「スナドラPC」って絵師にはどうなの? ついに利用可能になったワコムドライバで実用性をチェック

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2025年03月27日 12:21  ITmedia PC USER

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Surface Laptop 7にワコムドライバのCintiq Pro 17をつなげています

 こんにちは! refeiaです。今日はお絵かき用途のArm版Windowsの夢を見ていこうと思います。


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 2024年の6月、IntelでもAMDでもないArm命令セットのCPU「Snapdragon X Elite」「Snapdragon X Plus」を搭載したノートPCが各社から一斉に発売され、個人向けの「Surface Pro」と「Surface Laptop」もArmになりました。MicrosoftがArm版Windowsを主要な選択肢の一つにする強い自信と決意を持っているのが分かる動きです。


 ユーザー的には、優れたバッテリー持続時間と低発熱/高い性能を享受できるのに加えて、長期的には競争の活発化による恩恵があります。ですが、当面は互換性の問題があり、積極的に選ぶにはある程度の覚悟が必要というのが、現在のArm版Windows PCの立ち位置です。


 そのような中、2月にワコムがArm対応ドライバをリリースし、ワコム製の液タブや板タブが利用できるようになりました。


 じゃあ、お絵描に使えるじゃん! ということで、実用性を見ていきましょう。


●Arm版Windowsの互換性問題とは


 まずは「Arm版Windowsには互換性の問題がある」について、おさらいしておきましょう。こんなイメージです


・普通のWindowsはx86/x64という“言葉”を使って動作している


・Arm命令セットのCPUはその“言葉”を理解できない


・Windows on Armにはその“言葉”を翻訳して動かす機能(エミュレーション)があるが、制限もある


 この制限の部分が互換性問題になり、ユーザーの体験としては、アプリやドライバが動かない、動いているように見えるけど怪しいという形で現れます。一般的なアプリはほとんどそのまま動きますが、特にドライバや、システムと深くかみ合わなくてはいけないアプリは正しく動かない場合があり、タブレットドライバもその類いでした。


●Arm対応のワコムドライバが登場


 Surface Proのような、元々筆圧ペンに対応したモデルはあるとはいえ、2024年までは外付けの板タブや液タブを使うのは難しい状況が続いていました。当時のワコムドライバも、Arm版Windowsではインストール自体をさせない動作になっていました。


 それが、2月12日から配信されているバージョンはArm対応がうたわれています。現状の動作制限として「Wacom Center(ワコムセンター)からタブレットドライバまたはファームウェアを更新することはできません」と書かれてある以外は、これまでのWindowsドライバの機能全てが使えるようです。


 せっかくなので、他の主要なペンタブメーカーもざっと眺めておきましょう。


・Huion:非対応(原稿執筆時点:開発中)


・XPPen:対応(2025年1月ごろ〜)


・Xencelabs:対応(2024年9月ごろ〜)


 Huionについては、記者の立場で問い合わせたら速攻で開発版ドライバのインストーラーが飛んできたぐらいなので、それほど長期間待つことなく使えるようになるでしょう。つまり、ワコムを含む液タブ/板タブメーカーの主要4社がおおむねArm対応できている状況といえます。


●イラスト用アプリはおおむね問題なく動作


 話をワコムドライバに戻しましょう。実は先日の新型「Intuos Pro」のレビューの際にも簡単に動作確認はしていて、普通に動作しているようでした。


 今回は、Surface Laptop 7に「Cintiq Pro 17」を接続して、イラスト制作に使えるアプリをピックアップしながら動作を確かめていきます。


 チェック自体は結構手間だったんですが、手短に書きますね。


 ハイ、つまらない(失礼)ですね。各アプリそんなに時間をかけたわけではないとはいえ、ちゃんと動くようで、操作感も普通のWindowsと変わりません。惜しいのは、少なからずのアプリがx64のままなのでエミュレーション動作になり、パフォーマンスに若干のハンディを負うことです。


●Surface Laptop 7は4K/120Hz液タブの性能を発揮できない


 ドライバも問題なく、アプリ動作も問題なく、完璧じゃん、と言いたいところですが、意外な落とし穴はありました。Surface Laptop 7は4K/120Hzで映像出力することができないため、Cintiq Pro 17を含む新Cintiq Proシリーズの重要な強みの1つを利用できません。


 ブラウザなどのスクロールはパラパラ感もあり、作画中も60Hzで別に困る場面はないですが、120Hzと比べれば遅延はわずかに増えます。また、液タブ以外でも外部ディスプレイを使えばつきまとう問題なので、残念ではあります。


●CLIP STUDIO PAINTで長時間作業をチェック


 さて。アプリ動作は問題なさそうとはいえ、それなりに使い込んで問題ないことも確認しておきたいですね。


 自分は、普段はPhotoshopで絵を描いていますが、この分野ではCLIP STUDIO PAINT(以後CSP)の方がメジャーで、エミュレーション動作の不安もあるので、今回はCSPを長時間使ってみることにしました。その中で実際に安定して使えるのか、どれくらい実用的なのかをチェックしていきましょう。


 ちなみに、今回使うCSPのバージョンは4ですが、3についてはセルシスが動作に問題がないことを確認しています 。


●バージョン1が必要な導入パターンも無事通過


 今回はCSP バージョン1の買い切りライセンスに「アップデートプラン」を適用する段取りを試しました。アップデートプランは旧バージョン所持者に向けた、低価格で最新版を1年間利用できるプランです。実際に利用するためには


・バージョン1をインストール


・アップデートプランを購入


・バージョン4に自動アップデート


 の手順になるのですが、結構古いはずのバージョン1も問題なくインストールでき、ライセンス挿入/アップデートを完了できました。


●ほぼ違和感のない描画感


 今回はエミュレーションのハンディも見たいので、長辺6000ピクセルという大きめのキャンバスで描き進めてみます。


 少なくともラフ〜線画ぐらいまでは、普段の制作PCとの差が分からないような描画感でした。その後はレイヤー切りをしたり、彩色では大きいブラシも使ったり、それなりに乱暴にレイヤー複製などをして作業を進めてみましたが、CSPの動作の範ちゅうとしては特に困った遅さには遭遇しませんでした。


 以前のテストで、エミュレーション動作では7割ぐらいの性能になることが分かっていて、今回も実際に遅くなってはいるはずです。ですが、CSPでたまにある待たされる動作は理想的な動作と比べて数倍レベルで遅いので、そこから7掛けになったとしても致命的に悪化したようには感じられない、というのが実用してみての素直な感想です。


 白背景キャラ絵は軽いとはいえ、思ったよりも「ウッ」となる場面がなくて拍子抜けでした。


 手元のSurface Laptopは16GBメモリのモデルなので、業務のイラスト制作を全て収容できるとは言えないですし、大量のブラウザタブや複数のクリエイティブアプリを立ち上げると急に苦しくなりがちです。


 ですが、メモリのやりくりなどに気を付けながら作業すれば、趣味の制作や、背景ありのB5〜A4印刷物ぐらいの制作は快適にこなせると思います。


 また、今回のワークフローには含めませんでしたが、キャンバスに3Dモデルを配置してポーズを調節したり、そこにレイヤーをかぶせたりしてブラシで描画するような使い方もできていました。


●まとめ


 それではまとめていきましょう。


 お絵描き用途のArm版Windowsの夢は、ほぼかなったと言っていいと思います。


 主要タブレットメーカーのドライバは出そろいつつあり、PhotoshopやAffinity PhotoはArmネイティブのアプリを利用できます。エミュレーション動作になるアプリもおおむね問題なく、Snapdragon X Elite/Plusは元々のパフォーマンスが高いため、エミュレーション動作になったとしても実用的な動作速度を維持できています。


 総じて、お絵描き用途におけるArm版Windowsは、依然として進んで選ぶほどではないですが、何かの弾みで選んでしまったとしてもさほど心配することはないと言えるでしょう。


 ところで、先日BTOメーカーの方と軽くお話しする機会があったのですが、「クリエイティブ用途の中でも、絵師さんはなぜかデスクトップPCを求めることが多い」とのことでした。


 なぜでしょう?  静止画の制作はクリエイティブ用途の中では性能要求は低い方のはずです。そこでボクは気付くのです。イラストもゲームもやりたいんだと……。


 ゲームをやりたいんだ! そういうことならやっぱArm版Windowsはお勧めできないですね。


 あー……夢はついえた……夢はついえたんです……デスクトップPCを買ってバリバリゲームやりましょうね。


 クリエイターはインプットも大事!



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