東大野球部初の女性主務・奥畑ひかりの進路を決めた野球愛 母校の智辯和歌山は「野球好きにとって最高の環境でした」

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2025年04月02日 07:10  webスポルティーバ

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東京大学野球部主務・奥畑ひかりさん インタビュー前編(全2回)

 1919年に創部した東京大学野球部に、女性初の主務(マネージャーの責任者)が誕生した。自他ともに認める大の野球好き、新4年生の奥畑ひかりさんだ。そんな彼女は、どのように野球と出会って、東大をめざし、野球部のマネージャー、そして主務に就いたのか? 奥畑さんの野球に対する一途な思いを、ここに明らかにしてみよう。前編は、主務の仕事や野球愛を育んだ子ども時代について。

【きっかけは六大学野球初の女性主務】

ーーまずは東大野球部の主務就任、おめでとうございます! こうして記事に取り上げられることをどう思いますか?

奥畑ひかり(以下同) ありがとうございます。私自身、2018年に東京六大学野球連盟で初の女性主務になった慶應義塾大の小林由佳さんの記事を読んで、六大学野球でのマネージャーを志望しました。だから私の記事が、将来大学でマネージャーをしたいと思っている高校生や中学生にとって、なにかのきっかけになってくれたらいいかなと思っています。

ーー東大野球部の主務は、野球部のなかではどんな存在ですか?

 東大野球部では、グラウンド内に主将とふたりの副将がいて選手たちをまとめていますが、グラウンド外には主務とふたりの副務がいて、マネージャーたちをまとめているんです。基本的にグラウンド外のことをすべて仕切っているのが、主務だといって過言ではないと思います。

ーー具体的に、どんな仕事をするんですか?

 練習試合を組んだり、合宿の手配であったり、副務のひとりにはPRや広報活動を、もうひとりの副務には会計を担当してもらっていたり。マネージャー内でいろいろな仕事を分担しています。そうした仕事の最終的な責任を負うのが、最高学年の主務です。

ーー主務に就任して数カ月が経ちましたが、ここまでいかがですか?

 私は、マネージャーの仕事のどれも好きで全部楽しいですが、主務に就任してからは東大野球部だけでなく、東京六大学野球連盟にも関われることに楽しさを感じています。

【家族で甲子園球場へ通った子ども時代】

ーーでは、さかのぼって奥畑さんが野球に興味を持ったきっかけは?

 気づいた時には好きでした(笑)。私はひとりっ子なんですが、父が阪神ファンで、家ではいつもテレビの野球中継がついていたので、自然な流れでした。

ーーお父さんとは野球を見るだけではなく、一緒にキャッチボールとかも?

 父は野球部出身ではなくて、キャッチボールをする文化もなかったですし、基本的に野球はテレビで見る家庭でした。私も運動神経があんまりよくなかったので。

ーー奥畑さんは和歌山県出身。甲子園球場に野球を見に行くこともあったり?

 小学生の時には、家族でよく甲子園へ行ってました。学校が休みの日とか、平日でも授業が早く終わる日とかに、少なくとも月1回ペースで行っていたと思います。(2013年)セ・パ交流戦で、藤浪晋太郎投手と大谷翔平選手のプロ初対決を見たのが一番の思い出です。

ーー奥畑さんはどんな子どもだったんですか? たとえば、得意科目や不得意科目とかは?

 今はあまり読書をしていないんですが、当時は読書が好きで、国語が得意でした。不得意は算数で、苦手科目をひとりで勉強できるタイプではないので、小学4年生から塾に通いはじめました。

ーー塾以外で、ほかに習いごとはしていましたか?

 いろんな習いごとをしてました。バレエも水泳もピアノも習っていて、勉強は塾だけでなく「公文」にも通ってましたし、月1回、野外活動みたいなキャンプへ行ったり。毎日が忙しい環境だったんですが、私はあんまり苦にならないタイプだったので。

ーー習いごとのなかで、野球みたいにハマっちゃったことはありましたか?

 習いごとに関して言うと、本当に勉強以外の才能がなくて......。ピアノも全然得意じゃなかったし、バレエも全然ダメで、水泳もあんまりだったので、唯一、人よりできたなと思ったのは勉強だけでした。でもバレエは、小学6年生の中学受験が終わるまでやってましたし、ピアノも最後は本当に趣味程度でしたけど、高校3年生まで続けました。

【野球部の練習を見るためにテニス部に?】

ーー奥畑さんは地元の私立中高一貫校・智辯和歌山の出身。今春センバツでは準優勝を果たしました! まずは母校野球部へひと言いただけますか?

 準優勝おめでとうございます。渡邉颯人投手の安定したピッチングや初回から畳みかける切れ目のない打線を見られて、智辯和歌山のいちファンとして楽しい春でした。決勝は、社会人対抗戦のため神宮球場のテレビで観戦していたのですが、私が智辯和歌山出身ということもあり、多くの方にお声がけいただきました。(東大と)横浜高とは練習試合をさせていただいたので、ぜひ智辯和歌山とも練習試合をしたいです(笑)。

ーー智辯和歌山を選んだ理由は?

 通っていた塾は、そんなに大きなところではなかったので、なんとなく中学受験をしようかなと思いはじめても、どこの私立がいいのかもわからなかったんです。でも、野球が強いし、智辯和歌山にしよう、と。一応、和歌山県内では一番の進学校でもあります。

ーーやっぱり、野球が理由でしたか!(笑)。智辯和歌山に進学して、何部に?

 中学では、硬式テニス部に入りました。

ーー野球のように、ラケットでボールを打ってみたいとの思いからですか?

 いえ、もう完全に"立地オンリー"です。

ーー立地オンリーとは?

 硬式テニス部のコートの隣にグラウンドがあって高校の野球部が練習をしていたんです。だから部活も真面目にはしていたのですが、それより隣の野球部のほうが気になってましたし、硬式テニスの才能はなかったですが部活を続けるモチベーションにはなってました。

ーー部活をしながらも、ちゃんと野球を見つづけていたわけですね。

 そうですね。中学生の頃は、週末に野球部の練習試合もけっこう見に行ってました。智辯和歌山では、高校の野球部の応援を中学も一緒に全校でするんです。県大会の初戦から全試合を全校応援するので、この頃から野球を見る楽しさが、一段上がって応援する楽しさになっていったかな、と。本当に野球好きにとっては、最高の環境でした。

【得意の暗記でクイズの"甲子園"に出場】

ーーそんな奥畑さんが高校に進学したら、あとは野球部のマネージャーになる道しか残されていないと思うんですが?

 じつは、高校の野球部は女子マネージャーを募集してなかったんです。それと、智辯和歌山はちょっと特殊な学校で、高校の運動部が一般の生徒には開かれてないんです。運動部は、野球部と駅伝部だけがあって、推薦入学の生徒しか入れなくて、一般の生徒は勉強しなさいっていう学校で。だから、高校1年生で文化部のクイズ研究部に入ったんです。

ーーどうしてクイズ研究部に?

 自分が一番得意な分野が暗記だったので、自分の力が活かせるかなって思ったのと、部活の活動頻度が少なかったので、野球部の試合が見に行けるかなと思ったので......。

ーーここでも野球が理由に!(笑)

 その頃が一番野球を見ていたんじゃないかな。本当に毎週試合を見に行ってました。

ーー奥畑さんが率いるクイズ研究部は、和歌山県の予選を制して『全国高校生クイズ選手権』に出場しています。

 3人のチームで、一応私がチームリーダーではあったんですけど、そもそもクイズ研究部に女子がふたりしかいなくて、もうひとり探してこなくちゃいけなくて。自分の友人で謎解きが得意な子がいたので、自分に足りない分野を補ってくれる存在として勧誘して、3人で出場しました。

ーー東京都内で開催された『全国高校生クイズ選手権』の結果は?

 全国大会では、本当に何も答えられなくて......。

ーー野球に関連したクイズは出なかったですか?

 出なかったですね。

ーー高校1年生の全国大会で敗退した悔しさをバネに2年生でリベンジしようと思いましたか?

 1年生の終わりくらいからコロナ禍が始まって、2年生になった時は授業もなくて、部活動もできない状況になったので、リベンジの思いがあまり高まることはなかったです。

【コロナ禍でプロ野球の録画を見尽くし勉強開始】

ーー学校がコロナ禍で休みだった間はなにをしていたんですか?

 あの時は、あんまり外出すると白い目で見られるような感じになっていたので、ずっと家にいて、最初のほうは野球の録画を見てたんですけど、数カ月で見終わっちゃって。プロ野球も(開幕延期で)やってなかったですし、ヒマだなって。私は本当に野球以外に趣味がないので、あとは勉強するしかないと、勉強をはじめたんです。

ーーその頃から、すでに東大合格が目標だった?

 これも野球とからんじゃって申し訳ないんですけど、高校時代に一番応援していたのが智辯和歌山の野球部の先輩で、現在横浜DeNAベイスターズでキャッチャーをしている東妻純平さんだったんです。東妻さんが横浜に入団したのと、親から国公立に行ってほしいとも言われていたので、当時は東大というよりも、関東の国立大に行けたらいいかなと思っていました。

ーー続いて、大学受験や東大野球部の日々、就職活動などについて伺います。

後編につづく

<プロフィール>
奥畑ひかり おくばた・ひかり/東京大学野球部主務。和歌山県生まれ。阪神タイガースファンの父親の影響で物心ついた頃から大の野球好き。智辯和歌山中学・高校出身で高校3年生の時には野球部が夏の甲子園制覇。東京大学文科3類に現役合格し、2022年に入学。野球部にマネージャーとして入部し、2024年11月から東大野球部史上初の女性主務を務めている。

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