「肺と腎臓に別々のがん」59歳男性が突然宣告された2つの腫瘍と、治療費を稼いだYouTubeの中身

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2025年03月29日 17:10  週刊女性PRIME

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三上洋さん

「人間ドックで、腎臓と肺の2か所に腫瘍が発見されて。腫瘍はそれぞれ6cmほどあり、ステージ4だろうということでした。ステージ4が何なのかもよくわからない状況だったけど、最悪の事態なことはわかる。俺死ぬの?目の前の仕事どうするの?いつまで仕事を受けていいの?子どもはまだ学生なんだけど──って、もうお先真っ暗でした

 そう話すのは、ITジャーナリストの三上洋さん(59)。昨年末にがんが見つかり、現在も通院・治療を続けている。

人生初の人間ドックでステージ3のがん

 自覚症状は一切なく、がん発見は身体のとある不具合がきっかけだった。

「あるとき両膝に痛みを感じて、整形外科で検査をしたら、先生に何が原因かわからないと言われたんです。じゃあ調べるしかないと。私自身は躊躇(ちゅうちょ)していたけれど、妻と子どもに行けと言われ人間ドックへ。

 これでがんが見つかったわけで家族に感謝です。ただ、今でも両膝の痛みとの因果関係はわかっていません

 もともと健康には自信があった三上さん。26歳でフリーランスになり、以来30年以上健康診断の類いは一度も受けてこなかった。人生初の人間ドックである。

「まずエコー検査を受けたけど、それがやたら長かった。終わった後もしばらく待たされて。普通人間ドックってその日は検査だけで、結果は後日となるじゃないですか。でも先生に呼ばれて、腫瘍がくっきり見えますと、人間ドック当日に言われました

 紹介状を手に、大病院の門を叩く。精密検査の結果、右の腎臓と右の肺にそれぞれ異なるがんが確認された。

転移かと思ったら、2か所に全然違うがんが同時発生していたそうです。そんなことあるんですかと先生に聞いたら、珍しいけど特異なことではないと言っていましたね。転移の場合はステージ4だったけど、別々のがんということで、ステージ3の診断になって。腎臓と肺、個別に治療することになりました

 まずは腎臓がんの治療からスタート。腎臓がんは「淡明細胞型腎細胞がん」で、ステージ1Bの早期がんとの診断だった。昨年12月27日に内視鏡手術で右腎臓を全摘。人間ドックを受けてから、わずか4週間後のことだ。

「肺がんの治療が控えているし、それだけ深刻だったってことです。お腹にいくつか穴をあけ、そのうち2つをつないで、腎臓を丸ごと取り出しています。当初の予想より腫瘍は小さく、約4cm大でした」

YouTubeでの告白が13万回再生

 1月2日に退院。リンパ節の転移もなければ遠隔転移もなく、腎臓はひとまずクリアとなった。ただ再発の可能性はあり、この先最低5年は定期的に検査を続けていく。

 続いて肺がんの治療に取りかかる。肺がんは「肺腺がん」で、ステージ3B。進行したがんではあるものの、根治を目指せるギリギリのタイミングで、少し光が見えた。「こちらのがんは切ると予後が良くないことが多いらしく、放射線と抗がん剤で治療することに。抗がん剤は2種類×4回の投与が、放射線治療は30回の照射が必要とのことで、早々に入院の日取りが決められました」

 入院に先駆け、がん罹患(りかん)を公表している。YouTubeに動画をアップし、自ら、がん発見の経緯と病状を解説した。

公表するべきかどうか、いろいろ考えました。フリーランスとしては営業的によくないかもしれない。やっぱりがんの人に仕事を頼みにくいでしょうからね。それに自分のつらいことを言うのもしんどいし。

 ただずっとネット配信をしてきて、顔出しで自分のことをしゃべってきた。ある意味、自分をネタにして生きているところがあって。抱え込んでいるより、話しちゃったほうが気が楽になるかもしれないと

 公開に踏み切ると、大きな反響を呼んだ。YouTubeの再生回数は13万回超を記録。テレビやラジオ、ウェブニュースなど、各種メディアでも大きく取り上げられた。

「まさかここまで反響があるとは、という感じです。みなさん頑張れって応援してくれて、公表して良かった。中には自分も同じ肺腺がんです、ステージ4だけど普通に生きてますよ、という声もあって、励みになりました」

 励ましの声に加え、思いがけない実益も。

たくさんの方が、YouTubeでお見舞いの投げ銭をしてくださったんです。数百円〜多いと数万円の方もいました。いやらしい話ですけど、YouTubeの再生広告収入と投げ銭で、2か月分の治療費が賄えました。何ともありがたい限りです

 入院は今年1月23日で、翌日から治療を開始している。入院の主な目的は副作用対策だったが、「吐き気や脱毛など、副作用は全くありませんでした」と三上さん。医師の多大な尽力があったと話す。

「抗がん剤って種類がいっぱいあるんですよね。その中から体質的にアルコールがダメな自分に合わせたものを用意してくれたり、錠剤と点滴の吐き気止めを駆使したりと、徹底的にガードしてくれて。それで気持ち的に安心できたところもあったと思います」

「仕事をすること自体が強いマインドに」

 入院中も仕事を継続し、病室で原稿を書き、ZOOMでテレビに生出演もした。YouTubeでの動画配信も重ね、入院生活の模様と治療の経過を詳しく報告している。

病気でダメだダメだと落ち込んでしまうのではなく、少しでも仕事をして社会とつながっておく。それが自分にとってプラスになると思って

 2月7日に退院。その後、通院治療を続け、抗がん剤は2月末、放射線治療は3月上旬に計30回の照射を終えた。

「これで肺がんの治療もひとまず終了です。ただこの先も1年間は化学療法と経過検査を続けていきます。今はがん細胞と闘う力を高める「イミフィンジ」という免疫チェックポイント阻害剤を使っていますが、これが直近になって肺がんへの有効性がいわれ出したということで、この先かなり効果を発揮するのではないかと期待しています」

 体調に問題はなく、退院後は早々に社会復帰を果たした。がんを公表し、がんにまつわるオファーも増えた。今は2人に1人はがんになる時代で、世間の関心は高い。

私の経験が役に立てばと思って、がんのリアルを発信しています。ただ私自身、がん家系でもないし、何が原因かはいまだにわからない。思いあたるとしたら、たばこを長い間吸っていたことくらい。それも原因かわからないけど……。

 みなさんに何か伝えられるとしたら、人間ドックや検診にはぜひ行っていただきたいということ。私が言うのもヘンですけどね(笑)

 この先も発信を続け、働きながらがんと闘っていく。

がんを経験して、健康で、仕事ができるってありがたいことだと本当に思いました。特に私は自営業なので、お金は治療費としても必要だし、家族を支えるためにも、生きていくためにも必要。

 それ以上に仕事をすること自体が強いマインドになる。目指すのは根治。症状が治まるのが寛解だけど、そうではなく、完全な治癒を期待して治療を続けていきたいです」

三上洋さん●ITジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師。ライブ配信・ネット動画のプロデュースも行う。主なジャンルはセキュリティー(ネット事件、詐欺などへの安全対策)、スマートフォン(料金、業界、有害サイト対策)、節約・お得系(クレジットカード、ポイント、電子マネー)など。

取材・文/小野寺悦子

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