旗手怜央が今季実践しているコンディショニング「試合後にウェイトトレーニングを行なっている」

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2025年03月13日 07:20  webスポルティーバ

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旗手怜央の欧州フットボール日記 第35回

 昨季は度重なるケガで戦列を離れることが多かった旗手怜央。しかし、今季はここまで好調を維持し、出場時間はすでに昨季の3倍近い数字になっている。昨シーズンの反省を踏まえ、今シーズン実践しているコンディショニングを教えてもらった。

前編「旗手怜央が振り返るCLバイエルンとの2連戦」>>

【試合後にエネルギー補給】

 シーズンも終盤に近づいてきた今、改めて「回復」と「準備」の重要性が身に染みている。

 大会のフォーマットが変わったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、プレーオフでバイエルンに敗れるまで、セルティックは10試合を戦った。自分は、そのうち9試合に先発出場して5試合にフル出場した。今シーズンも残りわずかになったが、CLや国内のカップ戦も含めてすでに46試合、出場時間で見ると3155分になる。

 昨季は度重なるケガで戦列を離れる機会も多く、出場した試合数は21試合、出場時間も1288分だった。今季の試合数はすでに倍を超え、出場時間も3倍近い数字に迫ろうとしている。

 シーズンが開幕してからここまで、中2日、中3日での連戦が続いていたが、そうしたハードスケジュールにおいても、ケガなく戦うことができているのは、「回復」と「準備」のふたつを怠らずに続けてきた結果だと自負している。

 大袈裟に言えば、試合終了の笛が鳴った瞬間から、次の試合に向けた準備はスタートしている。

 昨季、ケガを繰り返したことを受け、試合を終えたあとはエネルギーが枯渇しているため、力の源になるものを摂取するようにしている。

 試合後、セルティックのロッカールームには、さまざまな食べ物が用意されているが、まずはエネルギーを補給すべく、自分はバナナを食べるようにしている。また、ドーナツも置いてあるので、あまりにエネルギーがなくなっていると感じた時には、ドーナツに手を伸ばすこともある。

 食べるタイミングは、試合が終わりロッカーに戻ってすぐ。監督が試合の総括をするまで少し時間があるので、それまでに食べるようにしている。

【試合後のウェイトトレーニングも取り入れる】

 さらに監督の話が終わったあとは、上半身と下半身のウェイトトレーニングも行なっている。それも今季から取り入れ始めた新たな試みだ。

 もちろん試合後のため、負荷は掛けすぎないようにしているが、それも次の試合や、長いシーズンを戦い抜くための必要なトレーニングであり、準備だと思っている。

 試合で疲労したあとに、なぜウェイトトレーニングをしているのか、疑問に思う人もいるだろう。週1回、週末に試合があるだけのスケジュールならば、身体を作るウェイトトレーニングは、週の前半や週の半ばに行なうことも可能だ。

 しかし、中2日、中3日で連戦が続くスケジュールにおいては、試合翌日はリカバーに当てなければならない。そうなると、翌々日は試合前日だったり、試合前々日だったりする。そこで身体に負荷をかけすぎてしまうと反動もあるため、ウェイトトレーニングをするのは難しい。

 要するに本番である試合でのコンディションを考えると、ケガをしないための、また身体を作るためのウェイトトレーニングをするタイミングがなくなってしまうのだ。だから、特にスピード、アジリティ(敏捷性)を意識したトレーニングは、試合が終わった直後に行なうのが有益だったりする。

 試合後は疲労困憊だけに、そこでウェイトトレーニングをやるのは、正直、かなりしんどい(苦笑)。だけど、自分が成長するために、また強くなるために、さらにはケガをせずに戦い抜くために必要なことだと言い聞かせながら、取り組んでいる。

 チームメートを見渡しても、先発出場した選手のなかで、試合後にウェイトトレーニングをしている選手はまず見かけない(笑)。でも、今ではチームも理解してくれていて、ホームはもちろん、アウェーでも道具を用意してくれている。その積み重ねが46試合出場という数字にもつながっていると思っている。

【交代浴もルーティンに】

 試合後に行なっているルーティンとしては、アイスバスもそのひとつだろう。それこそアウェーでの試合や移動時間が長い時はあきらめることもあるが、スタジアムからクラブハウスに戻った時には、必ず交代浴を行なってアイスバスに浸かるようにしている。

 その効果はすでに広く知られているように、筋肉の炎症を軽減したり、血液の循環をよくしたりするためだ。これもセルティックのチームメートを見ると、やっている選手もいれば、全くやらない選手もいるため、人それぞれだと思うが、自分には必要だと感じて取り入れている。

 何より自分も、大学生の時や川崎フロンターレでプレーしていた時は、それほど頻繁にやるタイプではなかったけど、ヨーロッパでプレーするようになり、さらには昨季ケガを繰り返したことで、交代浴の必要性を再認識した。今では、だいたい時間も決まっていて、自分は2分刻み。スマートフォンのストップウオッチで時間を計りながら、交代浴を実施して疲労が溜まっている時は5セットほど行なっている。

 その日の疲れは、その日のうちに。テレビCMのキャッチコピーじゃないけど、身体に疲労や張りを感じるのであれば、交代浴やフォームローラーで自ら身体のケアを行ない、状態を確認している。結局、その毎日の積み重ねが、コンディションの維持につながる。

 今季は、筋肉を伸ばしたり、ほぐしたりするのではなく、股関節をはじめとする関節の可動域を広げることに重きを置いた。以前は頻繁にストレッチを行なっていたが、今季はそうした習慣もなくなった。その結果、チームにはトレーナーも在籍しているが、今季はほとんど診てもらうことなく、シーズンを送れている。

 試合前日は交代浴やストレッチもほぼしていない。筋肉がほぐれすぎてしまうと、ケガにつながる可能性もあると判断しての結果だ。

【身体の充実は精神の充実にもつながる】

 トレーニング以外では、やはり食事と睡眠だろう。食事については、シェフにお願いして、献立を用意してもらっているが、試合後は前述したようにエネルギーを補給するために炭水化物を摂取するようにしている。個人的に、試合後はお米が食べられないタイプなので、米粉の麺やパスタを用意してもらうなど、工夫してもらっている。

 ちなみに、たまのご褒美としては、チョコレートを食べる時もある。実は甘い物は大好物。シーズン中は身体に影響が出るかもしれないからといって、すべてを断ちきってしまうと、それがストレスになりかねない。ストレスは身体に表れることもあるだけに、気分転換やリフレッシュもかねて、妻が食べるタイミングで一緒に軽くつまむ時もある。そうした心のゆとりや余裕も、今季のプレーに影響しているのかもしれない。

 ただ、今綴った内容もこれが完成形ではないように、これからもそのときどきで身体との向き合い方は変わっていくだろう。大事なのは、自分の身体を知り、自分に何が合うか、何が最適かを知ることだ。

 今季開幕したばかりのころは、昨季ケガを繰り返した事実に、不安が頭を過ることもあった。だが、それも新たな習慣によって、自分のコンディションが維持されるようになってからは不安も消え、思いきりプレーできるようになった。

 自分のプレーに自信を持って戦えている今季は、ピッチに立てば、それを体現できると自負している。準備とは、その自信を後押ししてくれるベースと言えるだろう。

 誰かと比べるのではなく、自分自身に言い聞かせることができる。

「自分はこの試合に向けて、これだけ回復して、これだけ準備してきた」

 ピッチの上で、全力を尽くすための安定剤のようなものだと思っている。身体の充実は、精神の充実にもつながる。心身が安定しているからこそ、ピッチで躍動することができる。

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