
システム開発会社に入社して3年目を迎えたAさんは、社内でも異例となる大型プロジェクトのリーダーに抜擢されました。会社からの期待の大きさを感じ、Aさんは並々ならぬ決意でプロジェクトに臨みます。
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期待に応えようとAさんは業務時間外も惜しみなく自己投資を続け、自腹で専門セミナーに通い最新技術やマネジメントスキルを貪欲に吸収していったのです。睡眠時間を削り休日も返上で資料を読み込み、綿密な計画を立てました。
そしてAさんの努力の甲斐もあり、プロジェクトは見事に成功を収めました。打ち上げの席で周囲から努力と功績を称えられたAさんは、人目を気にせず涙を流します。達成感と安堵感に包まれ、ようやく肩の荷が下りたように感じました。
しかしプロジェクト終了からしばらくすると、Aさんの様子に変化が生じます。以前は誰よりも明るく活発だったはずのAさんから、生気が失われていったのです。挨拶をしてもぼんやりとした表情で反応が鈍く、時には返事すらないこともありました。
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以前のAさんを知る同僚たちは心配を募らせ、「何かあったのか?」声をかけるものの、Aさんは曖昧な笑みを浮かべるだけで何も語ろうとしません。Aさんは周囲とのコミュニケーションを避け、1人でいる時間が増えていくのです。
Aさんのように仕事で成功を収めた人が、急に心身喪失状態になってしまうのはなぜでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いてみました。
ーAさんのような状態は、俗にいう「燃え尽き症候群」なのでしょうか
おそらく燃え尽き症候群ですね。実際に企業でも、Aさんのように熱心に仕事に取り組んでいた人が急にやる気を失うケースがあり、対策を講じています。
燃え尽き症候群になる理由はさまざまです。大きなプロジェクトを終えても次の仕事がやってきて「いつまでこれがつづくのか」と虚無感に襲われたり、過度な残業や休日出勤で心身ともに疲れ切ってしまったりといった事例が見られます。
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ー燃え尽き症候群を防ぐために企業側としてはどんな取り組みが必要でしょうか
大前提として、ひとりの社員に過度な負荷が集中しないように指示する必要があります。周囲からのサポートもなく、その人にしかできない状況が高負荷で続くと疲弊してしまいます。一度でも燃え尽き症候群に陥ってしまうと、1か月以上動けなくなることもあるため、企業にとっては大きな損失となるでしょう。
ひとりにしない方法として、メンター制度を設けている企業があります。直属の上司以外に先輩社員をメンターに任命し、相談しやすい環境を構築しているのです。精神的な不調が出る前に相談できるため、燃え尽き症候群などの予防につながります。
もし高負荷な仕事が避けられない場合には、仕事が一段落したさいにリフレッシュ休暇を与えるといいでしょう。評価やポジションで努力に報いる方法もありますが、休息に勝るリフレッシュはありません。企業によっては過度な残業が続くと、その時間に見合った休暇を与える制度を設けています。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
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(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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