【MLB】大谷翔平が日本凱旋で放った輝きにチームメイトは「ビーストのような存在」「歴史上最高の選手」

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2025年03月22日 10:20  webスポルティーバ

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 ナ・リーグ設立5年前の1871年に結成されたシカゴ・カブス(当時はホワイトストッキングス)と、1883年に創設されたロサンゼルス・ドジャース(当時はニューヨークのブルックリンが本拠地)。

 MLBでも屈指の歴史と人気を誇る両球団が来日して3月18、19日に行なわれた今季開幕戦の「東京シリーズ」は、空前の盛り上がりを見せた。東京ドームではドジャーブルーに身を包んだファンが多くを占め、東京の街中では「LA」のロゴが刻まれたキャップをかぶる少年も多く見られ、試合は選手層の差を見せつけたドジャースの2連勝に終わった。

【求められた場面で打てる男】

 取材者として東京シリーズで楽しみにしていたひとつが、NPBにはない試合前会見だ。両チームの選手や監督が日米の記者の質問に対し、ユーモアをまじえて豊かな表現力で答えていく。

 19日の第2戦前、アメリカ人記者が両監督に同じ質問を投げかけた。両球団ともに由緒ある球団だが、現在、なぜドジャースだけが突出した球団になっているのだろうか、と。

 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が答えたのは、東京シリーズの"顔"となった男の存在だった。

「全体的に見れば、歴史を紡いできた球団はほかにもいくつかあると思う。野球では、どうやって強くなっていくかは波のあることだ。ドジャースとしては、今の最高潮を維持していければいい。しかし、ほかの日本人選手たちに失礼なことを言うつもりはないが、ショウヘイの存在がすごく大きい。ショウヘイはこの(質問を解く)方程式において、まさにビースト(獣)のような存在だ」

 15、16日の巨人、阪神とのプレシーズンマッチを含め、プラチナチケットを手にした4万2000人超の大観衆が連日詰めかけたなか、ドジャースのユニフォーム姿のファンを多く目にした。感覚的にはそのほとんどが背番号17で、ほかの選手のユニフォームを目にするのは珍しいくらいだった。

 1番DH大谷翔平──。

 その打席を心待ちにするファンの期待に、大谷は見事に応えた。15日の巨人戦では2023年ワールド・ベースボール・クラシックを日本代表でともに戦った戸郷翔征から第2打席、低めのカーブを捉えてライトスタンド中段にツーラン。バットの先で持っていき、メジャー最高峰のパワーを見せつけた。

「ファンが求めているところでしっかり結果を残せるのが、ショウヘイの優秀なところだと思う」

 今季サンフランシスコ・ジャイアンツから加入し、日本での全4試合に7番でスタメン出場したマイケル・コンフォルトはそう話した。

「スプリングトレーニングの初打席でもしっかりホームランを打っているし、ファンが求めているところで結果を残せるのはすばらしいね。しっかり練習するし、努力を積み重ねている結果だと思う」

 日本に凱旋し、ホームランを待ち望む大観衆の前で大きな一発を放つ。東京ドームに「カン」と鋭く響いた打球音の直後、「ウォオオオオ」というどよめきが360度から湧き上がった。球場に野球を見に来て、これ以上の幸せは感じられないような瞬間だった。

【東京シリーズへの特別な思い】

 巨人戦前日の14日、プロ野球では極めて珍しい有料公開練習が行なわれると、約1万人のファンが東京ドームに駆けつけた。大谷がグラウンドに現れた瞬間、大歓声が起こる。練習姿だけで大観衆を魅了できる選手がいることに、スーパースターの価値を実感した。

 日々ともに戦うロバーツ監督も、あらためて大谷の大きさを感じたひとりだった。

「去年1年間で翔平の人気の高さはドジャー・スタジアムで感じられたけど、今回日本で見て、またひとつランクアップしたような印象を受けた」

 チームメイトとして同じフィールドに立ち、ともにチャンピオンリングを目指す選手はどう感じているのか。ショートのミゲル・ロハスはこう話した。

「ショウヘイと毎日時間をすごすたび、野球選手としてだけではなく、性格的にもクラブハウスのなかでリーダーとしての姿を見せてくれる。何度も言うが、ショウヘイは歴史上最高の選手だと思う」

 18日、いよいよ迎えた東京シリーズ開幕戦。プレーボールの直後、カブスの開幕投手・今永昇太との日本人対決がいきなり実現。対峙するプレッシャーを今永はこう明かした。

「鋭いスイングでした。1番バッターで彼のような打者がいることは、自分にとってものすごくタフだなと思います」

 対して、大谷は打席で珍しい感情に包まれていた。

「あまりバッティングに関して緊張することは普段ないんですけど、珍しく緊張しているなという感じがちらつく場面はあったので。フォアボールだけはいらないなっていう感じで、ちょっと思い切り行きすぎているなっていう感覚はありましたけど。それ以降の打席でしっかりと冷静に対処できたのかなと思います」

 どんな大舞台でも冷静沈着な大谷だが、東京シリーズ開幕戦の重圧を感じていた。

 だが、2打数無安打で迎えた5回表の第3打席。2ストライクから外角高めのボールゾーンに外れたナックルカーブを振り抜くと、鋭い当たりをライト前に弾き返した。

 さらに9回の第5打席では、2ボール、2ストライクから真ん中低めのスライダーに泳がされながらもライト線二塁打。高い技術を披露し、打者・大谷の凄みを凝縮した一打だった。

【ショウヘイが何をやっても驚かない】

 そして19日の第2戦。世界中のファンが待ち望むシーンが、5回の第3打席で訪れる。2ボール、2ストライクから真ん中低めに投じられた159キロのフォーシームを振り抜くと、「カン」という鋭い打球音を残して右中間スタンドにグングン伸びていく。

 ホームランと思われた当たりに最前列のファンが手を伸ばし、打球が右中間に落ちた直後、カブスのクレイグ・カウンセル監督はチャレンジを申告。一瞬の静寂ができた後、判定でホームランと認められると、大きな拍手と大歓声が再び起こるオマケ付きだった。

 重圧のかかるなか、ファンの期待に見事応えた大谷の姿をロバーツ監督はどう見ていたのか。

「驚いてはいない。ショウヘイが何をやっても、私は驚かない。今晩、球場の誰もがショウヘイのパフォーマンスを見に来た。彼はいつも結果を出してくれる。東京ドームでホームランを打ったのはみんなにとって、そして彼にとってもすばらしい瞬間だった」

 今回の東京シリーズではムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンが体調不良で急遽欠場となり、1番・大谷がMVPトリオの看板を一身で背負った。我が道を行く二刀流、MLB史上初のシーズン50本塁打&50盗塁という偉業を達成した男は、東京ドームに架けたアーチでまたひとつ伝説をつくった。

 豊かな表現力で大谷の魅力を語ってきたロバーツ監督は19日の会見終盤、最後の質問に答えた。

「ショウヘイは我々全員と同じように、毎朝パンツを履いて準備する。でも、もしスーパーヒーローがいるとしたら、ショウヘイが一番近い存在なのかもしれない。大事な試合、大事な場面で、彼はいつも結果を出してくれる」

 2025年3月18・19日に開催された、カブス対ドジャースの歴史的な東京シリーズ。類を見ないスーパーヒーローが、世界中のファンに野球の魅力を堪能させてくれた。

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