睦美さん提供写真 女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2022年は4月4日 記事は取材時の状況です)
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葬儀は、その人の人生最後の舞台でもあります。葬儀をみると、故人がどのような人生を送ってきたのか推し量ることができるかもしれません。今回は、小さい頃から世話になっていた叔父のお葬式である不思議なトラブルに見舞われたエピソードをご紹介します。
◆実業家で派手好きだった叔父
今回、このお話を伺ったのは睦美さん(仮名・34歳)。彼女の父方の叔父(68歳)が、病に倒れ、闘病の甲斐なく他界してしまった際のお葬式でのエピソードです。
睦美さんの叔父は、飲食店を複数店舗経営する実業家でした。実業家らしく明るく朗らかで人当たりの良い叔父に睦美さんも昔からよく懐いていて、叔父の方も睦美さんを幼いころから可愛がってもらっていたとのこと。
「自分の父親はいわゆる普通のいたって真面目なサラリーマンだったので、良くも悪くも正反対だった叔父が余計にかっこよく見えたのかもしれませんね。派手なものが大好きでいつもお洒落な洋服を着ていて、社交好きでした」
◆胃がんが発覚し、突然の余命宣告
睦美さんが大人になってからも、何かと交流があったそうですが、半年前の健康診断で進行性の胃がんを患っていることが判明しました。病状は深刻で、腹膜播種状態で余命は3ヶ月だと宣告されてしまいました。
「その知らせを聞いたときは本当にびっくりしました。まさか叔父がそんな大病を患っていただなんて……なにがあっても死なないくらいいつも元気だったものですから」
睦美さんは仕事帰りに病室に足を運び、叔父をできるだけ見舞いました。ただ病魔には勝てずに主治医の宣告通り、3ヶ月後に亡くなってしまいます。
◆ハワイが好きだった叔父のためのお葬式
ハワイが好きで、リタイヤしたら余生はハワイで過ごすと決めていた叔父のために、叔母はハワイ風の葬儀にすることに決めました。
祭壇にハイビスカスを敷き詰めたり、BGMをハワイアンにしたり、叔父に少しでも南国情緒を味わってもらえるように様々な工夫を施しました。
「一部の親族からは反対もあったみたいですが、私はやってよかったと思っています。とても叔父らしい葬儀でした」
葬儀は滞りなく執り行われ、一同は併設された火葬場へ向かいました。そこで参列者一同がある異変に気が付きます。
◆会場に響く嗚咽に異変を感じ取る
親族一同が棺の周りに詰め寄って、最後のお別れをしていると後ろの方ですすり泣く声が聞こえたのです。
「こういう場ですし、泣いているだけだったら誰も気にはしません。でも、やがてすすり泣きの声は大きくなり、次第に嗚咽へと変化していって…」
もちろん、故人との最後のお別れの場。関係が深ければ深いほど冷静ではいられません。ただ、嗚咽があまりにも激しくなり、睦美さんを始めとした親戚一同もとうてい無視できるものではなくなり、ちらりとそちらの方を見ました。
◆嗚咽し涙を流す女性は何者?
「その声の主は、私の知らない女性でした。私よりは少々歳が上のようでしたが、叔父よりははるかに歳下の女性でした」
その女性は泣きながら棺に近づいてきます。激しく取り乱し、涙がぽろぽろと棺の上に落ちていきました。
叔母が「あのう、どちらさまですか?」と尋ねました。
叔母の声が耳に入らないのか、それとも聞こえていて無視をしているのか、叔母の声掛けには一切反応せず、嗚咽の勢いは増すばかりです。女性は叔父の安らかに眠る顔に視線をあわせたまま外しません。
「なんと叔母も、親戚の誰も、その女性のことを知らなかったのです」
周囲が困惑からざわつきながらも、時間となり、棺は炉の中へゆっくりとスライドしていき、参列者一同が合掌します。炉が閉まった後に顔を上げ、再び辺りを見回すと、その時には既にその女性の姿はどこにもありませんでした。
◆小声でつぶやいて去っていった
結局、いったい叔父とはどういった関係だったのかは分からずじまいでした。もちろん、精進落としの席でもその話題でもちきりだったそうです。
「謎の女性の隣に立っていた甥っ子の話によると、その女性は涙混じりの小声で『〇〇さん、ありがとう。本当に今までありがとう』と言って、足早に立ち去ったとのことでした」
◆女性関係が派手だった叔父の最後の一騒動
親戚の間では、きっと親しい仲だったに違いないと様々な憶測が飛び交いました。
叔父は女性関係も派手で、叔母さんもそれでだいぶ苦労してきたそうです。これで最後だという安堵と、最後の最後まで振り回された叔母の複雑な面持ちが今も頭から離れないそうです。
「でも、叔父らしいといえば叔父らしいですけどね。私はそんな叔父のことが今でも大好きです」
睦美さんはそう話を締めくくりました。
<文/浅川玲奈>
【浅川玲奈】
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。