※写真はイメージです。 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、他人の予想外の行動に恐怖と憤りを感じたという2人のエピソードを紹介する。
◆足に体重をかけてくる女性
「ムカつく気持ちを通り越して、恐怖を感じました」
原田裕子さん(仮名・30代)は高校時代、1時間ほどかけて電車通学をしていた。ある日の帰り道、疲れて座っていると、思いもよらない出来事に遭遇したという。
「たまたま空いていた端の席に座りました。ウトウトしていると、ある女性が私の目の前に立ったんです」
「“老人”と呼ぶには若い雰囲気だった」ことや、原田さんは部活でかなり疲れていたため、そのまま座っていたという。すると、女性が原田さんの足に体重をかけ、もたれかかってきたそうだ。
「そのときは何が起こったのか全くわからず、パニックになりました。女性の顔をチラッと見ると無表情で……」
女性が何を考えているのかわからず、恐怖で身動きがとれなくなった原田さん。最寄り駅まで、ただひたすらに“寝たふり”をしようと決めた。
「今だったらすぐにその場を離れますが、そのときは恐ろしい気持ちが大きくて、立ち上がることができませんでした」
寄りかかってきた当初は無言だった女性だが、次第に小言を言い始めたのだとか。
「座りたい」
「学生のくせに座っている」
「早くどけよ」
◆恐怖で「早く帰りたい」と泣きそうに…
原田さんは、「早く家に帰りたい」と泣きそうになった。
次の駅に電車が到着すると、制服姿の学生たちが大声で笑いながら乗車してきたそうだ。その声に圧倒されたのか、原田さんに寄りかかっていた女性は黙り込んだ。
「それからしばらく経つと、『危険信号を受信したため、急停車しますのでご注意ください』とアナウンスがあり、直後に電車が急停車したんです」
その瞬間、その女性がバランスを崩して飛ばされてしまったという。
「女性は、『わあわあ』とわめいていましたが、まわりの乗客は誰も見ないようにしていましたね。そして、私に寄りかかっていた女性を見ていた学生たちが、その間にスッと私の前に立ってくれたんです。助かりました。相手の女性はブツブツと言いながら電車を降りていきました」
原田さんはその後、無事に目的地に着いた。助けてくれた学生にお礼を言って電車を降りたそうだ。
◆隣の席の男性が酒を飲んで爆睡
愛知県内の大学に通っていた戸塚賢太郎さん(仮名・20代)は、地元の長野県で就職をするため、愛知県と長野県を往復する生活を送っていた。
「特急でも移動に3時間ほどかかるので、その間に小説を読もうと考えていました」
戸塚さんは就職活動がうまくいっておらず、現実逃避をしたい気持ちで読書に没頭したかったという。
次の停車駅で50代ほどのサラリーマンらしき人が、隣の席に乗ってきたそうだ。
「その男性は席に座って1分も経たないうちに、缶ビールを飲み始めました。お酒の匂いが充満して、読書をする気がどんどんなくなってしまいました」
そして、3本くらい飲んだ後あたりから、その男性は気持ちよさそうに寝てしまったという。
◆小説の続きはNetflixで知った
「いびきもかいていて、『こっちは明日、会社の面接とSPI試験があるのに……』と思いながら、イライラがMAXの状態でしたね。この状態では、小説の内容が頭に入ってこないので、4分の1くらいで読むのをやめました」
男性が途中駅で降りたらその後ゆっくりできると思っていたが、その願いは叶わず、約2時間半をこの状態で耐えた。
「結局、男性は長野駅の手前で降りました。指定席だったので席を移動することができなかったんです。電車内では全然くつろげませんでした」
戸塚さんが就職活動のために愛知県と長野県を往復したのは10回ほど。この日以降、電車内で読書をする気持ちが失せてしまったようだ。
「缶ビールを飲むのも、寝るのも自由なんですが、隣に座られるとさすがに気になりますよね……」
結局、小説の続きはNetflixの映画版で知ることになったという。
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
―[乗り物で腹が立った話]―
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。