「ママは本当にしんどい時に外食やスーパーのお惣菜を買うことにしてるねん。なのに、パパはほいほいコンビニやスーパーのごはん買うやろ。それで、ママはしばらく外食ダメやなって思って、また頑張って作らんといけんくなる」「ママは平日働いて、土日に家事育児をしてるんやで。土日は2日あるんやから、1日変わったろうと思わんわけ？」
先天性疾患の「側（そく）わん症」のりおなちゃんは、忙しいママを思うばかり、パパに鋭い言葉を浴びせる姿がYouTubeの「ショート動画」で有名になった8歳の女の子。2022年、5歳のときに公開された初の「パパをお説教する娘」は今も視聴され続け、1701万再生に。
もともと、「YouTubeをやってみたい」というりおなちゃん自身の願望と、りおなちゃんの状況を知ってもらうことで「少しでも生きやすい世界を用意してあげたい」という両親の思いから2022年12月にスタートした『ちいりおちゃんねる』。2023年1月時点ではチャンネル登録者数13.4万人だったところ、2025年3月23日時点では168万となっています。
明るい笑顔や面白発言、パパとのコントに加え、ハッとするような言葉やトレーニングを頑張る姿を投稿し、もともとりおなちゃんファンが多かったのですが、「リハビリも楽しくするパパって最高」「本当にいい家族」「素敵な子を育ててきたママはすごい」と、家族全員の関係性も含めて、応援する人々が増えています。
|
|
|
|
5歳のときに受けた手術によって、胸から下の感覚が麻痺し、車椅子での生活を余儀なくされ、歩けるようにリハビリと向き合っていたなか、2024年に思わぬ事態で急遽再度手術することに。退院して約半年、3月3日にお誕生日を迎え、8歳になったりおなちゃんとりおなちゃんママに、近況をうかがいました。
学校に宿題、リハビリ、YouTube撮影……大忙しの日々
SNS発信をスタートさせると、瞬く間に拡散され、想像以上のスピードで世にでることになったりおなちゃん。「ワードセンスの良さほんまに才能の塊」「賢いしおもしろいし、クヨクヨせず笑いで両親を励ましてるのすごすぎる」と称賛の声が続出。
さまざまなメディアによる取材や書籍発売、アーティストとしての音楽配信などが相次ぎました。一昨年から昨年は大忙しで、「常に先まで予定が詰まっていて、寝る暇もないくらいでした」（りおなちゃんママ）。
そのなかでも一番大事にしていたのは、「家族4人で手をつないで歩きたい」という思い。自宅での自主練にも全力投球し、再生医療による治療や鍼灸治療にも取り組み、以前に比べ、感覚が戻ってきたかもしれない、と感じていた2024年夏、思いもよらない事態に直面しました。2022年の手術で背骨に入れた2本の金属が折れてしまっていたのです。
座っていることも辛く、再手術は必要とはいうものの、気道に狭窄のあるりおなちゃんにとって、それは命がけのことになります。インスタグラムでのりおなちゃんママによる報告には、いつも以上の反響があり、応援メッセージが殺到しました。
|
|
|
|
「どうなっちゃうの？」と不安も「絶対帰ってくる！」と再手術
手術までの約3週間は入院前の検査や準備などに追われ、「背中の手術ってすごく怖いものだと思っているので、落ち込みもしましたし、心配や不安もありましたが、あっという間にその日になりました」とりおなちゃんママ。
以前の手術はSNSでの発信をほとんど行わず臨んだものでしたが、今回はたくさんの人からの応援に心強さを感じていたそう。「また手術するとわかったときは、すごい悲しかった。でも、みんながすごい応援してくれて、これは絶対帰ってこんとあかんなと思った。無事に帰ってこれて良かったし、入院中もすっごくメッセージに励まされた」とりおなちゃん。
取材に対し、りおなちゃんママが「メッセージを寄せてくださった方、私たちに代わって神社までお参りに行ってくださった方もいて、絶望しきることがありませんでした。強い心を保つことができました」と感謝を述べると、改めてりおなちゃんも「その節は本当にご心配おかけしました。応援もありがとうございます。みなさんに向けて、楽しい動画を作って恩返しをしていきたい」と宣言。
りおなちゃんの発言を聞いていたパパがすかさず「これからも元気にどんどんボケておもろいことを言えばいいってことよ」と合いの手を入れると、「パパ、今、何してるかわかっとる？そんなん、言わんでいいねん。静かにしといて」とピシャリ。取材中もYouTubeさながらの、りおなvsパパの小競り合いが繰り広げられました。
術後のトレーニング「またできることが楽しみだった」
「これまでは術後2週間はICUにいて、人工呼吸器もなかなか外せなかったのですが、気道が広くなったため、今回は翌日外すことになったのです。うれしい反面、大丈夫ですか？と戸惑いもありました」と、驚異的なスピード回復にも今回はほっとしたというりおなちゃんママ。
|
|
|
|
背中がまっすぐになり、首が長くなったこと、また左上半身から汗が出るようになったことを術後の変化として実感しています。りおなちゃん自身も「おなかがまっすぐになったから、ごはんをいっぱい食べられるようになったのがうれしい。最近はヨーグルトやイチゴも食べられるようになった！」とニッコリ。
手術直後から病院でリハビリを行なってきましたが、本格的なトレーニングを再開したのは約3ヶ月後。当時の心境をりおなちゃんにたずねると「あんまり覚えてなくて。でも、行く前から楽しみだった」とのこと。足が動かせなくなる前から、あまり体を動かすことは好きではなかったというりおなちゃんですが、今はトレーニングで体を動かす楽しさを感じているようです。
現在は手術前と同じぐらい動けるようになっており、「トレーニングで歩ける距離がちょっと増えたし、低い椅子に座ったら立てるんじゃないかなという気持ちも湧いてきた」。りおなちゃんママも、「前回の手術の後は、ひとりで座ることもままならなかったので、立てそうな気持ちが出てきたのはうれしい兆し。少しずつでも進歩してくれたら」と話します。
現在は月曜日から木曜日は学校生活、金曜日は居住県外のリハビリ施設でトレーニングというルーティンに。週末に大阪のトレーニングジムでトレーニングを行うこともあり、家族の生活は落ち着きを取り戻しつつあります。
りおなちゃんは「毎日忙しいことは忙しい。学校から帰ってきたら、宿題して、語学の勉強して、食事もお風呂もあるし、YouTubeの撮影もあるし」と、日々の生活を満喫することを最優先しています。
諦めそうになったこともSNSのパワーで実現！
命懸けの大きな手術から回復したりおなちゃんファミリーですが、手術後はうれしいことや楽しいことが待っていました。歩行器を使うと足が一歩出るようになったことや家族での韓国旅行、スタジオ収録＆ワイプコメント初体験となった阿佐ヶ谷姉妹の番組への出演、そして七五三の写真撮影です。
「人生の節目やイベントのたびに、車椅子で参加することになるのかもしれない、という現実を突きつけられる気持ちがありました」とSNSで明かしていたりおなちゃんママ。
「娘のように、体に麻痺があると、着物を着るのは難しいことです。いろいろなところに問い合わせて、ダメだと言われるとだんだん気持ちも萎えていくことも想像できて…。七五三を着物でお祝いするのは難しいんじゃないかな。無理なら無理でいいや、そういうイベントとは無縁でも仕方ない」と諦めに似た気持ちを持っていたそう。
それでも、SNSで七五三についてつぶやくと、福祉車椅子着付け師の方から連絡が届いたことも。「遠方だったため、断念したのですが、いろいろな方が知恵をしぼってくれることがありがたかったです。淡路島の写真館の方から、簡単着付け着物を着て撮影できますよ、とご連絡をいただいて、撮影できることになったのです」。
かわいい着物に加えてドレスまで着用したりおなちゃんは、「後ろにファスナーがあるから着物はラクだったし、メイクもむっちゃかわいくしてくれて、テンション爆上がり！写真スタジオもむっちゃかわいくて、また着た〜い！」とご機嫌。SNSの力を実感したできごとでした。
手術や旅行、テレビ出演、七五三などさまざまなことを体験した波乱万丈な1年を過ごしましたが、スタートしたばかりの8歳について「学校や語学の勉強、それから治療やトレーニング、今やっていることをしっかり頑張ること。取り組む時間を増やして、今よりさらにレベルを上げていきたい」とキリッとした表情で話します。
続けて、「いつか、コスメの爆買いができるようになりたいし、永遠の憧れめめ（Snow Manの目黒蓮さんのこと）にも会いたい」と8歳の女の子らしい、かわいい夢も。
困難に負けず立ち向かうこと、諦めないこと、自分にできることを全力でやること。簡単そうで、なかなかできないことを、小さな体でパワフルにやってのけるりおなちゃん。「たくさんの人の応援が励みになる」と話しますが、「動画は心のサプリメントです」「りおちゃんの考え方本当に素敵です」「大人ですが、アドバイスに感動しました！」と、りおなちゃんからたくさんの勇気や元気をもらう人もまた多いのです。
（まいどなニュース／Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子）
コラム
