梶裕貴&伊藤美来、声優たちが紡ぐ「明日を生きる糧になる物語」 朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025【インタビュー】

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2025年03月27日 08:10  エンタメOVO

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伊藤美来(左)と梶裕貴 (C)エンタメOVO

 住野よるの大ヒット小説を原作とした朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025が4月5日・6日に上演される。本作は、声優たちの「声」に特化した企画として2022年に初演。主人公の「僕」が病院で偶然拾った本をきっかけに、クラスメートの山内桜良と心を通わせていく姿を描く。再演となる今回は、「僕」役を岡本信彦と梶裕貴、山内桜良役を鬼頭明里と伊藤美来が日替わりで務める。梶と伊藤に公演への意気込みを聞いた。




−出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

 原作小説が発売された10年前に拝読した作品です。その後、アニメ化や映画化もされ、さらに朗読劇になっていることも知っていましたが、まさかこのタイミングで携わらせていただけるとは思っていなかったので驚きましたし、とてもうれしかったです。この作品の中に「僕」という役を通して入り込み、さまざまな感情を追体験する機会をいただけたのは、役者として大きな喜びですね。

伊藤 私も出演が決まる以前からこの作品のことはもちろん知っていましたし、映画も見ていたので、光栄な気持ちでいっぱいでした。そして、一緒に演じる先輩たちの隣で生のお芝居をさせていただけるというぜいたくさにワクワクしました。

−朗読劇ならではの見どころは?

 朗読劇は、声だけでお客さまがそれぞれ想像できる世界だということが第一の魅力だと思います。僕は今年40歳になりますが、今回演じる「僕」は高校生です。自分の年齢の半分以下の年齢のキャラクターを演じる機会をいただけるのは、声優業くらいかなと思いますので、上演中は、「僕」と1つになって高校生のみずみずしさを演出していければと思います。「僕」は感情の起伏が控えめで、他人との接触をある種、意図的に避けてきた人物です。それが桜良と出会い、あることをきっかけに接する機会が増え、彼の中で大きく物事が変化していきます。そうしたさまを自分自身が高校生に戻ったような感覚で演じたいですし、演じられる場所をいただけたことがすごくありがたいです。

藤 脚本を読ませていただくと、細かいところが映画とも小説とも違いますし、朗読劇のためのせりふになっています。この作品では、ほとんどのシーンが「僕」と桜良の掛け合いとモノローグで構成されているので、それもまた聞き応えのある部分の一つなのだと思います。

−アニメや映像の吹き替えとは違う、朗読劇だからこそ演じる上で大切にしていることというのはありますか。

 絵に合わせなくていいので、自由度は朗読劇の方が断然高いですね。ですが、それだけ委ねられているという責任も伴う場所なのかなとも。基本的に朗読劇は、公式での稽古もそれほど多くないので、役者一人一人が自分の中で整理して準備していくことが大事になります。極論、音のみで完結する作品が朗読劇というコンテンツですが、もちろんそれだけでなく、衣装や美術、照明、音響があっての総合芸術でもあるので、今回の朗読劇「君の膵臓をたべたい」も、すべてのアプローチでもって世界観を表現できればいいなと考えています。

伊藤 朗読劇だからこそ、ストーリーのフックになるシーンやせりふは大げさにしすぎず、きちんと伝わるように意識して読むようにしています。観劇後に「あのとき、このせりふ聞いたな」と思い出してもらって、より楽しんでいただけたらうれしいので、一つ一つのせりふに気を付けて演じています。

−では、それぞれの役柄との共通点を教えてください。

 僕は、表面的にはコミュニケーションが得意な人間だと思われがちなので、「僕」と全く違うと思われるかもしれませんが、他人とやりとりをするのは緊張しますし、相手との関係性やコミュニケーションがうまくいくためにどうすれば良いかをたくさん考えてしまうタイプです。人と接することに苦手意識があるという意味では、「僕」と近いのかなと。伊藤さんには、どこか天真らんまんな印象があるので、僕の中では桜良と近いイメージですね。

伊藤 私自身は桜良と似ていると思うところはあまりないんですよ。桜良は、天真らんまんでありつつも、すごく繊細で、とても強い子だと思います。自分の未来やその先のことを考えて行動し、周りに流されず、自分が良いと思ったことにしっかりと向かっていける。好奇心も含めて、すごくすてきな女の子なので、似ているというよりはうらやましいです。

−桜良ほどは強くない?

伊藤 強くないですね。きっと私だったら毎日泣いて過ごして、どうしたらいいか分からなくなってしまうと思います。周りのことを考える余裕もなくなってしまうと思うのですが、桜良は周りのことしか考えていないので、すごくかっこいいなと思いながら読みました。ただ、私も「星の王子さま」は大好きなので、そこは似ているなと思いました(笑)。

−「僕」が日記を拾ったことから、桜良との交流が始まっていく物語にちなんで、お二人の人生が変わったと思った出会いを教えてください。

 その時々でいろいろな出会いがありましたが、最近でいうと、やっぱりわが子ですかね。もちろん、それまでも人のことを思いやる気持ちを持って生きてきたつもりですが、それでも人間には、基本的に自分第一で生きる権利があると思います。ただ、子どものこととなると話は別。何を差し置いてでも一番に考えるべき存在です。全てを犠牲にしても良いと思える存在で、何よりも大切に守り抜かなければいけないという、その感覚や価値観の変化は僕の人生にとって大きな変化だったと思います。人間が根本から変わらざるを得ない出来事でしたね。

伊藤 私は中学3年生のクラス替えです。そのときに初めてアニメが好きなお友達ができて、その子にたくさん教えてもらって、声優という職業を知って、アニメが好きになりました。そこからこの職業になりたいと思うようになったので、私に大きなきっかけをくれた出会いでした。アニメを教えてもらっていなかったら、私は今、何をしていたのか分からないです。なので、ずっと感謝しています。

−最後に読者へのメッセージをお願いします。

 「君の膵臓をたべたい」の世界に入れることが今からすごく楽しみです。この作品はすごく間口が広い物語で、どなたでも登場人物たちのことを身近に感じられるのではないかと思います。桜良は力強くカラフルに輝いている人物で、明るくてポップなせりふが多いのですが、その中に、グサリと心に刺さる重みのある言葉が混じっているんです。それが本当にすごい。不意をつかれるんです。楽しくご覧いただきつつも、「生きるとは何か」という、この作品からのメッセージを受け取っていただけたら幸いです。主人公である「僕」たちと同世代の皆さんはもちろん、かつて学生だった大人の皆さんにも、思春期のみずみずしさや鬱屈としたもの、さまざまな感情を共有していただけるのではないかと。その場限りの、朗読劇ならではの感動を味わいにぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

伊藤 この物語をご存じの方も、今回の朗読劇で初めて知るという方も楽しめる作品になっていると思います。明日を生きる糧になる物語です。「僕」と桜良が懸命に生きる姿を生で感じていただけたら、きっと背中を押してもらえるのではないかと思います。劇場でお待ちしております。
(取材・文・写真/嶋田真己)

 朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025は4月5日・6日に都内・日本青年館ホールで上演。


朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025 (C)朗読劇「君の膵臓をたべたい」2025製作委員会

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