M4搭載「Mac mini」はウソのように小さい偏愛系パソコン モバイル環境でのポテンシャルを探る

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2025年04月01日 13:21  ITmedia PC USER

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湘南新宿ラインのグリーン車での風景。コンパクトなテーブルでもMac miniをスマートに利用できる

 Appleの製品は、あまりマニアックな方向に走らず基本的に老若男女誰でも使え、だからこそ誰にでも勧められる安心感が大きな特徴となっている。そのような中にあって、かなり特殊な存在がちょうど20年前、2005年に発表された「Mac mini」だろう。


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●多様な使い方ができることこそがMac miniの強み


 創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、「必要最低限しか備えていない、とにかく価格が安いMacがほしい」という声に応えたと、この製品を紹介した。「BYODKM」製品、つまり「Bring Your Own Display, Keyboard, and Mouse(キーボードとディスプレイ、マウスは自分で用意してね)」という形でアピールした。


 そんなのWindowsはもちろん、Macのデスクトップモデルでも当たり前のことなのだけれど、あえてマニアックに言い回しにすることで、「なんだか難しそう」と感じた初心者ユーザーは、より親切なiMacに流れることを誘導していたのではないかと筆者は読んでいた。


 初代Mac miniは正面にスロットイン式のDVDスーパーマルチドライブの挿入口があり、本体サイズはCDケースを2回りほど大きくした約165(幅)×165(奥行き)×51(高さ)mm、重量は約1.32kgだった。


 ちなみに普通自動車のナンバープレートは高さが約165mmなので、あれを正方形に切り取ったくらいのサイズと考えると想像しやすい。価格は米国ドルで499ドルと599ドルだった(日本では5万8590円と6万6800円だ)。


 発売後、それまでのMacにない小ささと手頃さが世界中の人々にインスピレーションを与え、Mac miniを数台購入して小型のサーバを構築する人、車に取り付けて車載コンピュータとして使う人などさまざまな人が登場した。いわば「偏愛系パソコン」という独自のポジションを築き、ジョブズ氏も喜んでそれを取り上げていた。


 それからほぼ20年後の2024年10月、AppleはM4チップを搭載した新型Mac miniを発表した。


 まず驚くのはコンパクトなボディーサイズで、もう1つ驚くのは、米国のインフレで他の製品が軒並み高くなる中で、製品価格は初代製品の高いモデルと同じ599ドルを維持している点だ。ただし、日本経済がミニ化し円安が進んでしまったために国内価格は9万4800円からと、一見高価になったように見えてしまうのが少し寂しいところではある。


 そんなMac miniは、本体サイズと価格が手頃であることに加え、偏愛系パソコンであることも従来通りで、既にMac mini専用のポーチやトラベルケースなど、さまざまな“偏愛関連グッズ”も登場している。


 そこで、Mac miniの偏った使い方の中でも話題になることが多い、モバイル用途でのMac miniを追求してみることにした。


●モバイルで使うからこそTouch IDが重要?


 モバイル環境でMac miniを使う際に鍵を握るのが、Mac miniと一緒に使うディスプレイ、キーボードとマウス(トラックパッド)だ。これによって、モバイル環境での快適度が大きく変わってくる。


 キーボードに関しては、量販店などに行けば折りたたんで持ち運べるキーボードがいくつか販売されている。筆者はMicrosoft製の折りたたみ式キーボード「Universal Foldable Keyboard」がデザインも使い勝手も良く気に入っていたが、引越しの時、どこかに詰めたまま出てこないし10年近くも前の製品なので新製品も登場していない。


 そこで自宅で既に使っていたApple純正の「Magic Keyboard」と「Magic Trackpad」を使うことにした(日々、酷使しているものだけに写真でもキートップが汚れていることは許して欲しい)。


 よく考えてみれば、Mac miniという製品が出てきたそもそもの理由は、できるだけ余計なお金はかけないこと。ならば、いつも使っているキーボードとトラックパッドでいいじゃないか、という点が挙げられる。


 実はMagic Trackpadは、それなりに大きいけれど圧倒的に薄くて軽い(約230g)。そしてMagic Keyboardは約27.89cmとそれなりに幅はあるが、最厚部でも約1.09cmと十分薄い。日々、仕事で使っているのと同じ変わらないキーボードというのも利点だ。


 だが、一番重視したのはTouch IDだ。モバイル、つまり屋外で使うPCとなると人目につくところでパスワード入力をする機会も増え、セキュリティ上あまりよろしくない。これがTouch ID付きのキーボードならパスワードを入力せず、指紋認証だけでログイン操作や承認操作を行える。特にバッテリーがない分、システム終了と起動することが多いことを考えても、これは結構、重要だと思う。


 あまり変更要素が多いと取り止めがなくなるので、キーボードとトラックパッドはこの2つで決め打ちした上で、この記事ではディスプレイ、そして電源のバリエーションでさまざまな活用スタイルを試してみたい。


●iPadをディスプレイにする


 Mac miniをモバイル活用する上で、肝となるのがディスプレイ選びだ。


 まずは、iPadをディスプレイにする方法を試してみよう。Mac miniと一緒にモバイルディスプレイを持ち歩いている人もいるようだが、Appleの製品生態系に深く取り込まれている人なら、MacやiPhoneだけでなくiPadも持っているだろう。もし、そのiPadがUSB Type-C端子搭載のiPadだったら、HDMIキャプチャー製品を間に挟むだけでiPadをディスプレイとして使える。


 「え? そこはSidecarではないの?」という人がいるかもしれない。


 Sidecarとは、iPadをMacのセカンドディスプレイとして使う機能だ。


 ただ、実はこれはあくまでも「セカンドディスプレイ」にする機能だ。一度、Macが他のディスプレイに接続された状態で起動し、そこにログインしてないと利用できない。


 そして、実はこれはちょっと期待していた「Apple Vision Pro」の「Mac仮想ディスプレイ」機能も同じだ。検証している途中、実は「Mac仮想ディスプレイ」は「Sidecar」機能と同じ技術であることを偶然発見した。


 もし、Mac miniとApple Vision Proだけを持ち歩いて、どこでも大画面で作業ができたら最強だと思っていただけに、ちょっと残念だ(なお、ちょっと問題があるが、なんとかファーストディスプレイにする方法を発見したので本記事の最後で紹介している)。


 というわけで、数日間に渡ったモバイルMac miniの検証では、2種類のディスプレイを試すことにした。1つは「iPad Pro(M4)」で、もう1つはAnkerのGoogle TV搭載モバイルプロジェクターである「Nebula Capsule Air」だ。


 実はどちらも、Mac miniなしの単体でも十分にさまざまな役割を果たしてくれる。Capsule Airで多彩な動画配信サービスを見たり、株式情報や通貨レートなどの情報を表示したりしてくれるものなど、さまざまなアプリがある(USB Type-CのMagic Keyboardを接続したら文字入力も行えた)。


 iPad Proに至っては、ワープロから「Final Cut Pro」を使ったビデオ編集まで一通りの用途をこなし、ほぼMacと変わらないくらいにいろいろとできる。ただ複数のウィンドウを開いて、その間でデータのやり取りを頻繁に行うといった作業では、やはりMacの方が使い勝手が勝る。


 基本の作業はiPadで進めておいて、どうしてもiPadでは足りなくなってきたところだけ、iPadのターボエンジンのようにしてMac miniを取り出してつないで使う。もしかしたら、そんなコンピューティングスタイルもあるのではないか? 重さが約670g(M4搭載の場合、M4 Proは約730g)でMacBook Airの半分ほどの新しいMac miniなら、そういう考えも現実的になる気がする。


 ちなみに、iPad ProとMac miniの相性は抜群だ。カバンから出してきて並べる際に少し人目が気になるが、このセットで新幹線や特急電車のグリーン車でも座席コンセントから電源を取って利用できることを確認した(瞬断の可能性がある点には注意したい)。


 写真では分かりやすさのためにMac mini本体もテーブルの上に乗せたが、カバンに入れたままにしておけばほとんどの人は気が付かないだろう。


 ちなみに、Mac miniとiPadシリーズの接続には既に書いたように別途HDMIキャプチャー製品を買う必要がある(2〜3千円程度で購入できる)。MacのUSB Type-C端子とでディスプレイを接続できるのだし、USB Type-Cケーブルでいいのではないかと思う人がいるかもしれないが、残念ながらそれはできない。


 ただ、今回使用したUGREENの「UGREEN 4K@60Hz USB Type-C to HDMI 変換アダプタ」などは価格が3000円を切っており、大きさ的にもUSBメモリほどだ。HDMIケーブルの先につけっぱなしにして持ち運べる。


 セットで持ち歩いた時の重量もMac mini本体の約670g、Magic Keyboardが約243g、Magic Track Padが約230g、13インチのiPad Proが約580g(11インチなら約445gだった)、これに電源ケーブルとHDMIケーブル、USB Type-Cケーブル1本、それに約160gのHDMIキャプチャーアダプターを合わせた重量が約1.88Kgだった。


 MacBook Airの15インチモデルでも約1.51Kg、MacBook Proの14インチモデルが約1.55Kg(M4モデルの場合)なので、それよりも少し重たくなってしまったが、MacBook Pro 16インチモデルの約2.14Kg(M4 Proモデルの場合)よりかは軽く、十分持ち運べる範囲に収まっている。


 またMac miniで動画の書き出しなどの処理を行っている間、iPad Proでは動画視聴など別のことをしていられる柔軟さもある。


 一方、iPad Proの代わりにモバイルプロジェクターを持ち運ぶという選択肢もある。今回使用したNebula Capsule Airは、約650gとiPad Proより約70gだけ重いが、こちらは最大100型で投影できるのが魅力だ。


 液晶プロジェクターだと四隅に近くなる程、映像が暗くなってしまったりして見にくいことがあるが、隅々までくっきりのレーザープロジェクターで適当な面に向けると本来斜めに投影される角度でも、自動的に台形補正をかけて横長長方形にし、ピントも自動調整してくれる。


 窓や棚で埋められていて壁がないような部屋でも、天井に投影といったこともできる。とはいえ、いざ持ち歩いてディスプレイ代わりに投影しようと思っても、人目のあるところで壁を借りて投影するのはちょっと勇気が必要だ。そう考えると、やはりiPadとの持ち歩きがベストのコンビネーションに思えた。


 ちなみに、Mac miniとモバイルプロジェクターは別の可能性を見せてくれた。最近ではモバイルプロジェクターを2〜3台持っている人も珍しくないと思うので、それらをMac miniと一緒に持ち歩けば、小さなバッグに収まる超小型のサイネージや、超小型のプロジェクションマッピング設備になり得る。


 例えば、イベントへのブース出展などをした場合、このペアをカバンに忍ばせておけば、ブースの壁に客引き用の映像を映しておくことができるだろう。


●バッテリーも持ち歩いて真のモバイルを目指す


 さて、ここまででもかなりモバイルできていたと思うが、実は1つだけ問題がある。それはMac miniを使う際に、常に電源コンセントを必要としていることだ。ディスプレイのiPad ProやCapsule Airはバッテリーで動作するけれど、Mac miniは別途電源がないと利用できない。


 完全にオフグリッド、つまり家庭用電源コンセントに頼らず利用するには、いわゆるポータブル電源を一緒に持ち歩く必要がある。


 では、どんな製品が使えるのだろうか。スペック表によれば、Mac miniの最大消費電力(連続使用時)は155Wとある。ずっと、この最大の消費電力で動くわけではないとはいえ、理論上は最低でも310Whのエネルギーが必要に、さらには内部で交流を直流に変換することにより10〜20%程度の電力ロスが起こるであろうことも考慮すると、350〜400Wh以上の容量があるポータブル電源を使うのが望ましい。


 人気ブランドAnkerのポータブル電源でコンセントが使える最小のものは、「Anker PowerHouse 90」で約2万4000mAh(87.6Wh)――これだとちょっと心配だ。


 2番目に小さいのが、肩掛けストラップで持ち運びができる「Anker Solix C300 DC Portable Power Station」シリーズの製品だ。こちらは288Whで、最大消費電力を出し続けても1.86時間くらいは動かせられそうだ。重量もAnker Solix C300 DC Portable Power Stationで約2.88Kgと、なんとか持ち歩ける重さではある。


 しかし、残念ながら検証用に機材を借りるにはちょっと時間が足りない。そこで今回は筆者が災害への備えとして持っている「Anker PowerHouse II 800」というポータブル電源で試すことにした。重量が約8.3kgと、およそ持ち歩く気になれないところだが、その代わりバッテリー容量は21万6000mAh/778Whと強力だ。


 先ほどと同じ計算で行くと、このバッテリーではおよそ5時間の動作という計算になるが、実際に接続して1時間ほど使用してみた。


 PowerHouse IIのディスプレイには、現状と同じペースで電力を消費するとあと何時間くらい使えるかを表示する機能がある。アドビの「Premiere」による簡単なビデオ編集とYouTube動画の再生、Webブラウジングを行っての計測だったが、表示を見ると最初は残り102時間、10分後くらいには残り75時間といった感じでかなり激しく揺れ動いていた。


 さすがに5時間も試すことはできず、最終的にどれくらい使えたのかは分からないが、5時間よりかははるかに長く使えそうだった。そう考えるとSolix C300、いや、それどころか重さが約845gのPowerHouse 90でも、それなりに使えるのかもしれない(実際に検索したら、1世代前のMac miniをPowerHouse 90で利用している動画が見つかったので、やはりできるようだ)。


 ただし、1Kgを切るとはいえ、これだけの機材一式を持って電車で移動というのは現実的ではない。実際にはEV車で移動することにして、車自体をバッテリーとして使った方がスマートだろう。


 さて、今回の記事はあくまでもエイプリルフールのネタとして試したことであって、本当にこんな活用をする人はかなりの少数派だと思う。でも、ゼロではないはずだ。


 実際、製品がここまで小さいことで新しくできることがたくさん出てくる。そういう意味では新しいMac miniはインスピレーションの宝庫だ。ノートPCとも一味違う携帯性を備えたMac miniは、従来の発想ではできなかった新しいコンピュータの使い方へのインスピレーションがあふれている。


●Apple Vision ProをMac miniのファーストディスプレイとして接続する方法


 当初、今回の原稿はApple Vision ProはMac miniのファーストディスプレイとしては使えないとして提出していた。しかし、編集担当者から利用例があるとの報を受けて調査を続けたところ、確かにMac miniをApple Vision Proのファーストディスプレイとして使うことが可能であることを確認できた。


 とはいえ、これはかなりイレギュラーな使い方になることをあらかじめお伝えしておきたい。


 MacにApple Vision Proを仮想ディスプレイとして接続する際、Macで必要な設定が4つある。


1. Wi-Fiをオンにすること


2. Bluetoothをオンにすること


3. Appleアカウントにサインインすること


4. Macのロックを解除すること。


 1と2は簡単だが、3と4が問題になる。いや、あらかじめAppleアカウントの設定をしておけば、Macのロックを解除さえすれば自動的にAppleアカウントにもサインインされるので、正確には4番が問題になる。


 Macにディスプレイがつながっていない状態でも、間違わずにロック解除用のパスワードを入力するか、Magic KeyboardのTouchID認証をすればロックが解除できると思うかもしれないが、残念ながらそうはならず、Macは一度、ロック画面を表示してからでないとパスワードやTouch IDを受け付けないようなのだ。


 ここで、パスワード入力なしでMacを起動する自動ログインという機能があることを思い出した(「設定」の「ユーザーとグループ」から設定)。ただし、ここでもう1つ注意する必要がある。Macのストレージ上の情報が盗まれないようにFile Vaultという暗号化設定をしてしまうと、この自動ログインが利用できなくなってしまう。


 つまり、Apple Vision Proをファーストディスプレイとして使う場合は、


1. Macの初期設定時にFile Vaultの暗号化を行わない


2. アカウントの自動ログインを設定しておく


 の2つを事前に行っておく必要がある。


 この状態で設定したMac miniを起動すると、一度もディスプレイに接続することなく、確かにApple Vision Proから仮想ディスプレイを利用ができた。


 繰り返しになるが、この設定は、あなたのAppleアカウントでログインしたMac miniをパスワードもストレージの暗号化もない無防備な状態で利用することになるため、試す分にはいいが、お勧めすることはできない。


 ぜひとも、Appleルにはこんな危険を犯さないでもApple Vision Proをファーストディスプレイとして利用できるよう、OSのアップデートをしてほしいところだ。



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