自宅サーバマシンとして「Minisforum MS-01」を2台導入してみた 拡張性と接続性が魅力、Intel AMTの設定も解説

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2025年03月28日 17:51  ITmedia PC USER

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Minisforumが発売している、コンパクトながら拡張性の高い「Minisforum MS-01」

 MINISFORUM(ミニズフォーラム)と言えば、四角いミニPCをメインに展開しているイメージが強いが、実はIntelのハイエンドモバイル向けCPUや玄人向けのインタフェースを搭載した高性能モデルのラインアップも充実している。


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 例えば「Minisforum MS-01」や、Socket AM5対応のAMD CPUを搭載できる「Minisforum MS-A1」などが挙げられるが、今回はMS-01のCore i9-13900HとCore i9-12900Hを搭載した2モデルをサーバマシンとして購入してみたので、実機をもとにMS-01の魅力と、UEFI画面から遠隔操作できる「Intel AMT」について詳しく紹介していこう。


●MS-01の強みは10G SFP+ポートにあり!


 MS-01は先ほど紹介したMS-A1と比べて、自宅サーバを運用している筆者にとって非常に大きな強みがある。それは10Gbps通信に対応した2つのSFP+ポートが背面に備わっているところだ。


 SFP+ポートが搭載されている利点は、RJ45ポートにLANケーブルを挿して10Gネットワークを構築すると発生してしまう、熱問題を回避できるところだ。


 一般的な10Gbps対応のスイッチを見てみると、RJ45ポートではなくSFP+ポートを搭載するモデルが多いことに気付くはずだ。


 仮にサーバ側のNICがRJ45ポートしかない場合、スイッチ側に10GbE SFP+光モジュールを挿す必要がある。しかし、このモジュールが強烈なまでに発熱し、最悪の場合、スイッチが熱暴走する可能性がある。


 最初からサーバ側にSFP+ポートが搭載されていれば、低発熱のマルチモード光ファイバーケーブルが直結できるので、この熱問題におびえる必要が無い。


 一方で、MS-A1にはSFP+ポートが搭載されておらず、最大で2.5Gまでにしか対応していない。筆者の環境はインターネット回線から配下の宅内LAN含めて、基本的に10Gで運用しているため、今回はMS-01を選ぶに至ったわけだ。


●小型ながら脅威の拡張性をサポート


 MS-01は従来のワークステーションと比べると、圧倒的なコンパクトさを実現しながら、PCIe 4.0 x16スロット(PCIe 4.0 x8で動作)を1つ搭載しており、PCIe接続のNICやストレージコントローラー、搭載できる物は限られるがグラフィックスカードも搭載できる。


 DDR5規格のSODIMMは2スロットを搭載しており、最大で64GBまでのメモリをサポートしているのでサーバ用途にもってこいだ。今回は32GBのメモリと1TBのNVMeがセットになったモデルを購入した。


●M.2 NVMeだけでなくU.2ストレージも搭載できるモンスターマシン


  MS-01は3基のM.2 NVMe SSDスロットを用意しており、最大24TB分のストレージを装着できる。うち、PCIe 4.0 x4接続となる1基はエンタープライズクラスの「U.2 SSD」も搭載可能だ(M.2形状の場合はType2280に対応)。他の2基はType 2280に加えてType22110のM.2 SSDにも対応しているが、1基はPCIe 3.0 x4、もう1基はPCIe 3.0 x2接続となるので注意したい。


 つまり、搭載するNVMe SSDを選択する場合にそれぞれのスロットに合った製品を選択しないとパフォーマンスが十分に発揮できない。ストレージを増設する場合は注意しておきたい。


 また、U.2 NVMe SSDとM.2 NVMe PCIe 4.0x4は排他利用になっているため、どちらかのストレージしか搭載できない。そこも注意が必要だ。


●Core i9-13900HとCore i9-12900Hモデルのパフォーマンス差は?


 MS-01は下記3モデルで展開されているが、今回は第13世代のIntel Core i9-13900Hと第12世代のIntel Core i9-12900Hモデルで、どれほど差があるか気になったため、両方を購入してみた。


Intel Core i9-13900Hモデル


・ベアボーンキット:13万6980円


・32GB RAM+1TB SSD、Windows 11 Proライセンス付き:17万3980円


Intel Core i9-12900Hモデル


・ベアボーンキット:9万9990円


・32GB RAM+1TB SSD、Windows 11 Proライセンス付き:10万3990円


Intel Core i5-12600Hモデル


・ベアボーンキット:8万7980円


・32GB RAM+1TB SSD、Windows 11 Proライセンス付き:9万4980円


 今回はサーバ用途として考えているため簡易的とはなるが、ベンチマークテストを通して、Intel Core i9-13900HモデルとIntel Core i9-12900Hモデルのパフォーマンスの差を測定してみた。


CINEBENCH R23


 3Dレンダリングを行ってCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」を実行して、それぞれのモデルの実力を測ってみた。結果は以下の通りだ。


マルチコア


・Intel Core i9-13900Hモデル:1万5043ポイント


・Intel Core i9-12900Hモデル:1万3237ポイント


シングルコア


・Intel Core i9-13900Hモデル:1887ポイント


・Intel Core i9-12900Hモデル:1749ポイント


 Core i9-13900HとCore i9-12900Hはコア数の差はないものの、Core i9-13900Hはターボブースト時の最大周波数が5.40GHz、Eコアのターボブースト時の最大周波数が4.10GHzだったのに対し、Core i9-12900Hはターボブースト時の最大周波数が5.00GHz、Eコアのターボブースト時の最大周波数が3.80GHzとなっている。


 この差からマルチコアスコアは約13.6%、シングルコアスコアは約7.9%ほどCore i9-13900Hモデルのスコアが高い結果となった。


 これはあくまで筆者の主観ではあるが、Core i9-12900Hモデルは高負荷時のCPUファンの音が大きく、静音性や発熱の低さを優先したい場合はCore i9-13900Hモデルを選ぶと良いだろう。


 ベアボーンキットの価格差で見てみると、3万6990円と結構大きな差となっている。できる限り安く抑えつつ仮想マシンサーバのような用途であれば、案外Core i9-12900Hモデルでも良いかもしれないが、サーバではなく卓上に置くワークステーションとして考えると、Core i9-13900Hモデルを選ぶとよさそうだ。


 筆者は購入しなかったが、最廉価モデルのCore i5-12600Hモデルでも自宅サーバとしては十分なスペックを発揮できるので、さらに価格を抑えたい場合はCore i5-12600Hモデルを選ぼう。


 Core i5-12600Hモデルであっても、豊富なインタフェースや拡張性の高さを享受できるので、お財布と必要なパフォーマンスと相談して最適なモデルを選択してほしい。


●UEFI画面から遠隔操作できるIntel AMTがとても便利


 MS-01は全モデルともIntel AMT(アクティブ・マネジメント・テクノロジー)という機能が利用できる。


 Intel AMTはIntel vProプラットフォームで利用できる機能の1つで、遠隔で電源操作やリモートデスクトップ機能を特別な機器を追加することなく利用できる。主に企業ユーザーをターゲットとしたものだ。


 遠隔でサーバの電源操作を行いたいのであれば、HPEのiLOやDELLのiDRACといったIPMI(Intelligent Platform Management Interface)を搭載したエンタープライズ向けサーバを購入する必要があるのだが、Intel AMTはMS-01のようなクライアントPCでも同等の機能を利用できるようになる優れものだ。


●Intel AMTを実際に使ってみた


 今回はMS-01の実機でIntel AMT機能を利用してみたので、設定時のハマりポイントを解説しつつ、実際に動きを紹介しよう。


 なお、分かりやすさを優先し、MS-01をProxmoxサーバにする前にプリインストールされているWindows 11 Proを使ってIntel AMTの操作感をテストしている。


Intel AMTの利用にはIntel ME Passwordの設定が必要? 要件にあったパスワードを設定しよう


 Intel AMTの初期設定はUEFI画面から行う。まずはUEFI設定画面を表示し。「Setup」→「MEBx」→「Intel ME Password」を選択する。


 パスワードの入力画面が表示されるので、初期設定パスワードの「admin」を入力して「OK」を選択しよう。


 続いて新しいパスワードの入力画面が表示されるが、このIntel ME Passwordにはパスワード要件が設定されており、要件に合致しないパスワードを入力すると、特にエラー表示もなく元の画面に戻ってしまう。


 Intel ME Passwordは下記の要件を満たす必要があるので、注意しよう。なお、筆者はこの要件をすっかり忘れ、30分ほど格闘した苦い経験をしたのはここだけの秘密だ。


・8文字以上32文字以下であること


・1文字以上のアルファベット大文字が含まれていること


・1文字以上のアルファベット小文字が含まれていること


・1文字以上の記号が含まれていること


・1文字以上の数字が含まれていること


 晴れてIntel ME Passwordの設定が完了すれば、Intel AMTの設定画面が表示されるので、必要な項目を設定しよう。


●忘れがちなハイパーバイザーパスワードの設定も忘れずに


 Intel AMTを利用する場合、あわせてUEFIのスーパーバイザーパスワード(Administrator Password)の設定が必須なので、こちらも忘れず設定しよう。なお、このパスワードはUEFI画面やブートデバイスを選択する画面に移る際に求められるパスワードで、PC起動の度に求められるわけではないので安心してほしい。


●第13世代以降のCPUでIntel AMTを利用する際の注意点


 Intel AMTを使ってPCを遠隔操作する場合、今までは「Intel Manageability Commander」というアプリを利用するので、今回もMS-01を遠隔操作しようとしたのだが、「imcException A TLS connection could not be established」と表示され、接続できなくなっている。


 これは、第13世代以降のCPUでIntel AMTを利用する際に、自己証明書を使ったTLSによる暗号化通信が必須になったのだが、肝心のIntel Manageability Commanderがどうやら自己証明書に対応していないようだ。


 そこで「Intel Core i9-12900Hモデルであれば、Intel Manageability Commanderが利用できるのでは?」と思って試してみたのだが、UEFIのバージョンアップの関係で同じく自己証明書に対応しておらず接続できなかった。


 対策として、イリアン・サンティレール氏が中心として開発しているIntel AMTに対応したオープンソースの遠隔操作アプリ「MeshCommander」を利用することで、自己証明書を使ったTLS通信が可能となる。


●ルーター越えも可能、電源オフ状態から遠隔操作が可能に!


 先ほど紹介したMeshCommanderから無事、MS-01のIntel AMT機能が利用できるようになった。試しに電源操作を試してみたが、MS-01の電源がオフのままでも電源操作が可能で、「System Status」ページの「Power Actions」から「Power up(電源オン)」を選択すると、実際にMS-01が起動した。


 MS-01でUEFI設定画面を表示した状態にして「Remote Desktop」ページを開くと、遠隔でUEFI設定画面が表示され、実際にMeshCommander経由で遠隔操作できることを確認した。


 今回MS-01をサーバ用として購入したので、キーボードやマウスを接続してMS-01の前で設定しなくても済むようになったのは非常にうれしい。


 もちろんOS起動後も引き続き利用できるので、OS側のリモートデスクトップ機能を利用しなくても簡単に遠隔操作できる。


 さすがに画質に関しては最低限なので、Windowsのリモートデスクトップと同じレベルの操作感は得られないが、メンテナンスやトラブルシューティングくらいであればそつなくこなせる。


 Intel AMTのIPv4設定ではデフォルトゲートウェイも指定できるため、ルーター越えた環境からも遠隔操作できる。例えば、離れた拠点にMS-01を置いてIntel AMTを設定し、拠点間VPNを構築すれば、自宅から電源オフ状態からOSの再インストールまで実現できるようになる。


 今回、大阪から埼玉に設置しているMS-01にMeshCommanderを使って接続してみたところ、接続確立までには少し時間がかかるものの、MS-01を遠隔操作できることを確認した。これなら、遠隔地に置いたサーバでトラブルが起きたとしても、現場に駆け付けること無く、安心して運用できる体制が整えられそうだ。


●無人遠隔操作するにはMeshCommanderで別途設定が必要


 デフォルト設定では、MeshCommanderでリモートデスクトップ機能を利用すると、遠隔操作先であるMS-01側で「Remote Assistance Session」メッセージと共に、6桁のPINが表示される。


 この6桁のPINコードをMeshCommanderで入力しなければリモートデスクトップ機能が利用できない。遠隔操作先のMS-01を操作している人が居れば特に問題ないのだが、無人で遠隔操作したい場合はこれでは困る。


 その場合は、MeshCommanderの「System Status」ページ内の「User Consent」をクリックし、デフォルト値の「Always Required」から「Not Required」に変更することで、PINの入力無しに遠隔操作できるようになるので、必要に応じて設定しよう。


●ただしデメリットも


 ここまでIntel AMTの便利さについて触れてきたが、デメリットも存在する。それは、Intel AMT自体がCPUやシステムボードと一体化している点だ。


 冒頭で挙げたIPMIであれば、CPUやシステムボードが故障していたとしても、IPMIさえ生きていれば遠隔からトラブルシュートが可能なのだが、Intel AMTはCPUやシステムボード上にいわば同居している状態なので、CPUやシステムボードでハードウェアトラブルが発生すると遠隔操作できる術が無くなる。


 そもそも、そこまで深刻なハードウェアトラブルが起きればどうしようもないものの、過信しすぎるのは良くないということだけは覚えておこう。


●高い拡張性と接続性、遠隔操作できるMS-01はサーバマシンにピッタリ!


 とはいえ、10G SFP+ポートを2つ、PCIe 4.0×16スロットを1つ、M.2 NVMeスロットを3つ備えた上で、さらにIntel AMTが利用できるサーバマシンとしてみると、MS-01は破格の安さだと感じる。


 本記事では、各モデルの価格を定価で記載しているが、MINISFORUMでは頻繁にセールを開催しているので、気になった方はぜひ公式サイトを一度訪れてみるといいだろう。



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