ブラウザも「マインドフルネス」で選ぶ時代? “集中力”にアプローチする「Opera Air」を試す

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2025年03月25日 14:21  ITmedia NEWS

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 昨今、ブラウザのシェアの話があまり出なくなっている。米MicrosoftがWindows10と合わせて「Edge」をリリースしたのはもう10年前のことで、当時はシェア争いの話がメイントピックだったが、今はどちらかというとGoogle Chromeの寡占が問題となっている。


【画像を見る】老舗のブラウザ企業「Opera」が作った「マインドフルネス」に特化したブラウザ(全14枚)


 直近のブラウザのシェアをGlobal Statsで調べてみると、Google Chromeが64.59%でダントツ、2番手にEdge、3位がFirefox、次いでSafariと続く。


 この順位をWebレンダリングエンジンという目線で見てみると、Edgeはリリース当初は独自エンジンだったが、2020年にはChromiumベースへ移行したので、Google Blinkのシェアは実に86%以上という事になる。昨今アメリカ司法省では、Googleの検索市場の独占状態を重く見て、Chromeの売却を求めるといった動きも出てきている。


 そんな中、5位に位置するのが「Opera」だ。95年からノルウェーで開発されている同ブラウザは、初期には独自エンジン搭載、また早くからタブブラウジングを実装し、その草分け的な存在として知られた。ただ13年のバージョン15以降はChromiumベースとなり、WebエンジンもBlinkになっている。また16年には中国企業に買収されたが、開発は変わらずノルウェーで行われている。


 そんなOperaが25年2月にリリースした新ブラウザが、「Opera Air」だ。とはいえ全くのフルスクラッチというわけではなく、Operaに機能追加したものとなっている。ただその方向性として、マインドフルネスを重視した設計とした。


 マインドフルネスとは、現在のことに集中し、自己認識力を高めた状態のことを言う。これは瞑想や呼吸法などによって実践できるとされている。


 IT系の仕事に従事している人であれば、ほとんどの作業がブラウザ内で終わるか、ブラウザ+何か、という形で仕事している人が多い。それだけブラウザはメインツールとなっているわけで、そこにいろいろな機能が統合されてくるというのは自然な流れだ。


●集中力向上を促す機能とは


 近年のOperaはゲームユーザーを意識しているのか、デフォルトカラーがわりとどぎついイメージだが、Opera Airはそこから反転し、淡いトーンで上品にまとめられている。


 Operaを特徴付けているのは「サイドバー」で、ここから独自の機能にアクセスできる。例えばメッセンジャーやXをここから小画面で起動したりできる。これらは常時開いておく必要はないので、こうしたサイドバーに収納できるのは便利である。


 Opera Airのサイドバーにしかない機能として「ブースト」がある。これは音楽と音を通じて脳波を刺激し、創造性を高める、ストレスを軽減する、リラックスするなどの効果を得るものだ。


 これは、音楽を再生しながらブラウザを使うことで、脳波を刺激し、創造性を高める、ストレスを軽減する、リラックスするなどの効果を得るものだ。


 例えば「エナジャイズドフォーカス」を選ぶと、音楽と鳥のさえずり、12Hzのアルファ波がミックスされて再生される。1つのブーストは30分で構成されており、再生にはヘッドフォンの使用が推奨される。勝手に再生されるわけではなく、集中が途切れたときや気分を変えたい時などに呼び出して使うというものだ。


 ブーストはその目的によって、ベータ波はシータ波とされる特定周波数の音が設定されている。例えば前出「エナジャイズドフォーカス」では、「アルファ12Hz」という表記がある。


 集中しているときに発生する脳波がアルファ波で、脳波は単純な正弦波(サイン波)であるために周波数で分類できる。世の中にはアルファ波を誘発しやすい音楽などが研究されている。


 ただ、特定周波数の正弦波を聴く事で、特定の脳波が誘発できるという説は、聴いたことがない。最新の研究なのだろうか。


 そもそも12Hzは人間の可聴音域外であり、多くのヘッドフォンやスピーカーでも最低で20Hz程度しか再生できない。12Hz音を再生しても無駄なのである。実際にヘッドフォンで聴いてみたが、おそらく12Hzの音が出ているわけではないのだろう。12Hzの整数倍音、120Hzの音が聞こえる。「ボー」という低音だ。


 これが一定周波数なので、再生される音楽によっては不協和音となり、非常に聞き苦しい。聴いていれば慣れるのかもしれないが、本当に効果があるのだろうか。波形と効果音、音楽のバランスはミキサーで決められるので、波形音はゼロにもできる。


 もう一つ紹介したいのが「休憩設定」だ。ブラウザを開いている時間を計測し、一定時間ごとに休憩を促すものだが、この程度のリマインダ機能はスマートウォッチにもある。ただ単に「立って運動しましょう」とか言われても、忙しいんだけどと閉じてしまうことが多い。


 一方Opera Airの機能は、「呼吸」「首のエクササイズ」「瞑想」「全身スキャン」の4メニューがある。それぞれのメニューの中に、いくつかのコースがあるという作りになっている。


 手軽に始めやすい「首のエクササイズ」を見てみると、4種類のコースが設定されている。PCのカメラがあれば、それで自分の頭の状態をモニターしながらエクササイズすることができる。「呼吸」なら3〜6分、長いものでも15分程度で終わるので、時間のありなしに応じて選択できる。


 これはいつでも呼び出せるので、煮詰まってきたなと思ったら起動するという使い方もできる。


●AIと融合したブラウザ機能


 いくらマインドフルネスを促すとはいっても、ブラウザとして使いづらいのでは常用するのは厳しい。そもそもOperaを使っている人も少ないと思うので、今のOperaはどうなってるのか、という事も含めてブラウザ機能をご紹介したい。


 まずOperaは独自エンジンなので、機能拡張が厳しいと思われていると思うが、前段でも述べたように今はChromiumベースになっているため、Chromeの拡張機能も使えるようになっている。特定ツールに記事をクリッピングする拡張機能を使っている人も多いと思うが、そういうものも試してみる価値はある。筆者はNotionへクリッピングする拡張機能を使っているが、なぜかウィンドウの色が緑色になるという事以外は問題なく使えている。


 またOperaは「Aria」というAIがインテグレートされているので、各所でAIパワーが使えるのも魅力だ。例えば英語サイトでページ内の文章を選択すると、Ariaを使って翻訳することができる。以下は25年4月に開催されるNAB Showの、ソニー公式サイトの文章を翻訳したものだ。


 またTabキーを押すとページ全体に対してAI処理ができる。ページの要約も可能だ。


 このAriaも、サイドバーから呼び出すことができる。GPT-4o、Gemini1.5、Imagen3がベースとなっており、質問することができるほか、生成モードでは短文の生成もできる。


 ただ質問欄の日本語入力にやや難があり、キーの最初の1文字を取りこぼしたり、日本語変換して確定のためにEnterキーを押したとたんにAIに送られたりという、「日本語初期対応あるある」がまだ残っている。これはそのうち改善されるだろう。


 活用したい機能に、「PinBoards」がある。これは一時的に集めておきたいサイトをピン留めできる機能だ。ブックマークと似たようなものではあるが、ボードはいくつでも作れることや、ページのサムネイルも保存されることで、仕事で後々必要となる情報をクリップしておくのに便利だ。


 もう一つ、「Flow」という機能も面白い。これは異なるプラットフォームにインストールしたOpera間でページ情報をやりとりする機能だ。例えばスマホ版のOperaで見つけた記事をPCに転送したい場合は、メニューからFlowへ送ると、デスクトップ版ほか同期しているOperaの間で共有できる。


 特にAndroidとMacの間はなかなか情報のやりとりが難しかったが、ブラウザを共通化することでその問題が解決できる。


 現在のブラウザは、自動車に例えればエンジンが同じで車体だけ違うみたいな感じになっている。エンジンの共通化には独占の問題もあるが、そこに開発にリソースを割かなくても良くなったぶんだけ、車体に注力できる。Opera Airは、こうした車体バリエーションを1つのコンセプトに昇華できるという方向性を示したものといえそうだ。


 IT業界もだんだん若者中心ではなくなり、そこそこオジサンが主戦力の現場だ。マインドフルネスやデジタルヘルスといったことが機能に盛り込まれるのも、当然である。最近効率下がってるなーと思っている方は、こうしたブラウザに変えてみるというのも、1つのリフレッシュ方法だろう。



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