東京都足立区の病院で2016年、手術直後の女性患者の胸をなめたとして準強制わいせつ罪に問われた医師、関根進被告(49)の差し戻し控訴審判決で、東京高裁は12日、無罪とした1審・東京地裁判決(19年2月)を支持し、検察側の控訴を棄却した。斉藤啓昭裁判長は、女性が麻酔の影響で幻覚が生じる「せん妄」の影響を受けた可能性があると判断した。
医師は16年5月、女性の右乳腺腫瘍を摘出する手術をし、直後にベッドで寝ていた女性の左胸をなめたとされていた。捜査段階の鑑定で、女性の左胸から医師のDNA型が検出された。
1審判決は、女性にせん妄があった可能性を認めて無罪としたが、2審・東京高裁判決(20年7月)は、せん妄の可能性を否定し、医師を懲役2年の実刑とする逆転有罪を言い渡した。これに対し、最高裁判決(22年2月)は、せん妄の可能性を認めた上で、検出されたDNAの量に対する検討が不十分だとして審理を差し戻していた。
差し戻し控訴審判決は、麻酔後の患者が、せん妄状態に陥る報告が複数の論文でされているといった専門的知見を踏まえれば、「せん妄の可能性を排斥できない」と認定した。
検察側は女性の胸から多量のDNAが検出されたとして医師が胸をなめたと主張したが、判決は、DNA量に関する検査の正確性は保証できない上、会話中の医師の唾液の飛沫(ひまつ)が付着した可能性も否定できないと指摘。医師が胸をなめたと断定できる根拠はないと結論づけた。
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判決後、記者会見した関根医師は「一方の言い分を過剰に信じ、客観的な見方ができない警察と検察に強く憤りを感じる」と述べ、弁護人の高野隆弁護士は「起訴から8年余りで、遅すぎる無罪判決だ」と批判した。【飯田憲】
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