがいます。
ファウストラーゼンは「モズアスコット×スペシャルウィーク」。ミスティアワー≒マルゼンスキー3×4という相似な血のクロスが生じるので注目したい組み合わせです。
また、Sadler's Wells 4×5も併せ持つので、スピードの持続力とスタミナに秀でたタイプでしょう。中山の長丁場が合いそうです。
◆血統で振り返るフィリーズレビュー
【Pick Up】ショウナンザナドゥ:1着
父キズナは、4歳世代に続いて3歳世代も好調を維持しており、種牡馬別のJRA賞金獲得額、勝利数は、2世代続けて双方首位となっています。繁殖牝馬の質と頭数が4歳世代から劇的に上昇したことが好調の要因です。3歳世代のキズナ産駒は、これで重賞勝ち馬が6頭目となりました。
ストームキャットのクロスを持つキズナ産駒は成功しており、連対率27.0%、1走あたりの賞金額261万円。キズナ産駒全体の成績(連対率20.1%、1走あたり232万円)を上回っています。
このクロスを持つキズナ産駒は、芝31勝、ダート28勝と、芝がやや優勢ですが、勝率、連対率、複勝率というアベレージ面では、ダートが芝を上回っています。
性別によって特長に違いがあるのも目を惹きます。牡は芝10勝、ダート23勝。一方、牝は芝21勝、ダート5勝という成績です。牡はハピやモンブランミノルのようなダート馬が、牝はショウナンザナドゥ、ミストレス、グランベルナデットのような芝馬がスタンダードです。
ショウナンザナドゥの母ミスエーニョは、アメリカでダート7ハロンのG1を勝ちました。「プルピット×ヘネシー」という組み合わせなので、ダートテイストが強めですが、芝向きの種牡馬と交配すると芝馬を出すところが非凡で、すでにファンタジーSを勝ったミスエルテ(父フランケル)、フラワーCを勝ったミアネーロ(父ドゥラメンテ)を産んでいます。3頭の重賞勝ち馬を出したわけですから文句なしの名繁殖牝馬です。孫以降の代にも大きな期待が掛けられます。
ショウナンザナドゥは、減少傾向にあった馬体重が前走から10kg増えました。暖かくなって調子も上向いてきたようです。