
里崎智也×五十嵐亮太 対談
メジャー日本開幕戦 前編
3月18日と19日に行なわれたロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスの日本開幕戦は、大盛況のうちに幕を閉じた。結果はドジャースの2連勝だったが、その2試合を取材、解説した里崎智也と五十嵐亮太に、大谷翔平ら日本人選手たちのプレーの印象を語ってもらった。
【大成功に終わったメジャー日本開幕2連戦】
----おふたりとも、ロサンゼルス・ドジャースとシカゴ・カブスによるメジャー開幕2連戦を東京ドームで取材、解説されました。まず、あの2試合の全体的な感想を聞かせていただけますか?
里崎 MLBや日本のファン、野球界にしても、全員がハッピーに終わったんじゃないですか。お客さんもたくさん入って盛り上がったし、グッズもたくさん売れたようだし、MLB関係者にとっても大成功と言っていいでしょう。ちなみに、メンバー入りしていなかったクレイトン・カーショウは自腹で、家族みんなで日本に来た。観光も含めて、それぐらい日本に来たかったんですよ。
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五十嵐 来日前から日に日に盛り上がっていって、経済効果はものすごく大きかったでしょうね。ただ、それもやっぱり大谷翔平あってこそですよね。僕が印象に残っているのは、球場の雰囲気がいつもと違ったこと。「野球を見に来る」というよりは、「コンサート会場にスターを見に行く」という感じでした。
日本での開幕戦の開催によって、ドジャースやカブスだけでなく、多くのMLB関係者も日本のファンの反応を見たはず。今後の日本マーケット開拓という意味でも、手応えを感じられた2連戦だったんじゃないですかね。
----試合についてですが、開幕戦は日本人投手ふたりが先発でした。まずはドジャース・山本由伸投手についての印象を教えてください。
里崎 メジャー2年目だから変化したのではなく、昨シーズンの途中からすでに変わっていましたよね。僕はいつも「(キャッチャーの)ウィル・スミスのリードはどなうなのかな?」と疑問に思っているんです。昨シーズンも、最初はスプリットばかりで、対応されだしたら今度はカーブばっかり投げさせていた。ようやくシーズン終盤になって、いろいろなボールがミックスされてきたけど、日本では山本がそんな偏った配球で投げていたことはないですから。
山本自身も去年はメジャー1年目で、なかなか自己主張もできなかったけど、今年は意見も言えるようになっているはず。経験を生かして1年やれたら、去年(7勝)の倍ぐらい勝つんじゃないかな?
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五十嵐 山本はメチャクチャよかったですよ。去年の経験が、きちんと生かされていました。ピッチング内容はもちろん、マウンド上での雰囲気もそうだし、点を取られはしたけど決して内容は悪くなかったです。
特に、鈴木誠也を抑えたツーシームがよかった。去年はあまりツーシームを投げていなかったのが、今年はツーシームや、左バッターへのカットボールをポイント、ポイントで見せています。投球の幅が広がるのと同時に、安定感もある。だから、去年以上の成績を残すことはもちろん、サイ・ヤング賞の可能性もあると、僕は思っています。
【鈴木誠也は極度の時差ボケに苦しめられた!?】
―― 一方、シカゴ・カブスの開幕戦を託された、今永昇太投手はどうでしたか?
里崎 相手打者に対応されるまでは、今のままでいいんじゃないですか。メジャーの関係者が言うには、アメリカ野球はここ数年のアッパースイングブームから、レベルスイングに戻ってきているらしいんです。そうなると、去年に今永もよく投げていた高めの球は合わされやすくなってくる可能性があるわけですよね。
だから、対応されだしたら、それに応じて変化していけばいい。まだ相手打者が対応もしていないのに変える必要はないですよ。開幕戦を見る限りでは、対応はまだされてない感じでした。
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五十嵐 僕も、山本は去年とそんなに変わらないと思うけど、大きく変わるとすれば今永のほうだと思います。去年は高めの真っ直ぐで、ある程度の空振りやファウルを取って、低めの変化球で勝負するという、高低をうまく使っていました。でも、今年はキャンプ取材に行った時に、「相手打者のストレートへの対応がよくなっている」と言っていましたね。
里崎 当然、バッターも去年の結果を踏まえて対応してくるからね。
五十嵐 そうですね。相手バッターのストレートへの対応がよくなっていたから、去年と同じようなスタイルでは難しい。本人もそう言っていました。そこでどうするかというと、「他の変化球を使いつつ、ストレートを生かす」というパターン。
ポイントになるのはスライダーです。キャンプからオープン戦にかけて、かなり投げ込んでいました。右バッターのインコースに食い込むスライダー、左バッターからすると外に逃げるスライダーをうまく使いながら、投球を組み立てていくんだと思います。
----続いて打者について。まず、カブスの鈴木誠也選手から伺います。開幕2連戦では初戦、2戦目ともに4打数0安打、ノーヒットでした。
里崎 結果的にノーヒットでしたが、鈴木の場合、時差ボケがかなりひどかったらしいんです。だから、調整とか技術の問題もあるかもしれないけど、時差ボケが一番の原因なんじゃないかと思うんですよ。
五十嵐 僕はバッター出身じゃないので詳しい状態はわからないですけど、アメリカに戻ってからいきなり打っていますから(帰国後のオープン戦で2戦連続アーチ、開幕3戦目に今季1号など)、決して状態は悪くなかったとは思います。時差ボケもあったのかもしれないし、2試合くらいならノーヒットで終わることも普通にありますよね。
里崎 あとは、彼の野球人生を振り返ると、DHでの起用に慣れていないこともあるかもしれない。これまでは、守備からリズムを作るタイプだったので、影響はあると思います。
五十嵐 実際、DHをまかされることによって、バッティングの意識が変わる可能性がありますよね。それがどんな意識なのかはまだわからないけど、その形がハマればいいなと思います。
【今年、大谷の「50−50」は難しいかも?】
----続いては「バッター・大谷」の印象を教えてください。
里崎 いい感じできていると思いますよ。正直、打つことについては誰も心配してないんじゃないですか。ただ、やっぱり盗塁は減りそうですけどね。特にヘッドスライディングでの帰塁が禁じられているので、帰塁に重点を置いてリードをするか、もしくはリードを小さくするかしかない。そうなると盗塁成功の確率は低くなるし、アグレッシブに盗塁することは難しくなると思います。
五十嵐 そうなると、去年に達成した「50−50(ホームラン50本・盗塁50個)」は、今年は厳しいかもしれないですね。
里崎 またケガをするリスクは避けたいだろうし、わざわざ積極的に盗塁をする必要もないしね。まずは、投手復帰に重点を置いたほうがいいですよ。
五十嵐 僕もサトさんと一緒だけど、バッティングに関しては今年も心配ないんじゃないですかね。バットを長くしてもしっかり結果を残しているし、「ちょっと引っ張り傾向にあるな」と思っていたら、すぐに修正していましたから。打球スピードも、打球角度もしっかり出ていますね。
去年は開幕以来、なかなかホームランが出なかったけど、今年はいきなり2試合目でホームラン。アメリカに戻ってからも打てています。今年も大きなスランプはなさそうですし、体調さえよければ間違いなく結果を残すでしょう。
----どうもありがとうございます。後編では、第2戦で先発したドジャースの佐々木朗希投手、そして、復活が期待される「投手・大谷翔平」について伺いたいと思います。
里崎・五十嵐 了解です。
(後編:佐々木朗希メジャー1年目の課題 「投手・大谷翔平」の復活の時期も予想した>>)
【プロフィール】
里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工(現鳴門渦潮)、帝京大を経て1998年のドラフト2位でロッテに入団。正捕手として2005年のリーグ優勝と日本一、2010年の日本一に導いた。日本代表としても、2006年WBCの優勝に貢献し、2008年の北京五輪に出場。2014年に現役を引退したあとは解説者のほか、YouTubeチャンネルなど幅広く活躍している。
公式YouTubeチャンネル『Satozaki Channel』
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)
1979年5月28日生まれ、北海道出身。1997年ドラフト2位でヤクルトに入団し、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる158キロもマークするなど、リリーフとして活躍。その後、ニューヨーク・メッツなどMLBでもプレーし、帰国後はソフトバンクに入団。最後は古巣・ヤクルトで日米通算900試合登板を達成し、2020年シーズンをもって引退した。現在はスポーツコメンテーターや解説者として活躍している。