お笑い芸人として多忙な日々をお送りながら、二児の父として子育てに真摯に向き合うチャンカワイ氏。そんな彼が「子育てで困ったときに助けてくれる、まるで心の救急箱のような本」だと推薦するのが、ベストセラーとなっている『こどもロジカル思考 なぜ論理的に考えることが大切なのかがわかる本』(著者 茂木秀昭 監 バウンド 著/カンゼン)だ。
異文化コミュニケーションを専門とする茂木秀昭氏が監修した本書は、カラフルな図解と具体的な事例を交えながら、近年注目されている自分の頭で論理的に考える「ロジカル思考」の基礎がわかりやすく解説されている。
この本では、ものごとを整理し、筋道を立てて考える「ロジカル思考」の大切さを豊富な図解やイラストでわかりやすく解説してくれる。これからの時代を生き抜くために欠かせない思考法を、子どもたちに対してどのように伝えていくといいのだろう。チャンカワイ氏に本書の推薦コメントとご自身の子育てについて話を聞いた。(篠原諄也)
ーー『こどもロジカル思考 なぜ論理的に考えることが大切なのかがわかる本』を読んだ感想を教えてください。
チャン:てっきり大人向けなのかなと思うぐらい、刺さる内容でした。ロジカル思考という難しい内容を子どものレベルにまで下げてわかりやすく説明してくれています。たとえば、お小遣いの金額をあげてほしいときの交渉術が取り上げられていました。ただうちの子どもは今8歳と6歳なので、もう少ししたら一緒に試してみたいと思える内容がたくさんあります。
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ーーお子さんにはこの本をどのようなタイミングで渡しますか。
チャン:今は「何でも楽しい」という段階なんです。習い事も楽しいからやっている。それだけで突き進めたらいいんですけど、やっぱりどこかで壁にぶつかることがあるはずなんですよね。オリンピック選手やミュージシャンなど、特別な才能を持つ一部の人々は、楽しいだけで奇跡を起こせちゃうこともあるかもしれない。でもそうじゃなくて、努力型で夢を掴んでいる人には、ロジカル思考が必要です。どこかで挫折を味わったときに、必ず武器になるはずです。だから我が子には「楽しい」だけでは通用しなくなったときに、渡したいかなと思います。そこでお守りのようにこの本を持っていてくれたら、と思います。
ーーチャンさんはお子さんを叱るときに疑問系で質問をするようにしているそうですが、それは本書にもあるロジカル思考と通じるように思いました。
チャン:何かを「ダメだよ」と言うとき、それが「なぜダメなのか」を理解するのが大切なんです。なぜ、お父さんは怒っているのか。それを理解してもらうために、今の状況をどう思っているのかを聞きます。それでもよくわかっていないようだったら「あなたがご飯をこぼしちゃったからでしょう」「みんなのお菓子を食べちゃったからでしょう」などと言いますね。そういう会話のキャッチボールをするためにも、クエスチョンは大事だと思っています。
ーーこの本を読んでみて、改めてなぜロジカル思考は大事だと思いましたか。
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チャン:世の中には残念ながら、感情だけで動くような人もいますよね。はたから見ていると何をやりたいのかよくわからず、理不尽なことを押し付けてくるような人もいます。そういう人たちを相手にしなきゃいけないときには、せめて説明上手じゃなきゃいけない。そこでどのように順序立てて物事を捉えるのか。それを考えるときには、もうロジカル思考以外にありません。生きるためにすごく大切なことだと思います。
ーーチャンさんご自身、ロジカル思考を実践されてきましたか。
チャン:僕はお笑い芸人としての最初の10年間は、全然売れなかったんです。当時は「人は何を楽しいと思うのか」を必死に考えるしかなくて。事務所に入った勢いでそのままうまくいくかと思いきや、自分のセンスだけで笑ってもらうというのは、到底無理でした。今、何がウケているのか、誰がどのように言うと笑ってもらえるのか。自分に合う設定や言葉とはどのようなものか……。そういうことを、相方とずっと試行錯誤していましたね。
ーーまさにこの本に書かれているようなロジカル思考を実際にやられていたと。
チャン:芸人全員、やってるんじゃないかと思います。芸人さんのほとんどはクラスの人気者で、自分のセンスと発想だけで笑いを取れていたはずなんです。でも、お笑い芸人として世に出たときに、同じトーンでやっても、全然笑ってもらえないという壁にぶつかります。「そうか、ふざけたらすぐ笑ってくれるのは、クラスメイトだけなんだ」と思う。身内にウケることと世間一般にウケる壁を感じるはずです。その転換点の際に必要な思考というのは、ロジカル思考しかないと思うんです。
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ーーこの本にはロジカル思考をするための方法がいくつも掲載されていますが、特に印象に残ったものはありましたか。
チャン:「悩んだときはロジカル思考が役立つ1・2」はとても参考になりました。何か問題が発生したとき、その原因を細かく考えていくことが重要ですよね。そして悩んでも解決できないことは、悩む必要がないと書かれている。
僕は街頭インタビューの仕事が多いんです。そこでは、テーマに沿ったことをちゃんと言ってくれる人、テーマとは関係のないことを言う人.など、いろんな人がいます。それを全部受け入れた上で、放送に使える素材を集めなきゃいけません。「この人の意見はどうやったら放送に使ってもらえるかな」と考えるときに、ロジカル思考は必要だと思っています。
テレビの世界ではチームワークが重要です。たとえばカメラマンさんが演者にぐっと寄ってくるときに求められているコメントを言えるか。それを見たディレクターさんが「いい画が撮れました」と言ってくれたとします。その言葉を聞いてカメラマンと演者がお互いニヤリと笑う。そういうときにはそれぞれのポジションでのロジカル思考がとても重要なんですよね。そういう意味でも「悩んだときはロジカル思考が役立つ1・2」はとても響きました。
ーー他に印象に残ったテーマはありましたか。
チャン:「自分のなかに考え方のクセがあることを知ろう」は面白かったです。タイトルの「クセ」っていう言い方が素敵だと思ったんです。僕はこれはデメリットというよりも、愛してあげるべきクセだと思うんです。人は誰しも喋り方や動き方などのクセを持っている。それをポジティブに捉えることで、世の中に活かすことができる。その自分のクセを知るための方法がめちゃくちゃわかりやすく書いてくれていて勉強になりました。
特にお笑いやタレントの世界はクセ者だらけですから(笑)。でもいいところは、そういうマイナスだと思われがちな部分もみなさん愛して自分だけの武器となっている。自分に嫌だなと思ったクセがあると気づいても、マイナスに捉えるんじゃなくて、むしろポジティブに利用できる世界があるんだということを知ってほしいです。どんな嫌な部分でも笑えるネタとして受け入れることが大事だと思うんです。
ーー子どもたちにロジカル思考を教えるのにいい方法はあるでしょうか。
チャン:大谷翔平さんが実践していたマンダラチャートがいいと思っています。縦横のマス目の真ん中に自分の目標を書きます。その達成のための細かい点を周りに埋めていく。そしてさらに細かく周りを埋めるということをするんです。真ん中の夢は、高校時代の大谷選手の場合は「ドラフトで指名がある」ということでしたけど、私の場合は「レギュラー番組を何本持つか」「年収をいくらにするか」といったことですね。真ん中の夢は漠然としていていいんですが、周りを埋めることによって、具体化していく。子どもたちには「そのように考えていくのがロジカル思考ですよ」と言ってあげたいです。「だから行動に移そうよ」と言うことができると思いました。
ーーこの本は子どもたちだけでなく、親も一緒に学べるような内容になっていますね。
チャン:親が100人いたら100通りの教育の仕方があると思っています。だからまず親がロジカル思考を理解することが大事ではないでしょうか。この本はとてもわかりやすく書いてあるので、ロジカル思考が何かがよくわかると思います。それに子どもたちはそういった読書をしている親の姿を見ることで伝わるものがある。そんな親子への良い影響を与える架け橋のような存在の本だと思います。
ーーたしかに親が読書をしていたり勉強している姿をみることは子どもたちに「勉強しなさい」と言うよりも自発的に取り組む良い効果がありそうですね。
チャン:テレビで得た知識なんですけど、東大や京大を卒業したような両親を持つ子どもが賢くなるのは、小さい頃から訂正をされまくるかららしいんですね。言葉遣い、物事の考え方、効率のいい勉強法などを、その都度説明を受けて、それに応えている。そういう意味でも、子どもたちに押し付けるのではなく、親が自ら楽しんで学ぶことは大切だと思います。そして親が頭の中で思考を整理できていればこそ、子どもにもちゃんと大切なことを伝えることができると思います。
ーー最後に本書に関連して一言メッセージをお願いします。
チャン:僕は子どもが生まれたときの一番の不安が、自分は本当に父親になれるのか、ということでした。子どもが成長するのと同じように、親も同じ1年生から始まっていくんですよね。最初はどうやって向き合ったらいいんだろうという不安がありました。でもこの本には、子どもと向き合うときの思考法を学ぶことができました。親として不安を感じている人にとっては、まるで心の救急箱のような困ったときに助けてくれる最高の一冊だと思います。
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